「低PER(株価収益率)=割安」は株式投資の常識。でも、低PERでも株価が上昇するものとそうでないものがあります。その違いは一体どこにあるのでしょうか?
今でも根強い「低PER」信仰
読者の皆さんは、どのような基準で銘柄選びをしていますか?株価が割安かどうか、という切り口から投資対象とする銘柄を選んでいる方も多いと思います。
株価が割安かどうかを示す代表的な指標が、「PER(Price Earnings Ratio)」です。株価が1株当たり予想当期純利益の何倍の水準かを表すもので、「株価収益率」と訳されます。PERの数値が小さいほど株価が割安とされます。一般的にはPERが15~20倍が適正値と考えられています。
例えば1株当たり当期純利益が100円、株価が3,000円のA社のPERは3,000円÷100円=30倍です。1株当たり当期純利益が100円、株価が800円のB社のPERは800円÷100円=8倍と計算されます。
単にPERの数値のみで比較すれば、A社よりもB社の株価の方が割安、と判断されます。このことは初心者向けの株式投資の教科書には必ず書いてありますし、投資情報サイトや雑誌でも「PERが10倍を切っているから割安」として投資を推奨する専門家も数多くいます。
「低PER=割安」なのは本当?
しかし、不思議なことに、PERが高いA社の株価は上昇を続け、PERが低いB社の株価は全く上昇しない……という現象がしばしば起こります。なぜ、そのようなことになるのでしょうか?
最も大きな理由は、B社は今後業績が伸びない、もしくは悪化すると投資家が予想しているからです。いくらPERが低くても業績が伸びなければ、株価はなかなか上昇しません。筆者の投資経験からいえば、業績が横ばいの銘柄の妥当なPER水準はせいぜい10倍程度です。今後業績の悪化が見込まれる銘柄であれば、10倍を大きく割り込むこともあります。
ですから、低PER銘柄ランキングの上位のものを片っ端から買ったり、スクリーニングで低PER銘柄を探して買っても、株価が上昇しないことが多いのです。