FRB保有資産はどうなる?

 さて、FRBの政策方針がこれまでの引き締め姿勢から一転して「ハト派」一色となりましたが、現時点では、利上げをしないことを決めたわけでもなく、保有資産縮小ペースを見直したわけでもありません。引き締め姿勢から緩和姿勢に転じたわけではなく、引き締め姿勢を一時保留し、忍耐強く様子見するという中立姿勢になったと理解したほうがよさそうです。

 FRBの「資産縮小の見直し」については、時期や方法、最終的な規模など重要な議論は次回以降に持ち越しとなっています。経済状況や議論の進展によってはタカ派的サプライズとなる可能性もあり、そのことを留意しておく必要があります。

 先週発表された米雇用統計もISM製造業景況指数も予想よりも強く、パウエル議長の柔軟姿勢を正当化するものではありませんでした。その点で、FOMC後の1月30日のマーケットの動きは市場の期待が行き過ぎたかもしれません。2月6日にパウエル議長の講演がありますが、パウエル議長はこの点について、どのように触れるのか、さらに、まだ議論されていない資産縮小の規模や方法について具体的に触れるのかどうかも注目点です。

 FRBの保有資産は、2008年のリーマン・ショック後の量的緩和によって1兆ドルから2014年秋までに4兆5千億ドルへと膨らみました。パウエル議長は、2022年までの任期中に資産規模を「2兆5千億~3兆ドル」まで減らす考えを表明していましたが、今回の見直しでは3兆5千億ドル程度で資産縮小を止める案があるそうです。現在の保有資産は4兆ドルまで減っており、年4,000億ドル前後を減らす足元のペースなら、早ければ今年2019年中に量的引き締めを終了する可能性があるかもしれません。

 

0.5%前後の利上げと同じFRB資産縮小

 ある試算によると、年間5,000億ドルの資産縮小は年1.5~2.5回の利上げと同じ作用があるとの見方があります。この試算によると、4兆ドルから3.5兆ドルに縮小することは、0.5%前後の利上げと同じということになり、現状からまだ資産縮小が続くのであれば金融引き締めが続くのではないかとの見方になります。

 しかし、逆にこの試算は、ゼロ金利以降、金利を下げられなくなったため、量的緩和による金融緩和によって政策金利はゼロからマイナスへ下がる効果があったと見ることができます。

 そのため、資産縮小は量的緩和によってマイナスとなったみなし政策金利がゼロ近辺に戻していくだけで、まだまだ緩和的との見方もあります。従って経済環境が良くなれば、資産縮小を続ける可能性もあります。このように柔軟姿勢は経済状況によっては引き締め、緩和の両方に対処するという意味であり、マーケットには半身で臨む必要がありそうです。

 

今後のドルの動きに注意

 FOMC後のドル/円は、一時108円台に入りましたが、その後はFRBの転換姿勢を好感して上昇した株式市場に後押しされ、米雇用統計も良かったことから110円台を突破しました。
現在のドル/円は「FRBの金融緩和=ドル売り、金融引き締め=ドル買い」という構図になっていないようです。当面は、FRBの先行きの方針によって上下する米株式市場に左右される構図になっている点に留意しておく必要がありそうです。