成功者が語る「資産を築いた今、人生の満足度は?」

 あなたの一番ほしいものは何ですか?――。資産運用や投資において大事なことは、お金を増やす方法論ではなく、目的を明らかにすること。その答えは十人十色で、正解はありません。自分が大事にしたい価値観を見つめ直し、何のためにどのくらいの資産が必要なのかを考えることが、あなたにとって満足度の高い人生につながるはずです。

 実際に、投資で多くの資産を築いた個人投資家は自分の人生に満足しているのか? これから手に入れたいものは何か? 投資の成功者がたどり着いた人生観を知ることで、あなたにとって「一番ほしいもの」を探す手がかりが見つかるかもしれません。

さぶさん(38歳)のプロフィール

大学卒業後、3年半ほど大手証券会社で働く。転職、結婚、出産後、2人の子供を育てながら働く「フルタイムワーママ(ワーキングママ)」。投資歴は8年。気が向いたときに楽天証券やマネーフォワードの口座画面を見て投資成績をチェックする「ゆる投資」スタイルの運用で、2024年に資産3,000万円を達成。投資や節約情報を発信するインスタグラム「さぶ 元証券ウーマン@sabu_1985」のフォロワー数は21万9,000人。著書に『元証券ウーマンの資産運用の話 お金が増える「ゆる投資」デビュー』(KADOKAWA)など。

※以下のアンケートは2024年8月3日に実施しました。

投資で十分なお金を手に入れたと実感できたのは資産がいくらになったときですか?

 私にとっては200万円、1,000万円、3,000万円という三つのステップがありました。

 結婚したとき、私は親の借金300万円を背負っていて、夫にも奨学金の負債が600万円あるという非常にマイナスの状態から資産形成を始めました。

 結婚後も子供が2人生まれたり、家を買ったりといったライフイベントがたくさんある中、共働きで得た収入や節約でなんとか200万円を貯めることができたときは「ああ、やっと余裕資金ができて投資が始められるな」と実感しました。投資に回す以前に、日々の生活で何かあったときの生活防衛資金が最低200万円は必要だと聞いていたので、200万円は一つ目の大きな壁でした。

 二つ目は資産が1,000万円の大台に乗ったときです。節約と投資の両輪で増やしましたが、3年半で早期達成できたのはやはり投資のおかげだと思います。

 三つ目はごく最近ですが、1,000万円の資産が5年半かかって3,000万円を突破したとき。これも投資の力がないと絶対に達成できないスピードでした。夫が「これでお金の不安がなくなったね」とはっきり言ってくれたことが、一番感慨深かったです。

中でも充足感が高かったのは資産がいくらになったときですか?

 最初に200万円の貯金をつくるまでが一番大変でした。私も夫も大きな負債がある状況からのスタートだったので、時間がかかったなという感覚です。

 20代はほんとにお金のことしか考えていなくて、仕事帰りの電車の中で「今日残業を何時間したから、給料はいくら増えるかな?」と毎日、スマホの電卓で計算していたぐらい。「なんで、こんなにお金がないんだろう」と悩んでいました。

 独身時代、「資産がマイナスの状態で結婚するのは恥ずかしい」と思って、FX(外国為替証拠金取引)で増やそうとして逆に30万円ぐらいスッてしまったこともあります。証券会社に勤めていた経験もあるし、もしかしたらレバレッジを利かせて売買すればお金が増えるかもしれないという甘い誘惑に乗ってしまったことを後悔しました。

十分な資産を得て、初めて行ったことは何ですか?生活面での変化は?

 1,000万円貯めたときに中古のBMWを200万円で買いました。夫がすごく喜んでいました(笑)。私たちは埼玉の田舎に住んでいて、子供が熱を出して病院に行くときなど、どうしても車を2台持たないといけない地域なので、必要なものとして購入しました。

 私個人としてお金が貯まって一番充足感を感じるのは、お花を買えるようになったことですね。

 お花屋さんって上京してからよく見かけるようになったんですが、幼少期に過ごした自分の実家では花を飾っていませんでしたし、「この花を1本350円も払って買える人は誰なんだろう」といつも思っていました。そんな花を見て、「今日はきれいだな、じゃあ、買って帰ろう」と思えるようになったことで、精神的に豊かになったと感じています。

資産を得たことで、特に満足度や幸福度が高かったと思えることは何ですか?

 毎年、お盆の時期に北海道旅行に行けるようになったことは特に満足度が高いです。自分が子供のときは実家に金銭的な余裕がなく、旅行なんて隣の県にある琵琶湖に1回行った記憶しかありません。

 そのせいもあって、自分の子供たちに毎年、旅行させてあげられているのは非常に幸福度が高い体験です。子供時代に旅行に行けなかった自分自身を癒やしているというか、慰められている感覚がすごくあります。

十分な資産を得られたからこそ、今できていることを教えてください。

 お金について悩まなくなったことが非常に大きいです。仕事だったり育児だったり、生活することに自分のリソースを100%注ぎ込めていますね。

人生は続きます。この先、あなたが手に入れたいものは何ですか?

 資産を増やそうと思ったのは、自分の子供を妊娠したときでした。子供のためにインフレ対策しなくちゃいけない、教育資産をつくらなきゃいけないと思ったことが、貯蓄と投資を始めたきっかけだったので、子供に十分な教育を受けさせる、というのが私の中の投資のゴールになるのかなと思います。

 老後資産に関しては、この先、何十年もの長期間にわたってじっくり増やしていけばいいという感覚があります。それに対して教育資金は私の娘2人が4年制の大学を卒業するまでに総額いくらぐらい必要か、逆算すれば計算できるもの。必要な金額に達するまで資産を目減りさせない投資戦略がすごく大事になります。

 まだ教育資金が潤沢に貯まっていない資産形成の前半では、安定企業の社債などを買って手堅く運用することから始めました。その後は携帯キャリアのソフトバンク(9434)など、間違いなく大型銘柄で株主配当が銀行預金よりもしっかり出る高配当株で運用しています。

十分な資産を持っていなかった過去の自分にアドバイスするなら、どんなことを言いますか。

「継続は力なり」です。5、6年前にトウシルの取材を受けたときと同じ言葉です。自分の投資戦略が昔も今も変わっていないんだなと振り返っています。

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 私の投資経験上も、これまでで一番パフォーマンスがいいのは今勤めている会社の持株会で積み立て購入した自社株です。積み立てる金額は途中で変えているんですが、お金があまりないときから毎月1万5,000円ずつ、こつこつ買い続けていて、今は大きな含み益があります。

 毎月の購入額は小さいかもしれないけれど、買い続けることが大きなパワーになるんだなと、すごく実感しています。

 投資を始めた当初、相場が大きく下がったときに怖くてろうばい売りしてしまった経験もありましたが、自分が信念を持って買った銘柄はちゃんと持ち続けること、買い続けることがあとで振り返ると大きな資産になっているよ、ということを昔の自分に伝えたいと思います。

2024年8月初旬、株式市場で歴史的な大暴落がありました。新NISAで投資を始めたばかりの初心者にアドバイスはありますか?

 相場が不安定で不安になる人は多いと思いますが、長期運用が大前提の新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)では運用当初のマイナスをそれほど気にする必要はないと思います。

 私が証券会社に入社したのは2008年9月に起きたリーマン・ショックの1年前で、証券会社の先輩たちが冷や汗というか、本当にボトボトと汗を垂らしながらお客さまに電話している光景を目の当たりにしました。

 そのせいもあって、ここ数年の上げ相場のほうが逆に怖くて、今回の8月上旬の下げのように少し調整してガスを抜いたほうが逆に上昇相場にはいいのではないか、と思っているぐらいです。

 この機会に、自分は何に信念を貫いて投資しているのかを振り返ってメモにとって、自分を正しく保つことが重要なのかなと思います。私自身は「バーゲンセールがやってきた」といった感じで、この下げ相場での買い増しも検討しています。

現在の自分の満足度を100点満点で表すなら、何点ですか。

 98点です。足りない2点は2人の子供たちに1点ずつです。もしかしたら教育費を全然使わないかもしれないですし、私立や海外の大学に行きたいという想定外のことが起きるかもしれないので2点分引きました。

生涯を終えるまでに達成したいことを教えてください。

 私は記憶がないんですが、どうやら私が3歳のときにおばあちゃんと一緒に静岡に旅行したことがあったようで、うちの母はいつもうれしそうにそのときの写真を見せて話してくれます。年をとってきたとき、誰かと旅行に行くのはとても喜ばしいことだと思います。自分が生涯を終える前に母親や自分の孫、ひ孫もつれて旅行に行けるような資産を築けていたらいいな、と思います。