「リスク=損をすること」という議論をする場合

「リスク=損をすること」の議論をする場合、それらのリスクを総称して「金融リスク」という風に呼びます。「金融リスク」は更に細かく「流動性リスク」、「信用リスク」、「市場リスク」の3つに大別できると思います。そしてその更に細かい分類として下の図にあるような様々なリスクが存在するのです。

ETFを使うことで避けられるリスク

上の図の中で個別株の代わりにETFを購入することで避けられるリスクを挙げると:

  • 不正会計リスク
  • 情報リスク
  • 倒産リスク
  • 過度の集中リスク

などは殆ど心配しなくて良いでしょう。

しかしそれ以外のリスクはETFを買っても回避できません。多くの個人投資家は(マーケット全体を買っているのだから、日頃の注意を怠っても大丈夫)と考えがちです。それどころか個別株投資のように毎日リスクに晒されていない分だけ全体のリスクに対してきわめて鈍感になってしまう人が多いようです。これはETFに代表されるインデックス投資家の悪いクセなので、そういう怠け心がつかないように気を付けてください。

やっかいなリスクの「複合化」

上の図に示したいろいろなリスクは、お互いに独立している場合もありますが、それはむしろ例外です。多くの場合、ひとつのリスクは玉突き的に次のリスクを誘発し、それがまた次のリスクを招来するということがおきます。そうやって複合的で複雑なリスクに化けてしまうわけです。

2008年のリーマンショックを例にとれば、住宅ローン証券化商品の価格が下落(=市場リスク)したとたんにその証券に対する買い手が居なくなってしまい、流動性が失われました(=流動性リスク)。

すると流動性の無くなったそれらの証券化商品を抱えた金融機関に対して信用不安が出て(=カウンター・パーティー・リスク)、金融機関同士の取引が停滞する事態が生じたのです。

このように個々のリスクの連鎖的な発生が金融システム全体を巻き込んだ問題に発展するリスクのことをシステミック・リスクといい、それは金融システム全体が機能不全に陥る状態を指します。

投資資金に余裕が出来たら……

みなさんが少額の投資資金で初めて海外ETFを購入する場合、例えばiシェアーズMSCI ACWI ETF(ティッカーシンボル:ACWI)とかバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(ティッカーシンボル:VT)のように、世界の株式市場をまるごと買えて、しかも優れた分散効果を低コストで得られるETFを、ひとつだけ購入するという方法は、決して間違っていないと思います。いや、むしろそこから始める方が無難だとすら言えます。

しかし追加投資資金が出来て、2銘柄、3銘柄という風に増やしてゆけるのであれば仮にETFだけで投資するにしても前回、アセット・アロケーションのところで説明したようにETFを分散することが好ましいです。

取引所閉鎖リスクというものを考えた場合、ニューヨークだけでなく香港やシンガポールに上場されているETFにも少し分散しておくというやり方も良いと思います。

余り分散し過ぎると、ポートフォリオ管理の手間が増えますし、コストも割高になるので、そのへんも考えあわせながらETF投資を楽しんでください。