手持ち資金の約3倍の株取引ができる信用取引。典型的な失敗パターンは?

信用取引の魅力の1つが、最大で手持ち資金の約3倍の株売買取引ができることです。もちろんリスクも高くなりますが、うまく使いこなせば資金効率を大きく高めることができ、短期間に資産を何倍にも増やすことが可能です。中長期的な上昇相場なら、前々回(第46回)のコラムのように信用取引を駆使して100万円を1,000万円に増やすのも決して夢物語ではありません。
一方で、信用取引で失敗してしまう個人投資家も少なくありません。信用取引での典型的な失敗パターンは、株価の天井付近で買い、その後株価が反落しても損切りせずに持ち続け、最終的に6カ月後の決済期日が来ても含み損が解消せず泣く泣く強制決済させられる、というものです。取引枠の限度いっぱいに信用取引で買っていたり、株価の下落率が大きい場合は、6カ月後の決済期日を待たずに追証(追加証拠金)が発生し、それを払えず強制決済、というケースもよくあります。

したがって、信用取引の初心者の方は、上記の失敗パターンにはまらないような投資行動をすればよいのです。こう考えると、信用取引で重要なことは何かが、自ずとみえてきます。
今回以降のコラムでは、筆者の経験も踏まえ、信用取引の初心者の方が失敗しないためにこれだけはどうしても伝えておきたい、という点をご紹介します。

信用取引ではファンダメンタルよりテクニカルを重視

信用取引の期間は原則6カ月です。まずはこの点をよく理解してください。
株価は超長期的には業績に連動して動くものといわれています。しかし、2~3年単位でみると、業績とは関係なく、需給を要因として株価が動くこともあります(例えば銀行による持ち合い解消売り)。それよりさらに短い6カ月ともなれば、株価が先物やオプションのプレイヤーなどに振り回され、業績とは全くかけ離れた株価の動きになることもしばしばです。そのため、6カ月程度の短期間では、ファンダメンタルよりも需給を優先して投資判断をする必要があります。
需給の動きは必ず株価に表れます。したがって、株価チャートをはじめとしたテクニカル分析が信用取引では何よりも重要となってくるのです。
たとえファンダメンタルを重視して買った優良銘柄でも、買ってから6カ月程度では株価が回復しないどころかひたすら下落を続けることもあります。現物株であればそのまま放置して5年、10年とほったらかしにできるのですが、返済期日のある信用取引ではそうはいきません。
「業績がよいのだからいずれ株価も上昇するはず」という考えは期日に限度がある信用取引では通用しないことを知っておいてください。業績がわるいのだからいずれ株価も下降するはず」も同様です。

一般信用取引を含み損の先延ばしのために使うのはお勧めできない

なお、6カ月の返済期日があるのは「制度信用取引」です。一般的に「信用取引」といえばこちらを指します。
実は、信用取引には「制度信用取引」の他に「一般信用取引」というものもあります。

楽天証券では、一般信用取引の期日が最大3年間に設定されています。したがって、一般信用取引を使えば、含み損を抱えたまま3年間持ち続けることもできます。
しかし、持ち続けている間は金利が発生しますし、持ち続けた結果含み損が膨らみ、追証も払えず結局は強制決済させられることもあります。もし大局的な下降トレンドの最中であれば、3年持ち続けても株価が下げ止まらない可能性もあるのです。6カ月の期日がある制度信用取引で期日到来により強制決済されたほうがよっぽど損失が少なかった、ということも実際に起こります。
損切りを何よりも重視する筆者としてはこの無期限信用取引を使って含み損を抱えた銘柄を持ち続けるという手法はお勧めできません。それよりも、損切りを早めに実行して次回以降の取引で挽回すべきです。もちろん、含み益があり、それをさらに伸ばすために無期限信用取引で買った銘柄を持ち続ける、というのは問題ありません。

時間を味方にできない信用取引は順張りが鉄則

比較的短期間の取引となる信用取引で重要な点の1つが、「逆張りは禁物」という点です。
逆張りとは、株価が下がっている途中に買いを入れることです。「さすがにここまで下がればさらに下がってもたかが知れている。このあたりで買って上昇するまで放っておこう」というものです。
しかし、信用取引では逆張りは決して実行してはいけません。なぜなら、買った後のさらなる株価下落で含み損が膨らみ追証や強制決済の恐れがあるからです。
また、追証が発生するほどの下落はないにしても、決済期日まで待っても買値より株価が上昇しなければ、強制決済により損失が実現することになります。
買った後、株価が上昇するまで気長に待つことができないのが信用取引です。したがって、信用取引では上昇トレンドにある銘柄を買う「順張り」が鉄則なのです。そして、遅くともトレンドが下降局面になったら返済して次のトレンド上昇局面を待つ、基本的にはこの繰り返しです。トレンドの判断にはやはり株価チャートや移動平均線をはじめとしたテクニカル分析が有効です。
なお、期日に制限のある信用取引はおのずと投資期間が短くなるので、中長期トレンドよりも短期トレンドを追って順張りするようにしましょう。中長期トレンドを追っていると、短期トレンドの天井で買ってしまうこともあり得ます。その場合、6カ月程度では株価が回復しないことも多いためです。