ETFのリスク
いろいろなリスクの話に入る前に、ETFに固有の、重要なリスクについて説明したいと思います。
ETFはこれまで見てきたようにたったひとつのETFを買うだけで世界の株式市場をまるごと買うような分散投資が実現できてしまう利便性を持っています。その分散効果の有効性は、疑う余地もありません。
しかし……
ETFが株式と同じように株式市場で取引されているということは、もし株式市場に何か起きたときには突然、換金出来なくなるリスクがあるということを意味します。それは市場閉鎖リスクと投資の世界で呼ばれているリスクです。
そもそも株式市場が閉まってしまえば、取引所で取引されるETFは万事休すだ
実際、2001年9月11日にニューヨークのマンハッタン島の南端にある世界貿易センターのツインタワーにテロリストたちが操縦するハイジャックされた旅客機が相次いで突っ込んだときはニューヨーク証券取引所の辺りまでガラスの破片などが飛び散り、取引を一週間停止しなければならなくなりました。
フラッシュ・クラッシュはETFにも起きる?
近年、高速取引が一般化するとともにコンピュータ・プログラムのトラブルが原因で引き起こされる、フラッシュ・クラッシュとよばれる市場の急落がときどき発生しています。
高速取引が引き起こすフラッシュ・クラッシュがETFを巻き込むことも想定しておかねばならない
いまのところフラッシュ・クラッシュは個別企業の株式でしか発生していませんが、将来、ETFもフラッシュ・クラッシュの犠牲にならないという保証はありません。
ETFが取引所というメカニズムに依存している以上、そのメカニズムに機能不全が起きたらその影響から免れることはできないのです。
リスクの定義
リスクという言葉は明快なようで実は曖昧さが含まれています。例えばプロ投資家の間でリスクが論じられる場合、リスクとは価格変動のことを指している場合が多いです。
この価格変動という言葉はボラティリティーという英語に置き換えられます。ここでのボラティリティーとは「結果のばらつき」のことを指します。
これに対して我々一般投資家がリスクを論じる場合、「リスク=損をすること」というイメージを持っていると思います。
この両方が正解であり、我々はリスクに関して議論する場合、上記の2つの概念のうちどちらを問題にしているのか自覚する必要があります。
「リスク=価格変動」という議論をする場合
「リスク=価格変動」の議論をする場合、価格の変動はリターン、つまり投資利益の源泉であると考えられます。
価格変動を指してリスクという言葉を用いる際は、それは投資利益の源泉であると考えられる
つまり価値観として「リスクは悪いものだ」という発想はこの文脈では存在しないのです。
むしろ価格変動は征服すべきチャレンジの対象であり利益機会に他ならないのです。その場合、先ず価格変動のばらつきの中心を求め、そのばらつきの中心がゼロ(0)よりも高ければ、リターンはプラスであるという風に考えるわけです。
この場合、「結果のばらつき」具合が比較的集中しているか、逆に拡散してしまっているかがリスクの度合いを測る主な尺度となります。投資の世界ではこれを標準偏差によって表現することが一般的です。なお個々の証券の価格変動のプロフィール(肖像)はその時々によって刻々と変わってゆくものです。