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米国株高によるリスクオンと円安期待
香川 睦
3分でわかる!今日の投資戦略
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略を毎営業日レポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者と…

米国株高によるリスクオンと円安期待

2016/7/15
7月14日の日経平均は4日続伸となり、前日比154円高の16,385円で引けました。米国株が史上最高値を更新し、ドル円に底入れ感が出てきたことに加え、国内での政策期待の高まりが株価堅調の背景となっています。
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執筆:香川睦

7月14日の日経平均は4日続伸となり、前日比154円高の16,385円で引けました。米国株が史上最高値を更新し、ドル円に底入れ感が出てきたことに加え、国内での政策期待の高まりが株価堅調の背景となっています。ただ、週初よりの4日間で日経平均が約1,278円上昇してきたことで、短期的な過熱感が相場全体の上値を抑える動きもみられます。

15日の日本時間5時30分現在、為替は1ドル105.43円、CME日経平均先物(9月限)は16,540円となっています。

(1) 米国株高、ドル円反発、政策期待が日経平均上昇の要因

今週の日経平均の上昇は、8日に発表された雇用統計(6月分)を受けた米景況感の改善と米国株高、リスクオン(選好)回復を受けたドル円の反発(円安)、国内で高まってきた政策期待などが支えとなっています。NYダウ平均は今週、約1年1ヵ月ぶりに史上最高値を更新。為替相場では、6月24日に一時99円まで下落したドル円が約5円程度戻してきた効果がみてとれます(図表1)。また、先週末の参議院選挙で勝利した安倍政権が、政治基盤の安定をテコに打ち出すとみられる内需喚起策、28-29日に予定されている日銀・金融政策決定会合での追加緩和策への期待が強くなっています。日経平均は目先、100日移動平均線(16,414円)を安定的に上抜けられるか否かが注目されます。

図表1:NYダウ平均、ドル円、日経平均

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年7月13日)

(2)米国株が史上最高値を更新した背景

FRB(米連邦準備制度理事会)が13日に公表したベージュブック(地区連銀経済報告)は、5月半ば以降も米経済が緩慢なペースで拡大したことを確認しました。8日に発表された6月雇用統計で非農業部門雇用者増加数が市場予想を大きく上回ったことと合わせ、米景況感は概して底堅さを維持しています。一方、中国の経済状況やBREXIT(英国のEU離脱)問題を巡る先行き不透明感や大統領選挙動向を考慮すると、FRBは当面追加利上げに動きにくいと思われます。一般的に、こうした「低金利環境が維持されるなかでの景気見通し改善」は、株式市場にフレンドリーと言えます。なお、米大企業(S&P500指数構成銘柄)の四半期別業績見通し(市場予想平均)をみると、第2Q(4-6月期)の減益をボトム(底)にして、第3Q(7-9月期)以降は増益に転じていく見立てとなっています。これは、原油相場の回復や年後半の債券利回り上昇予想を受け、エネルギー業種や金融業種の業績改善が寄与するとみられているからです。暦年ベースでみると、今年(2016年)通年こそ微増益となりそうですが、来年(2017年)も再来年(2018年)も二桁増益が予想されています。「Forward Looking(将来変化を織り込む)」特性が強い株式市場が、「年後半から来年の業績改善を視野に入れた株高」を示現していると言えそうです。

図表2:米企業の業績見通し(市場予想平均)

(注)S&P500指数ベースの予想平均EPSにもとづく前年同期比増減益率
(ブルームバーグ集計平均)
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年7月13日)

(3)日米欧マネタリーベース総額の伸びが示すこと

なお、米国株式が堅調となっている背景として、日米欧のマネタリーベース総額が伸び続けている影響(効果)もあると考えられます。マネタリーベースとは、中央銀行が市中に供給する総資金量(中央銀行券の発行高+貨幣流通高+中銀の当座預金残高)を意味します。図表3でみる通り、日米欧の総資金供給量は拡大を続けています。6月末時点の同マネタリーベース総額は前年比約2割増の10兆ドル(約1000兆円)に迫っています。米国のマネタリーベースはFRBが2014年10月にQE(量的緩和策)を停止して以降横ばいとなっていますが、日本銀行とECB(欧州中央銀行)が量的緩和策を続けているからです。マネタリーベースのうち、設備投資に回る部分を除くほとんどが利子の付かない資金となっており、いわゆる「過剰流動性」(リスク資産への待機資金)とも位置付けられています。BREXIT問題がいったん落ち着いたなか、そうした流動性が米国株を中心に世界のリスク資産に染み出してきた可能性があります。なお、6月の日本のマネタリーベース残高は約3兆9,140億ドと米国の残高(約3兆8,250億ドル)を上回りました。一般的に、総供給量が多い通貨が少ない通貨と比較して貨幣価値を減じやすいとされ、これだけに注目すれば為替はドル高・円安となりやすいので注目したいと思います。

図表3:日米欧のマネタリーベース総額(ドル換算)推移

(注)マネタリーベース=中央銀行が市中に供給する総資金量
(中銀券発行高+貨幣流通高+中銀当座預金残高)
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年6月末時点/月次)

(4)「ニューソブリン」を意識した割安大型優良銘柄

以上のように、米景況感の改善、米国株高、ドル円の底入れ感、国内の政策期待(景気対策と追加緩和を巡る観測)が重なっています。この内外環境の改善が続くなら、日経平均が戻り売りをこなしながら、当面も上値余地を探る動きが期待できます。そうしたなか、米国市場で言われている「ニューソブリン」(債券型株式)を投資対象として注目したいと思います。これは、金利(利回り)の低下で投資魅力が薄れてきたソブリン債(国債や政府機関債)に代替する投資対象として、時価総額が大きく流動性が比較的高い大型優良銘柄群(=安全性が比較的高い銘柄群)のなかで配当利回り(=債券のクーポンに相当)が比較的高い銘柄が選好されやすい、と言うものです。参考までに、TOPIXコア30指数の構成銘柄(東証上場の時価総額上位30銘柄)のうち、配当利回りが3%を上回り、PBR(株価純資産倍率=株価÷1株当り純資産)が1倍未満にある銘柄を9銘柄スクリーニングすることができました。どの銘柄も、年初からの円高、原油相場下落、マイナス金利政策への懸念のどれかで売られてきた業界の最大手銘柄ばかりです。悪材料の影響(株価への織り込み)が一巡しつつある-と想定し、こうした割安大型優良銘柄を保有して配当収入を安定的に積み上げていくという投資対象を、「日本型ニューソブリン(債券型株式)」と呼び注目したいと思います。

図表4:TOPIXコア30の構成銘柄(配当利回り3%以上&PBR1倍未満)

東証
コード
銘柄(企業)名 株価(円) 年初来騰落率 今期予想
増減益率
来期予想
増減益率
予想PER
(今期/倍)
PBR
(倍)
配当
利回り(%)
8031 三井物産 1,252 -13.4% 黒字転換 3.9% 12.26 0.66 5.1%
8316 三井住友フィナンシャルグループ 3,113 -32.4% 9.1% -1.5% 6.03 0.48 4.8%
8411 みずほフィナンシャルグループ 160 -34.4% -12.4% -4.8% 6.76 0.50 4.7%
7201 日産自動車 1,011 -21.0% 6.4% 11.6% 7.60 0.89 4.2%
8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 498 -34.3% -0.7% 2.4% 7.31 0.44 3.6%
7267 本田技研工業 2,702 -30.9% 43.7% 13.2% 9.83 0.72 3.3%
8604 野村ホールディングス 399 -41.2% -8.5% 18.7% 11.95 0.53 3.3%
6902 デンソー 3,771 -35.2% -0.5% 7.6% 12.33 0.96 3.2%
8766 東京海上ホールディングス 3,701 -21.5% 7.6% 7.7% 10.20 0.80 3.0%

(注1)上記は、TOPIX30構成銘柄のうち、「配当利回り3%以上でPBRが1倍未満」の条件を満たした銘柄群です。
(注2)増減益率予想、予想PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回りはBloomberg集計による市場予想。
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年7月14日)

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