EUの景気減速感がドルを押し上げている
同じ7日に、英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)が四半期のインフレ報告を発表しました。この報告によると、2019年の英国の実質GDPの予測は+1.2%と、前回予測の+1.7%から0.5%下方修正されました。2020年も+1.7%から+1.5%に下方修正されています。BOEは、EU離脱に伴う企業投資の萎縮や世界経済の減速を反映したと説明しています。
11日には、英国の統計局が10~12月期のGDPを発表しました。前期比で+0.2%と7~9月期の+0.6%から伸びが鈍化しています。自動車や鉄鋼製品の生産が大幅に落ち込んだほか建設も不振だったことが背景とのことです。昨年2018年通年のGDPも+1.4%と、2012年以来6年ぶりの低水準となっています。
これらユーロ圏や英国の経済成長力の見通しが下方修正されたことから、ユーロやポンドは売られました。ユーロ安やポンド安は反対取引であるドル高につながり、このことがドル/円を押し上げる要因となります。
一方で、ユーロ安やポンド安はユーロ円やポンド円も安くなりますが、反対取引の円からみると円高になります。従って、ユーロ円やポンド円が売られ、円高になる時には、ドル/円もつられて円高になる場合があります。しかし、今回の場合はドル全面高となったことからドル/円も円安に動いたため、このドル/円の円安を受けてユーロ円やポンド円の円高にブレーキがかかっている状況となっています。
ドル/円を緩慢にするハト派
ドルが全面高となり、ドル/円は110円台に上昇しましたが、1日や1週間の値幅を見るとドル/円は緩慢な動きとなっています。これは、米国の金融政策がハト派の方向に向かいつつある中でのドル高であるため、ドル/円の上値に伸びがない動きとなっているのかもしれません。
ドル/円がさらにドル高になるためには、ハト派を打ち消し、利上げ期待がかなり高まらないと一段高にならないかもしれません。
相対的に景気がよいドルが今は強くなっていますが、逆に米国景気も弱さが目立ち始め、米金融政策の利上げ停止や資産縮小の動きが明確になれば、ドル高の勢いは弱まってきます。そこへECB(欧州中央銀行)やBOEの金融政策もハト派の旗色が鮮明になれば、ユーロやポンドの売りはさらに強まることが予想されます。その時はユーロ/円やポンド/円の円高につられて、ドル/円も円高に行きやすくなることが予想されます。
ECBやBOEは現時点では金融姿勢はいまだ慎重姿勢です。さすがにタカ派ではなくなってきていますが、ハト派色はまだ強くは出していません。しかし、経済見通しが下方修正されている中、さらに弱い経済指標が続けば、FRB(米連邦準備制度理事会)のように金融姿勢がガラッと変わる可能性があるため注意が必要です。
2月13日には英国のCPI(消費者物価指数)が発表されます。弱めの数字となった場合、まだ強気のカーニーBOE総裁の金融姿勢を転換する可能性があります。
2月14日には日本とドイツの10~12月期のGDPが発表されます。日本はマイナス成長からプラス成長に転換との予測が大勢ですが、ドイツは前期比で2四半期連続のマイナスとの見方が出ています。連続マイナスとなれば、ユーロやユーロ/円は売られますが、プラス発表の場合は、ユーロやユーロ円の反発が予想されます。しかし、反発しても一時的ですぐに売り戻された場合、マーケットの欧州に対する見方はかなり悲観的だということになります。ドイツのGDPに注目です。