今の日本株は株価と業績との連動性が高まっています。そのためファンダメンタル分析を知っているのといないのとでは、投資成果に大きく差がつきます。そこで今回より、不定期連載にてファンダメンタル分析の初歩についてお話ししていきます。

ファンダメンタル分析の基本はどのカテゴリーを狙って投資するかを決めること

拙著「株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書」は、発売から5年以上たった今も増刷がされており、筆者にとっての代表作となりました。ご愛顧いただいている個人投資家の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

実は、この本を出す際は、「個人投資家に対して、ファンダメンタル分析の需要が本当にあるのだろうか」と思っていました。しかし、ふたを開けてみるとこれほどまでの売れ行きになっているということは、株式投資に真摯に向き合って、向上心を持って勉強されている個人投資家の方が多い表れと筆者もとても嬉しい思いです。

とはいえ、株式投資の未経験者・初心者にとっては、拙著を読むこともハードルが高かったりするようです。ファンダメンタル分析と一言でいっても、実はいくつかのアプローチがあります。それを理解しておかないと、間違った知識が身についてしまいかねません。

そこで今回のコラムでは、まず銘柄を4つのカテゴリーに分類してみることから始めてみようと思います。そのうえで、どのカテゴリーに属するものに投資するかを決めて行くとよいです。

その4つとは、「成長株」「割安株」「復活株」「材料株」です。もし、この4つのカテゴリーのいずれにも該当しない銘柄であれば、当面は投資対象から外してしまって問題ありません。

カテゴリー1・成長株~売上、利益ともに年々増加している銘柄

まず「成長株」からです。成長株は、簡単に言えば「売上・利益が年々増えている」銘柄のことをいいます。

株価は、長期的に見れば企業価値に応じて動きます。この企業価値とは、端的に言えば利益を獲得する力です。

毎年利益が増えているならば、利益を獲得する力も増えます。そうすれば株価も上昇するというわけです。

そして、利益の源泉は、やはり売上です。売上を増やさずに利益を増やすこともある程度は可能ですが、それには限界があります。

そのため、売上と利益が年々増えている銘柄は、「成長株」として、株価が上昇しやすくなります。

おそらく、個人投資家が株式投資をするうえで、この「成長株」が最も見つけやすく、大きな利益を得やすいのではないかと思います。

カテゴリー2・割安株~株価が企業価値と比べて低く放置されている銘柄

次に「割安株」です。これは、企業の業績や財務状態など(=企業価値)と株価とを比べ、株価が割安と判断される銘柄のことです。

株価が割安かどうかを判定するための株価指標として、代表的なものに「PER(ピーイーアール・株価収益率)」、「PBR(ピービーアール・株価純資産倍率)」、「配当利回り」があります。これらの株価指標からみて割安なものを見つけて投資するのです。

この割安株投資は、個人投資家に非常に人気があります。しかしその一方、思ったほどうまく行っていないケースがとても多いのも事実です。

なぜうまく行かないのか、それはPERなどの株価指標を使いこなすのにはかなりのコツが必要であり、それを理解しないまま銘柄選びを実行する個人投資家がほとんどだからです。

また、相場環境が良好なときは、多くの銘柄の株価が上昇してしまい、割安な銘柄がなくなってしまう、ということもあります。

使い勝手がよいようで、意外と成果を出すのが難しいのがこの「割安株」です。

カテゴリー3・復活株~赤字続きから黒字転換、さらに増益へと復活を遂げる銘柄

3つ目は「復活株」です。これは、赤字続きだった銘柄が、黒字に転換し、さらに利益を伸ばしていくような銘柄を指します。

経営者が変わったり、画期的な新製品・新技術を開発したりすると業績が様変わりすることがあります。もともと赤字続きでほとんど評価されていなかった会社が、いきなり優良な会社に変わってしまうわけですから、株価に与えるインパクトも相当なものがあります。

「復活株」に該当する銘柄は少ないですが、赤字から黒字に転換するくらいのタイミングで巡り合った場合、大きな利益をもたらしてくれることもあります。

その一方、「復活株」と思ったら黒字転換が一時的で、また赤字に逆戻り、といったケースもあります。将来の業績の見通しをしっかり読めるかどうかがポイントとなります。

カテゴリー4・材料株~業績に関係なく「思惑」で大きく上昇する銘柄

4つ目は「材料株」です。「材料株」とは、特別な新技術・新製品の開発など、将来的に業績に大きくプラスに働くかもしれない材料を持っている銘柄のことを言います。

3つ目の「復活株」と似ているかもしれませんが、「復活株」の場合は実際に業績が急回復し、それを好感して株価が上昇するのに対し、「材料株」は業績へのインパクトが全くない状態から、期待感だけで株価が大きく上昇する点が大きく異なります。

「材料株」で注意しなければならないのは、資金の逃げ足が非常に早いという点です。業績の裏付けがそもそもない、もしくは希薄ですから、株式市場をとりまく環境が悪化して下げ相場になると、真っ先に換金売りの対象となります。

また、デイトレーダーなど短期志向の投資家が大勢集まりますから、株価がとても乱高下しやすくなります。株価が短期間に大きく変動する銘柄は、利益を得やすそうにみえて、実は利益を上げにくいのです。

ある程度経験値のある個人投資家でなければ、あまり積極的にかかわらない方が無難だと思います。

今日は4つのカテゴリーの特徴をお伝えしました。それぞれのカテゴリーの特徴や、実際に銘柄を選ぶ際の注意点などは、今後のコラムにて順次お伝えしていきます。