トランプ大統領決定後の日本株上昇が止まりません。気がつけばすでに1カ月が経過し、何となく傾向が見えてきた感があります。過去の大相場と比較しながら、今後の対策も合わせて考えてみたいと思います。
この1カ月間のマーケット振り返り
トランプ大統領誕生の第一報があった11月9日の急落をイレギュラーなものとして除外すると、日経平均株価は17,300円どころから12月9日の19,000円まで、1カ月の間に約10%上昇しました。TOPIXも1,375ポイントどころから12月9日の1,525ポイントまで、10%強の上昇です。
株価上昇は日本だけでなく、アメリカではNYダウ、ナスダックともに史上最高値を更新しています。
株価上昇と同時に為替レートも大きく円安となり、1ドル=104円どころから115円台まで、10%ほど円安が進みました。
長期金利も大きく動いています。1.8%近辺だったアメリカ10年物国債利回りは2.4%台まで大きく上昇、日本の10年物国債利回りも、マイナス0.05%からプラス0.06%まで上昇しています。過去の経験則上、アメリカの長期金利が上昇すると日本株は上昇することが多いです。
このことに加え、外国人投資家が1カ月で日本株を1兆6千億円も買い越していることも合わせると、今は日本株が上昇しやすい相場環境にあるといえます。
まだまだ全面高とは言い難い個別銘柄
しかし、個別銘柄をみると、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数とは少し様相は異なります。今のところ、株価が上昇トレンドになっている個別銘柄の方がもちろん多いものの、下降トレンドにとどまっているものも少なくありません。筆者の感覚では、全体の2~3割ほどは下降トレンドのままです。
そして、株価が強い銘柄は、直近1カ月間ずっと株価が上昇していて、逆に弱い銘柄は1カ月間株価の下落が続いているという、かなり両極端な動きとなっています。
例えば、三菱東京UFJフィナンシャル・グループ(8306)の日足チャートを見ると、11月10日以降、押し目らしい押し目もなく、ほぼ一本調子で株価が上昇していることが分かります。
一方、デジタルアーツ(2326)の日足チャートをみると、11月10日からの1カ月で逆に株価が下落していることが分かります。
強い銘柄・弱い銘柄の特徴とは
筆者は、日々400銘柄程度の株価チャートをウォッチしていますが、強い銘柄と弱い銘柄の株価チャートをみて、気がついたことがあります。それは、「高値ないし安値をつけた時期」です。
足元の1カ月で株価が大きく上昇しているメガバンク3行(三菱東京UFJフィナンシャル・グループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411))は、いずれも7月8日に安値をつけています。また、他に株価が大きく上昇している銘柄をみてみると、例えば野村ホールディングス(8604)やJFEホールディングス(5411)、NEC(6701)の安値はそれぞれ6月28日です。
このように、トランプ大統領誕生以降に株価が大きく上昇している銘柄の多くは、今年の6月~7月に安値をつけているという特徴があります。
一方、足元の1カ月で逆に株価が下落している銘柄をみると、先のデジタルアーツは7月1日に最高値をつけています。他に、MonotaRO(3064)は6月10日に、寿スピリッツ(2222)は7月4日に、セリア(2782)は7月1日にそれぞれ高値をつけています。
つまり、直近の1カ月で大きく値上がりしている銘柄は今年6月~7月に「安値」をつけ、逆に値下がりしている銘柄は今年6~7月に「高値」をつけているのです。
銘柄によって異なる株価上昇の「リズム」
なぜこのような明確な特徴が出ているのか、それは様々な要因、特に需給要因により銘柄ごとに株価の動きに上げ下げの「リズム」が生じ、それは銘柄によって異なるからです。
いくら好調な業績が続き、ファンダメンタルの面から有望な銘柄であっても、株価上昇がいつまでも続くことはありません。時には1~2年ほど、株価が調整する局面を挟むのが通例です。
直近の1カ月の株価の動きが冴えない銘柄は、今年6~7月にかけて株価上昇が長い間つづいていて、今は株価が丁度一服するタイミングであったといえます。
一方、直近1カ月に大きく株価が上昇した銘柄は、2015年に高値を付けた後、1年ほどにわたり株価の調整局面が続いたのちに今年7月前後に底打ちしているものが多いです。そのため、今は再度株価が上昇しやすいタイミングにあるものと考えられます。
また、ファンダメンタルの面からとらえると、今年6~7月に高値をつけた銘柄は、毎年売上や利益が増加を続けている、いわゆる「成長株」です。
今年6~7月までは多くの個別銘柄が軟調な動きをする中、成長株である一部の銘柄に投資資金が集中し、株価上昇を続けてきました。それが、トランプ大統領誕生後は外国人投資家の資金が大量に流入、その受け皿となり得る大型株が買われるようになり、成長株への資金流入が止まりました。そして、トランプ相場が思いのほか継続したため、成長株へ投資していた投資家が、株価指数よりはるかに低いパフォーマンスになっていることを嫌気して成長株を売却して大型株にシフトしています。そのために両者の対照的な動きがさらに加速しているのです。
大相場では「ファンダメンタル」があまり通用しないことが多い
このように、特に外国人投資家から大量の投資資金が流入する大相場においては、その受け皿となるような大型株に資金が集中し、相対的に大型株が上昇しやすくなります。一方、ファンダメンタルの面では何ら売られる理由のない「成長株」は、投資資金が流入しにくくなるため軟調な動きになったり、上昇しても上昇率が相対的に低くなったりします。
2012年11月中旬から2013年5月下旬まで続いた初期アベノミクス相場においても、ファンダメンタル面で有望な成長株の上昇率は相対的に低いものでした。
では、「成長株」はすでに天井をつけたのかといえば、それは分かりません。ただ、初期アベノミクス相場が終了した2013年6月以降は、逆に「成長株」の方が大きな値上がりをみせました。今回も、仮にここから大相場となってもそれが落ち着けば、再び「成長株」へ資金が戻ってくる可能性も大いにあります。
もし足元で売られている成長株で気になる銘柄があれば、上昇トレンドに転じるのを待ってから新規買いすればよいと筆者は思います。
要は、筆者のように大相場に発展するかもしれない足元の相場で上昇トレンドの個別銘柄に乗って大きな利益を目指すか、それとももう少し長いスパンで考え、足元で株価が下がって割安になっている成長株を拾い集めるかというスタンスの違いです。
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