執筆:窪田真之

今日のポイント

・代表的な運用スタイルにバリュー(割安株)投資とグロース(成長株)投資がある。

・成長株には値動きが荒いものが多いので、初心者は割安株から投資をはじめたほうが良いと考える。大型の好配当利回り株が、最初の候補。

バリュー投資・グロース投資、どっちが魅力的?

 株式投資の代表的スタイルは、2つあります。1つはグロース(成長株)投資、もう1つはバリュー(割安株)投資です。読者の皆様は、どちらのスタイルに近いですか?

 私には、25年の日本株ファンドマネージャー経験があります。投資信託・年金などで、20代は1,000億円、40代には2,000億円以上の日本株ファンドを運用していました。

 私は、主に割安株への投資で、ベンチマーク(競争相手)であるTOPIX(東証株価指数)を大きく上回るパフォーマンスを上げてきました。その際に目指していたのは、割安株をコアとして長期保有しながら、成長株で短期売買を繰り返しつつ、サヤをかせぐこと。

 その経験からすると、株式投資の初心者は、まず割安株投資から開始したほうがいいと思っています。最初の候補は、配当利回りの高い大型株。小型成長株もおもしろいのですが、小型成長株には値動きの荒いものが多く、注意が必要です。

小型成長株の株価変動(イメージ図)

出所:筆者作成

 上のグラフでは、成長株の株価変動イメージを、3つの時期に分けて描きました。

①黎明期:成長期待があるがまだ利益がほとんど出ない時期

②成長期:利益が大きく成長する時期

③成熟期:最高益更新が続くものの、増益率が大幅に鈍化する時期

 このグラフは、成長株の成功事例をイメージして描きました。黎明期から成熟期まで長く持っていれば、高いリターンが得られます。ただし、それでも、投資タイミングが悪いと、短期的に大きな損失をこうむることがあります。それが、グラフで赤い矢印をつけたところです。

 ここで描いたのは、あくまでも小型成長株の成功事例です。このように黎明期から成長期に移行していくことがわかっているならば、バタバタ売り買いしなくても、じっくり長期投資すれば成果が得られます。

 ただし、現実には、このようにうまくいく銘柄ばかりではありません。黎明期が続いているうちに成長ストーリーが崩れ、成長期に入ることなく消えていく銘柄も多数あります。実際、過去のITバブルや、バイオバブル相場では、投資家の熱い期待を受けつつ、成長せずに消えた銘柄がたくさんありました。

 

株価が割安な銘柄を選ぶことで、投資リスクをある程度抑えられる

 割安株は、言葉をかえれば、「不人気株」です。人気がないから配当利回りが高く、PER(株価収益率)などの株価指標でみて割安でも、積極的な買いは入りにくくなっています。

 一方、多くの成長株は、「人気株」です。成長ストーリーにひかれて多くの投資家が熱狂的に買うので、株価指標で見ると割高な銘柄が多くなります。

 初心者はまず割安株からと私が考えるのは、将来のパフォーマンスに、一般的に以下の関係があるからです。

①割安な不人気株→予想外に高い成長性を実現すれば→株価は大きく上昇

②割安な不人気株→成長性が低ければ→株価は低迷

③割高な人気成長株→期待通り成長性が高ければ→株価はそこそこ上昇

④割高な人気成長株→成長ストーリーが崩壊すると→株価は大きく下落

 ここで一番避けたいのは、④です。初心者がこのパターンにおちいると、損切りができずに、ずるずると損失を拡大させることになりやすいので、注意が必要です。

 私は、割高な成長株は短期勝負と割り切って売り買いしていました。みんなが熱狂する株を一緒に買いにいくときは、「株価が下がったらすばやく損切り」を念頭においていました。

 それに対して、割安株に投資するときは、じっくりと長期で持ち、価値が見直されるのを待つ戦略でした。堅実経営の割安株は、投資家の期待が低いので、業績がたいしたことなくても急落することは、あまりありません。人気の成長株とは違って、バタバタと短期で売り買いする必要はあまりないと言えます。

 

割安な成長株はなかなか存在しない

 もし、成長性が高く、株価が割安な銘柄があれば、成長株投資家も、割安株投資家も、投資したいと思うでしょう。ところが、割安な成長株はなかなか存在しません。成長性の高い株は、往々にして人気が高く、株価の割安度をはかる代表的な指標であるPERが30~40倍など、高い水準にあることが多いのです。

 一方、PERで10倍前後など割安な銘柄には、成長性が低い、業績になんらかの不安があるなど問題を抱えている銘柄が多くなっています。

そこで、良い投資銘柄を見つける方法は、2つあります。

①成長株投資を重視するファンドマネージャー

まず、成長性の高い銘柄を探し、その中から株価がなるべく割安なものを選別します。

②割安株投資を重視するファンドマネ-ジャー

まず、株価が割安な銘柄を探し、その中から、なるべく成長性の高いものを選びます。

 割安な成長株がなかなか見つけられないことから、成長株投資マネージャーのポートフォリオには、PERが高く、配当利回りが低い銘柄が多くなります。一方、割安株投資マネージャーのポートフォリオには、あまり成長性の高くない割安な銘柄が多くなります。

 

保有銘柄見直しのおすすめ

 今年の日経平均は、不思議な値動きをしています。足元の景気・企業業績が絶好調なのに、日経平均はジリジリと値下がりしています。北朝鮮のリスクが意識されているのですが、それだけではありません。世界中に政治不安、地政学リスクが広がっていることが、懸念されています。

 今、日経平均の値動きが小さくなっていますが、いずれ再び、荒い値動きが復活すると予想されます。日経平均は、配当利回りなどで見て割安と判断していますが、短期的な急落・急騰はこれからも続くと覚悟する必要があります。

 こうした環境にあって、保有銘柄を見直すことも必要と思います。人気の小型成長株ばかりに投資しているならば、大型の好配当利回り株にも、分散投資したほうがいいと思います。

 これから投資をはじめる初心者の方であれば、まず大型の好配当利回り株から始めるべきと考えます。一度に大きな金額を買うのではなく、毎月一定額あるいは半年ごとに一定額を投資していく方法が望ましいでしょう。