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止まらないプラチナ消費減少。フォルクスワーゲン事件から今後を考察
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

止まらないプラチナ消費減少。フォルクスワーゲン事件から今後を考察

2018/9/7
・2015年9月に問題発覚。今年6月には「行政罰の手続きはすべて完了」との宣言あり
・ここ数年間のプラチナ消費量減少の主因は、フォルクスワーゲン問題ではない!?
・ただ、英調査機関の統計では2015年以降、触媒向け消費量は下方修正され続けている
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 2015年9月18日に発覚したフォルクスワーゲン(以下、VW社)の不正問題。あれからおよそ3年が過ぎようとしています。今年6月、同社は「行政罰の手続きはすべて完了」という声明を出しました。果たしてこの問題は終結したのでしょうか? 自動車と切っても切り離せない関係にあるプラチナについて、今後の需給はどのように変化していくのでしょうか?

 今回のレポートでは、英国の調査機関が9月6日に公表した最新のデータを踏まえ、プラチナの今後を考察していきます。

 

2015年9月に問題発覚。今年6月には「行政罰の手続きはすべて完了」との宣言あり

 国際的なモーターショーで知られる「フランクフルト・モーターショー」。3年前の2015年の会期中に、米環境保護局が世界的な自動車会社でドイツ経済の柱と言われるVW社のディーゼルエンジンに違法性があると指摘し、VW問題が発覚しました。

 それから2年9カ月後の2018年6月、VW社は、地元検察から命じられた罰金を受け入れるとし、「行政罰の手続きはすべて完了する」と声明を出しました。これにより、ドイツ国内でも不正を認め、一連の騒動に幕引きを図ったと考えられます。

 自動車の排ガス浄化装置に触媒()として用いられるプラチナですが、騒動発覚後は消費が伸びなくなるのではないかという懸念が広がりました。手続き上、騒動は収まり、消費は戻ると期待されます。

※触媒…自らの性質を変えずに相手の性質を変えること。エンジンとマフラーの間に装着された排ガス浄化装置内にプラチナが塗布されています。プラチナは自身の性質を変えずに、その装置を通過する排ガスに含まれる有害物質を無害な水などに変えています。

 しかし、そしてこの騒動は世界規模の「エンジンからモーターへ」の機運を高め、自動車鉱山からのプラチナ供給が拡大するきっかけを作りました。つまり、この騒動はくしくも世界規模の「消費の伸び鈍化」と「供給増」の両方の要因になったのです。

 また、技術革新によって、車1台あたりに排ガスの触媒として使われる貴金属の量が減少してきている点も重要です。これについて解説した以前のレポート「安値を拾うプラチナ版『ミセスワタナベ』動く」をご参照ください。

 この一連の騒動が残した爪あとは深く、今後は世界のプラチナ需給が引き締まる方向に向かうのは難しいのではないかと指摘する声もあります。

 

ここ数年間のプラチナ消費量減少の主因は、VW問題ではない!?

 英国の調査機関WPICは、おおむね四半期ごとにプラチナの世界的な需給に関するデータを公表しています。プラチナの場合、原油や石油関連の品目のように毎週、あるいは毎月、需給に関する最新のデータを入手することは難しく、その意味ではWPICのデータは非常に貴重だと言えます。

 図1は、世界全体のプラチナ消費量とプラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費量の推移です。

図1:世界全体のプラチナ消費量とプラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費量の推移(1975~2017年)

単位:千トロイオンス(1トロイオンスはおよそ31グラム)
出所:WPICのデータより筆者作成

 

 この図を見ると、VWの不正が発覚した2015年以降、世界のプラチナ消費量はやや減少したことがわかります。2013年のおよそ850万トロイオンスを歴史的なピークとし、2017年はおよそ776万トロイオンスとなりました。

 一方、自動車排ガス浄化装置向け消費は2010年以降、「頭打ち」の状態であり、大きな増減はなく、大局的には「横ばい」と言えます。

 VW問題は世界のプラチナ消費を減らしたのかという問いに対して、この2つのデータを参照した上で回答するのであれば、答えは「今のところNo」だと筆者は思います。

 VW問題が世界のプラチナ消費を減少させたのであれば、自動車排ガス触媒向け消費が先導して減少しているはずですが、そうなっていません。

 世界のプラチナ消費量が減少した点については、以前のレポート「器用貧乏なプラチナ。悲しき宿命と価格低迷」で述べた、中国での宝飾品向け消費の減少が大きな要因だと考えられます。

 VW問題に端を発した「エンジンからモーターへ」のムードは、今のところ、ムードの域を超えておらず、データに表れる実態に発展してないと言えそうです。EV(電気自動車)などの次世代自動車が注目を集めれば集めるほど、有毒物質を含むガスを排出するエンジンへの否定的な見方が強まり、プラチナ消費が減少するという「連想」が働きやすいのだと思います。

 では、今後もVW問題はプラチナ消費を減少させることはないのでしょうか? この点について、WPICのデータから興味深い点を確認することができました。

 

英調査機関の統計では2015年以降、触媒向け消費量は下方修正され続けている

 図2は、自動車排ガス浄化装置向けプラチナ消費量の実績値と見込み値の変化を表したものです。

 VW問題が発覚した翌年の2016年、2017年、2018年各年の、同消費量の実績値と見込み値が、2017年9月以降の5回の統計発表時点でどのように変化したのかを示しています。

図2:自動車排ガス浄化装置向けプラチナ消費量の実績値と見込み値の変化

注:実践は実績値・破線は見込み値
単位:千トロイオンス
出所:WPICのデータをもとに筆者作成

 VW問題が発覚した翌年の2016年の実績値は上下に変動しました。上下の変動は、過去分のデータの微調整だと考えられます。

 ただ2017年の実績値と、2018年の見込み値は連続して下方修正されています。上下ではなく、連続した下方修正となると、そこにトレンドが出ている可能性が出てきます。

 2017年は実績値としてそこまで消費していなかったと、2018年は見込み値としてそこまで消費されないだろうと、時間が経過してデータの確度が高くなるごとに下方修正されてきている、現在進行形なわけです。

 2016年は上下の修正(連続した下方修正はなかった)であったものの、2017年は実績値を、2018年は見込み値を下方修正しているとなると、VW問題発覚当時から翌年まではそれほど大きくなかったこの問題が、実は大きな問題であり、後付け的にデータに反映されてきている可能性があります。

 この点が今後どう変化するかが、世界の自動車排ガス浄化装置向けのプラチナ消費の動向を占う上で大きなヒントになると筆者は考えています。2010年以降、「頭打ち」「横ばい」とした同消費量が、今後減少する可能性が残っていると筆者は考えています。

 VW問題発覚からおよそ3年が過ぎました。VW問題がプラチナ需給に与える影響は、実はこれから本格化する可能性があることに留意が必要であることを、WPICのデータが示唆していると言えます。

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