執筆:香川睦
今日のポイント
・ドル建て日経平均が節目の200ドルを突破。外国人投資家にとって日本株のドル建てリターン向上を示す。ただ、株価上昇ペースが急だった反動で、短期では反落の可能性も。
・押し目を好機とするなら、どの業種や銘柄に注目? 2017年から2019年までの利益成長見通し(市場予想平均)にもとづき、東証17業種別と大型銘柄別に優劣をランキングした。
ドル建て日経平均が節目の200ドルを上抜け
日経平均は今週、「バブル崩壊後の戻り高値」であった2万2,666円(1996年6月)を突破し、一時はザラ場で1991年1月以来25年10カ月ぶりに2万3,000円台に回復しました(9日)。東証1部売買代金も膨らんでおり、10日移動平均値が約3.5兆円に達したのは、2013年6月以来の活況です。一方、円安が進まないなかでの日本株高で、「ドル建て日経平均」も一段と上昇。心理的な「節目」とされていた200ドルを1996年7月以来約21年ぶりに上抜けました(図表1)。
ドル建て日経平均の年初来上昇率は23.1%と、日経平均の同19.6%をしのいでいます。外国人投資家、なかでも中長期の投資を行う機関投資家は、日本株投資に為替ヘッジをかけない場合が多く、投資成果はドルベースで評価されます。ドル建て日経平均やMSCIジャパン株価指数(ドル建て)に象徴される「ドルでみた日本株リターンの好調」は、海外勢の日本株に対するセンチメントを一段と改善させる可能性があります。ただ、株価上昇ペースが急だった反動もあり、目先的にはスピード調整入りが警戒される状況です。
図表1:ドル建て日経平均の長期推移(1980年以降)
内外景気の拡大は業績見通し改善の追い風
既述のとおり、米国の株価指数は毎週のように史上最高値を更新し、日経平均もドル建て日経平均も、長期的視野で注目されていた「節目」を上抜けました。こうした強気相場は何を反映するのでしょうか。簡単に言えば、低インフレ・低金利下の海外景気の拡大で、業績見通しの改善が進んでいる要因が大きいと考えています。
例えば、内閣府は8日、2012年12月に始まったとされる「国内景気の回復(拡大)局面は、高度成長期の「いざなぎ景気」(57カ月間)を超え、戦後2番目の長さ(58カ月間)」となった可能性が高い」と指摘しました。グローバルグロース(海外の経済成長)を受けた外需拡大、アベノミクス(特に日銀による大規模金融緩和)効果、為替の安定基調を受け、国内経済は安定成長を続けています。構造的な問題で、実質賃金や個人消費は伸び悩んでいるものの、緩和的な金融環境と内外景気回復のコンビ(組み合わせ)は、企業業績の改善期待に繋がり株高の追い風となりやすい要因です。
図表2は、米国市場(S&P500指数)と日本市場(TOPIX)のEPS(1株当り利益)の実績と市場予想平均の推移を示したものです。日米ともに2017年は二桁増益でかつ最高益を更新する見込みです。2018年も2019年も最高益を更新する好業績が見込まれています。目先に短期的な株価調整はあっても、中期的には「マクロ環境改善→業績期待向上→業績相場持続」を期待しやすい環境が続きそうです。
図表2:米国株式と日本株式の業績動向と見通し(EPS実績と予想の推移)
今後2年の利益成長率が高そうなセクターや銘柄は?
株価上昇が一本調子だっただけに、短期的な株価反落があっても不思議ではありません。実際、今週は米国で税制改革を巡る共和党議会での調整難航が悪材料となり始めました。そうした押し目がある場合、どのような業種や銘柄に注目したらよいでしょうか。
参考までに、(1)東証17業種指数別に、(2)東証上場大型株(TOPIX100指数構成銘柄)をユニバース(母集団)とし、2017年から2019年までの予想EPS(市場予想平均)の増減益率を降順にランキングしてみました(図表3と図表4)。セクター別では情報通信・サービス、エネルギー資源、電気・精密、機械などが市場平均(TOPIX=16.8%)に対し優勢な利益成長が見込まれています。一方、電力・ガス、銀行、不動産などの利益成長率は相対的に劣後していくとみられています。
また、利益成長見通しが優勢なセクターや銘柄については、株価の年初来騰落率も平均的に高いことがわかります。予想利益成長率が相対的に高い主力銘柄には、国際競争力や商品・サービス力に評価が高いグローバル企業が多く、外国人投資家による注目度も高いと考えられます。
図表3:東証17業種-2019年までの予想EPS成長率ランキング(市場予想平均)
<図表4:TOPIX100銘柄-2019年までの予想EPS成長率ランキング(市場予想平均)>