10年6月中間期にコア利益72%増、北京市政府の不動産投機抑制策などが逆風に

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
03377 遠洋地産(シノ・オーシャン・ランド・ホールディングス) 5.62 HKD
(08/19現在)
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遠洋地産の2010年6月中間決算は、売上高が前年同期比37%の伸びを示した。同期計上分の物件販売量が20%増加し、平均販売価格が18%上昇したことが背景。同期のコア純利益は財務コストと実効税率の低下を受け、同72%増の6億2100万元に達した。中間配当は1株当たり0.05HKドルの予定。上期の物件成約状況が思わしくない中、経営陣は前年同期比25%の増配に踏み切る方針を示し、自社キャッシュフローに対する自信をうかがわせた。一方、用地取得コストの急増(1平米当たり1682元→3159元)などが響き、同期の粗利益率は前年同期を3ポイント下回る25%。BOCIは主要事業基盤である北京市の不動産相場の調整見通しなどから、粗利益率の低調推移を予想し、向こう3年間にわたって35%以下の水準が続くと見ている。

中間期末の純負債比率は68%と、昨年末の14%から大きく上昇した。BOCIによれば、北京市大望京村の区画や上海市の2区画をはじめ、高額での用地取得に伴う資金負担の増大が響いたもよう。ただ、同社が先ごろ発行した永久劣後債はバランスシート上で資本計上されることから、BOCIは10年下期に負債比率の低下を予想している。一方、同社は上期に用地取得攻勢を強め、北京や青島での高値落札は大きな批判の的となった。BOCIは過度の高値での用地取得を理由に、10年通期の1株当たり予想NAV(純資産価値)を0.3HKドル減額修正している。

同社株16.85%を保有するコスコ・インターナショナル(00517)が現在、全面的な持ち株売却を計画している。コスコとしては1株当たり5.40HKドル以上の価格で手放す意向だが、BOCIは「現時点では5.40HKドル以上での一括売却は困難」との見方。ただ、この問題が遠洋地産の株価に及ぼす影響を指摘し、同社にとってはできるだけ早期の売却実施が望ましいとしている。

北京市政府は5月、不動産投機の抑制を目的に、3軒目以上となる不動産購入者や、同市で納税していない非居住者への住宅ローン供与を拒否するよう地元金融機関に通達した。北京市のこうした措置は他地域に比べて厳しく、BOCIは同市の住宅価格の大幅な回復には期待しにくいとの見方だ。ただ、物件取引状況に関しては、今後の新築物件供給の拡大に伴い再び上向くとみている。

北京市では5月以来、新築物件販売が大きく落ち込んでおり、遠洋地産はその影響をまともに受けたデベロッパーの代表格となった(不動産開発事業に占める北京市の比重は約5割)。BOCIは、◇他地域より厳しい北京市政府の投機抑制策、◇コスコ・インターナショナルによる株式売却計画、◇不動産市況を取り巻く不透明感――を理由に、同社適正株価の算出に当たって、セクター平均を上回る対NAVディスカウント率を設定。最新リポートの中で、同社株価の先行きに対する中立的な見方を継続している。