アノマリーに乗るべきか、無視すべきか?

 このように、2012年11月からスタートしたいわゆる「アベノミクス相場」が始まった後と、その前とでは、年末に向けての日経平均株価の動きはだいぶ様相が異なっていることが分かると思います。

 確かに年末に向けて株価が「上がりやすい」とはいえますが、必ず上昇するわけではないことに注意すべきです。
 もし、このアノマリーに乗って日本株を大量に買い仕込んだ結果、リーマン・ショックに近い状況になったとしたら、とてつもないダメージを受けてしまう恐れもあります。

 そもそも、2012年11月以降のアベノミクス相場は、長期上昇相場です。上昇相場であれば、時が経過するにつれ株価が上昇しやすいのも事実です。
 長期上昇相場の時期だけを取り出し、「6年連続でプラスだから今年もそれに乗るべき」とする考え方には危うさを感じてしまいます。

 

アノマリーに「乗る」のではなく結果として「乗れている」のが理想的

 したがって、筆者はアノマリーの類は一切無視しています。ところが、過去6年間の年末高にはしっかりと乗ることができています。結果としてアノマリーに「乗れている」というのが正しい表現です。

 なぜアノマリーに「乗れている」のか、それは筆者が株価のトレンドに従って常に行動しているからにほかなりません。大幅な上昇となれば、株価が上昇トレンドになりますから、それに素直に乗っているだけです。

 ですから、もし9月以降株価が上昇せず下降トレンドが続いたとしたら、株を新規に買うことも保有することもしません。たとえ6年連続年末高になっているというアノマリーが存在してもです。

 筆者はアノマリーではなくトレンドに従って動いているのです。そうすれば年末高の上昇が生じた時は上昇トレンドになりますからそれに乗ることができます。2007年や2011年、そして2008年のリーマン・ショックのような事態が生じた場合は株価が下降トレンドになるため保有株は売却し、新規買いは行いません。その結果、株価上昇の恩恵を受けつつ、株価下落を回避することができるのです。

 

6年連続ならば本当に7年目も続くのか?

 もし、年末高アノマリーを信じている状況で、急落・暴落が生じた場合、適切な時期に保有株を売却することができず、多額の含み損をかかえてしまう恐れがあります。
 また、急落・暴落に至らないとしても、長期上昇相場が終焉してしまえば、株を保有し続ければするほど株価が下落してしまうことになりかねません。

 個人投資家の中には、アベノミクス相場がはじまってから株式投資を始めた、という方が大勢います。その人は、リーマン・ショックをはじめと急落・暴落や、バブル崩壊後の長期低迷相場を経験したことがありません。

 ですから、6年連続年末高と言われると、「きっと今年もそうなる!」と考えてしまいがちです。

 しかし、筆者をはじめ、急落・暴落や長期低迷相場を経験しているベテラン投資家は違います。相場に100%確実なことはないことを身を持って経験していますから、6年連続年末高と聞いても、「今年もそうなるとは限らない」と思って行動します。

 アノマリーを信じると、アノマリーとは異なる結果となった場合に大きな損失を被ってしまいます。でも、株価のトレンドを信じれば、上昇トレンドになれば株を新規買いして保有し続けますから結果的に年末高のアノマリーに乗れますし、下降トレンドであれば株を保有しないので損失を回避できます。

 アノマリーに乗るのではなく無視をする、しかしトレンドに乗れば結果的にアノマリーに乗れる……これが筆者が考えるアノマリーとの付き合い方です。