中国・韓国で相次ぐ仮想通貨規制

 2017年9月4日、中国の中央銀行である中国人民銀行などの7部署が、仮想通貨を利用したクラウドファンディングの一種であるICO(Initial Coin Offering)による資金調達を違法と判断し、即時停止するとの声明を発表。その後、10月末までに仮想通貨取引所を閉鎖し、人民元での取引中止を実施しました。

 韓国では、9月29日、韓国金融委員会(FSC)が中国と同じくICOの禁止と仮想通貨の証拠金取引(一定の金額を口座に預けそれを担保として取引すること)を禁止することを発表しています。

 

規制前の仮想通貨取引の中心は中国

 1年ほど前まで、中国は仮想通貨取引の世界市場の中心でした。ビットコインの取引通貨シェアでも、人民元は8割以上という圧倒的な割合を誇っていたのです。

 一方、韓国もまた今年の初夏のあたりから取引量が劇的に伸び、韓国国内の取引所での取引量が世界1位を記録することもあったほど、市場で存在感が増していました。

 しかし、中国では詐欺的なICOの横行や当局による人民元流出への不快感、韓国では取引量増大によるハッキング被害の頻発などの問題から、両国政府は規制へと舵を取りました。

 

日本の仮想通貨対策

 規制強化の方向へ進む中国、韓国とは対照的に、日本では2017年4月1日に「改正資金決済法」が施行され、それに基づき9月29日に金融庁による仮想通貨交換業者11社の登録が行われました。これにより、日本での仮想通貨取引は中止や停止という方向ではなく、金融庁監督のもとに顧客の身元確認の徹底やマネーロンダリング対策に取り組んでいくことに。さらに、金融庁は「仮想通貨モニタリング長」というポストを設け、専門チームがICOの対応に乗り出しており、より安全な取引が行える環境へと道を作っています。

 

シェアを広げる日本円取引

 これらの流れを受けて、ビットコインの取引通貨シェアに影響が出ています。11月17現在、日本円建てでのビットコインの取引シェアは59.86%と過半数を占める勢いとなっており、米ドル23.34%、韓国ウォン建て10.88%、ユーロ建て3.55%という数字を見ても、他国や他共同体を圧倒しています(cryptocompare.comより)。

 日本ではビットコインで決済ができる店舗や業種も増えています。一般の消費者にも少しずつ、支払い手段としてのビットコインが浸透してきていることも、シェア拡大に影響しているのではないでしょうか。

 

規制とチャレンジによって変わる勢力図

 さらに日本では、DMM.comやGMOインターネットなどといったインターネット関連企業が、これまでは中国の独壇場と言ってよい状態だったマイニング(ビットコインの新規発行過程)の領域に乗り出すことを表明しました。

 中国では仮想通貨市場での取引規制は行っていますが、マイニングに対する規制はまだ行われていません。電気料金やハードウェアの安さはマイニング環境やツール開発ではいまだに中国が優位な立場といえます。

 しかし、日本の企業のチャレンジにより、市場取引の側面だけでなく仮想通貨全体にかかわる各国の勢力図に変化が起こるかもしれません。