激動の平成28年3月期決算発表もようやく終わりました。ここから次の四半期決算までは、決算発表によるサプライズもなく、突発的な急落などが少なくなるため投資しやすい環境が到来します。そこで今回は、決算発表後の銘柄選択や新規買いにあたり留意しておきたい点をお話ししたいと思います。

前年度とほぼ同じ利益水準だった今年度の決算

先週末をもって、3月決算企業の平成28年3月期本決算の発表が終わりました。ふたを開けてみれば、平成28年3月期の利益水準は平成27年3月期とほぼ同程度にとどまり、伸び悩みが鮮明となりました。この大きな要因として挙げられるのが、今年に入ってからの急速な円高です。

しかし、利益が伸び悩んだのは上場企業全体でみた話であって、個々の企業に目を向ければ、過去最高益や大幅増益を達成したものも数多くあります。その意味では、上場企業全体の利益が伸び悩んでいることを憂う必要はありません。

大事なのは「過去の結果」ではなく「将来どうなるのか」

ただ忘れてはならないのは、平成28年3月期はすでに「過去の話」だということです。株価は将来の業績を織り込んで動くものです。いくら平成28年3月期が好調であっても、平成29年3月期が伸び悩んだり、大幅な減益になってしまっては、株価の上昇も期待できなくなってしまいます。

そこで注目すべきは、平成29年3月期の業績予想です。例えば、平成29年3月期が増収増益の好業績予想であれば、それを好感して株価が大きく上昇することが期待されます。また、平成28年3月期の業績が振るわなくとも、平成29年3月期予想が好調であれば、見直し買いによる株価上昇ということになります。

逆に、いくら平成28年3月期の業績がよくとも、平成29年3月期の予想が大幅な減益ならば、株価が大きく下がってしまうことになりかねません。

決算発表直後の株価の動きは「イレギュラー」になりやすい

皆さんも、決算発表直後の株価が突如急騰したり、逆に急落するのを目の当たりにしたことでしょう。実は、業績予想等の数値をもとにプログラム売買をしている投資家や、それに追随する短期筋の参戦により、決算発表直後は思わぬ株価の動きをすることが少なくありません。

しかし、プログラム売買や短期筋の仕掛けは、業績予想の中身まで詳細に見たうえで実行されているわけではありません。あくまでも、増収増益予想とか減益予想という「表面的」な数値のみをもって株価が動いてしまっているだけです。

例えば、減益予想が一時的かつ前向きな理由によるものであったとしても、発表直後は「減益」という表面的な数字だけがとらえられ、株価が短期間に大きく下落してしまうことが少なくないのです。

業績予想の信頼性は高くない

もう1つ、企業が発表した業績予想の信頼度は高くないという点にも注意しなければなりません。

はっきり申し上げて、当期業績予想と同じ水準で実際の決算が着地することはほとんどありません。それほどまでに、業績予想とは難しいものなのです。

また、企業によって、いつも強気の予想をぶち上げておいて結局下降修正をするようなところもあれば、万年弱気の予想を出しておきながら、ふたを開けてみればしっかりと増収増益になる、というところもあります。

そのため、単に企業が発表する業績予想を鵜呑みにして銘柄選択を行い実際に投資を実行した結果、思わぬ損失を被る恐れが多々ある点には十分な注意が必要です。

業績予想が妥当かどうかはこれからの株価に現れてくる

実は、企業が発表する業績予想が妥当かどうかが株価に現れてくるのは、決算発表が終わった後のまさにこれからなのです。アナリストをはじめとしたプロ投資家が、各企業から出そろった決算資料等をもとにこれから分析をして、投資判断を行うためです。

アナリストは、企業が発表した業績予想の数値の妥当性を分析します。その結果、企業側が減益予想だったり、成長鈍化の予想を出していたとしても、その予想が保守的であると判定されれば、プロ投資家の買いが入ります。その結果、移動平均線を大きく割り込んだ株価が反転し、上昇トレンドに復帰し、さらなる上値を目指していくことになります。

以上の点をまとめると次のようになります。

  • 決算発表直後の株価の乱高下は業績予想の表面的な数字のみをもとに生じている
  • 業績予想の数値自体も信頼度が高くない(経営者の思惑も入りやすい)
  • 決算発表直後に株価が乱高下したその後の株価の動きこそが重要

なぜ決算発表後の新規買いが有利なのか?

筆者は、以前ブログ(「公認会計士足立武志ブログ」)にて、決算発表を控えている銘柄を新規買いすることはできるだけ避け、決算発表後の株価の動きを見たうえで投資するかどうかを判断した方が良い、と書きました。その理由には2つあります。

1つは、上で述べたように、決算発表直後は、業績予想の表面的な数字だけを根拠に短期筋が買い仕掛けないし売り仕掛けを行うため、株価がごく短期間に大きく乱高下してしまいます。しかしながらこの動きを事前に予想することができないために思わぬ損失を被ってしまう恐れがあるからです。

もう1つは、株価がここから上昇する可能性が高い銘柄を見つけやすくなるという点です。

仮に業績予想の数値が思わしくないため決算発表直後に大きく売られた銘柄であっても、決算発表後のプロ投資家による独自分析の結果、業績予想が保守的とか、減益が一時的かつ前向きな理由であり、株価が割安と判断されれば彼らの買いによって上昇トレンドに転じることになります。

さらに、プロ投資家は運用する資金が多額のため、必要な数量を一度に買うことはできず、時には何カ月にもわたり少しずつ買っていきます。

そのため、長期間にわたって需給の改善された状態が続き、株価の上昇トレンドが長期間続く可能性が高くなります。また、次の四半期決算まで株価を大きく動かすような重要な発表もあまりないことから、上昇トレンド転換初期に新規買いすれば、株価が大きく上昇することが大いに期待できるのです。

次回は、決算発表直後の株価の動きごとにケース分けをして、新規買いのタイミングや注意点をお話ししたいと思います。