人気の株主優待

 株主優待は、個人投資家の間で人気のあるテーマだ。以前からそう感じているし、優待人気は益々高まっているように見受ける。「トウシル」でも株主優待を扱う記事はよく読まれている(個人的には、将棋ファンなので、桐谷広人さんが登場する記事を見ると嬉しい)。

 しかし、今回は、多くの優待好きの投資家を敵に回すかも知れないが、「アンチ株主優待」の側に立って論じてみることにする。

 株式投資のいいところは、気に入らない銘柄は買わなくてもいいし、或いは会社の業績や方針がダメだと思っても、「そのことを計算に入れた上で」株価が魅力的なら投資すればいいという自由さだ。従って、株主優待について、「いい」とか「ダメ」とか、一方的な結論を出す必要はないのだが、優待に関連する得失について考えてみたい。

 

マーケティング手段としての優待

 株主優待の典型的なものは、メーカーが自社製品と交換できる優待券を配ったり、飲食業で食事券を配ったり、遊戯施設を営む会社が入場券を配ったりするような、会社が扱っている商品・サービスの提供だ。

 仮に自社の商品を優待に使うとして、「株主に商品と交換可能な優待券を配布するコスト」と「同額の現金配当を行うコスト」とが同じだとすると、会社が商品券を配布する方がいいと判断できる場合は、自社商品の配布が商品に対する追加的な需要を喚起する呼び水的な役割を果たすと見込みがある場合だろう。

 特に個人の株主は会社のファンである可能性が大きいから、自社商品の配布がマーケティング上プラスの効果を発揮する場合はあるかも知れない。例えば、食品を食べてみて気に入って、追加で購入するようなケース、あるいは、遊園地の入場券を優待で1枚手に入れたことで、連れて行きたい家族や友人の分まで入場券を追加購入するような場合だ。

 こうした効果が顕著にあることが明確なら、優待品を欲しない株主も株主優待に賛成できる場合があるように思われる。

 もっとも、例えば遊園地の場合、年間に使いたい回数が決まっている顧客が、優待券目当てで株式を持って入場券を手に入れるなら、遊園地の売り上げに対してはマイナスの効果が発生する場合もあるだろう。

 尚、株主優待が、業績と株価に対してどう働くのかの測定は、簡単ではない。優待導入の前後の株価比較だけでは、優待が長期的に及ぼす影響を捉える事ができないからだ。

 

機関投資家はアンチ株主優待

 筆者が、株主優待に対して「アンチ」である主な理由は、株主優待が機関投資家にとって不都合で何らかのロスが生じる仕組みだからだ。

 写真は、国家公務員の年金を運用する国家公務員共済組合連合会の「平成29年度 業務概況書」の52ページにある記述だ。

 国家公務員共済組合連合会は国家公務員の年金を運用しているが、年金資産による投資を通じて保有する株式から生じる株主優待券は、資産を管理する信託銀行によってチケットの買い取り屋等に持ち込んで換金してファンド資産に繰り入れたり、換金できないものについては寄付をしたり、といった処理が行われる。前者では買い取り等の際にコストが発生するし、後者では寄付の行為が感謝されるとしても、年金資産の運用としては明らかな無駄が発生する。

 こうした機関投資家にとっての株主優待の不都合は、大半の外国人投資家にとっても発生するし、インデックス・ファンドなどを含む投資信託の投資家にとっても発生しているはずなのだ。

「投信投資家の皆さんは、株主優待がある事で損をしています」ということは、この際申し上げて置きたい。

 株主優待は、これが有益な株主と、そうではない株主とを発生させる。株主を平等に扱わない点が、株主優待の最大の問題点であると筆者は考える。