日を追うごとにますます顕著になっている日本株の変化。今回は、参議院選挙後に起こっている日本株の変化をさらに深く追求していきます。それを踏まえて、今後の日本株の展望や投資戦略についても考えてみたいと思います。

足元で株価が大きく上昇した銘柄の特徴とは?

前回にて、ミネベア(6479)ジェイテクト(6473)などの株価が参議院選挙後の1カ月で大きく上昇したことをお話ししました。それ以外にも東京製鐵(5423)日本取引所グループ(8697)の株価も、参議院選挙後に40~50%上昇しています。

実はこのように、足元で株価が大きく上昇した銘柄にはある特徴があります。それは、「参議院選挙(7月10日)前後に安値をつけている」という点です。

例えばミネベアの安値は7月8日、ジェイテクトは7月7日です。東京製鐵の安値も7月7日、日本取引所グループは6月28日に安値をつけています。

つまり、参議院選挙後の日本株は、参議院選挙が行われた7月10日前後に安値をつけた銘柄が中心に買われている、まずこの事実を押さえておいてください。

1ドル=100円近辺の円高にもかかわらず輸出株が大きく上昇している事実

では、7月10日前後に安値をつけた後、上昇を続けている銘柄に何か特徴はないか探してみました。すると、輸出関連株が多いことに気がつきました。上で挙げているミネベアやジェイテクトもそうですし、トヨタ自動車(7203)マツダ(7261)などの自動車株も同様です。

非常に興味深いのは、足元の為替レートは1ドル=100円近辺と円高傾向にあるにも関わらず、輸出関連株の株価が上昇していることです。昨年の夏以降これまでは、円高が進めばそれに比例するかのように輸出関連株の株価は下落を続けていました。それがここ1カ月の間は、円高であっても逆に輸出関連株の株価が上昇しているのです。

この原因は定かではありませんが、これら輸出関連株は今年7月上旬ごろまでの株価下落で、1ドル=100円程度の円高水準はすでに株価に織り込まれた可能性が高いです。もし「円高=株安」という従来の図式が崩れ、円高でも株価が上昇するようになれば、これは日本株にとって非常に大きな追い風になることは確かです。

「成長株」から「割安株」へのシフトが進むか

参議院選挙の前までの日本株は、とにかく「成長株」でなければ全く株価は上がらないという状況でした。いくらPERが低かろうが、増収増益が続く銘柄でなければ株価は下がる一方でした。

しかし、ここ1カ月の間で、この点についても変化が表れています。つまり、増収増益でなくとも、PERが10倍割れなど「割安」であれば、株価が上昇するようになっているのです。

例えば上記のジェイテクトの今期業績は、前期と比べて減収減益の予想です。そのため、株価は高値から60%も下がっていました。しかし、安値をつけた7月7日時点では、PERは10倍を下回っていたのです。つまり、7月7日ごろを境に、例え減収減益であったとしても、PERなどからみて割安であれば、それを好感して買われるようになっていったのです。

このことから、「成長株」がどんどん上値を追って上昇する相場は終わり、増収増益でなくとも「割安株」が評価される相場が到来している可能性が高まっているといえます。

成長株の高PERを否定するような動きも

参議院選挙以降下落を続けている高成長株ですが、決して業績に陰りがみえているわけではありません。先日の四半期決算でも好調な業績が続いているものばかりです。それにもかかわらず株価が下落した1つの理由が、「高PERの是正」にあるように思えます。

これまでは、成長株であれば多少の高PERも目をつむって買い上がる動きが続いていました。しかし最近は、いくら成長株であっても、PERが高すぎるものは敬遠される傾向にあるようです。20倍程度なら許容されるが、30倍以上なるとよほど高成長の銘柄でなければ株価が調整するケースが目立っています。

例えば寿スピリッツ(2222)は1カ月半で株価が高値から40%も下落しましたが、足元の下落でようやくPERが30倍近辺まで低下してきました。また、日本M&Aセンター(2127)は相変わらず好調な業績が続いているようですが、PERは40倍を超えています。そのためか、株価は好決算の発表後、むしろ下落が続いています。

日銀のETF買い入れ枠増額で恩恵を受ける銘柄とは

ところで、8月4日以降、日本銀行はETFの買い付け額を増額させています。8月の2日及び3日の買い付け額は347億円でしたが、4日及び10日の買い付け額は707億円と、これまでの2倍以上となっています。

日本銀行が買い付けるETFは、日経平均株価連動型のものとTOPIX連動型のものが中心と思われます。となると、日経平均株価採用銘柄には、日経平均株価連動型・TOPIX連動型の両方から投資資金が流入することとなります。

さらに、日本銀行の買い付け額倍増により、日経平均株価採用銘柄とそうでない銘柄との間で、資金流入額の格差がより一層拡大することになります。

こうした状況を踏まえると、日経平均株価の採用銘柄から投資対象の銘柄を選ぶのも、戦略の1つとして検討してみてよいのではないかと思います。ちなみに、冒頭で挙げた銘柄のうち、ミネベア(6479)ジェイテクト(6473)は日経平均株価の採用銘柄です。

今後の日本株の展望を考えてみる

今後の日本株への投資戦略を考えるに当たり、個別銘柄を以下の3つのカテゴリーで分類するのが良いのではないかと筆者は思っています。

  • 増収増益が続いている成長株(グロース株)
  • 増収増益ではないが、PER等からみた割安株(バリュー株)
  • それ以外の銘柄

7月10日の参議院選挙の前までは、上記のうち①の銘柄のみが上昇していました。しかし、7月10日以降は①の銘柄は下落し、②の銘柄が上昇しています。③は銘柄ごとにまちまちです。

もし、ここから②に引き続き③の銘柄が次々と上昇するようなことになれば、個人投資家が利益を上げやすい全面高相場になることが大いに期待できます。

実は、まだ銘柄数は多くありませんが、③の銘柄から株価が上昇トレンドに転換するものが少しずつ増えています。例えば資源価格下落とともに下落を続けていた商社株のうち、三菱商事(8058)はなんと年初来高値を更新するまでになっているのです。この流れがさらに他の銘柄に広がってくれば、非常に期待できる相場展開になります。

もちろん、ここ1カ月で株価が大きく下落した①の銘柄も、好業績が続いているわけですから、調整局面が終わればまた高値更新の動きになる可能性も当然あります。しかし、これらの銘柄は、数年間にわたり上昇を続けているものも少なくなく、ある程度長期間(1年程度)の調整を入れるタイミングがどこかで必要と思われます。

筆者は参議院選挙後の日本株の変化を重視し、②および③の銘柄で上昇トレンドにある銘柄を中心にポートフォリオを組んでいくつもりです。

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