筆者は本コラムや書籍をはじめ、「損切り」の重要性を幾度となくご説明してきました。先日も当コラムの読者らしき方から具体的な損切りの手法について質問メールが届きました。確かに本コラムにて詳しく説明したことはなかったと思いますので、今回はその説明をします。

株価チャートを用いた損切りの手法は

損切りの手法は大きく分けると「株価や株価チャートに着目するもの」と「ファンダメンタルの変化に着目するもの」の2つがあります。

株価や株価チャートに着目するものは、さらに3つに分類できます。

直近安値を基準とした損切り

株価チャートから直近安値を把握し、そこを株価が割り込んだら損切りする、という方法です。直近安値を割り込むということは、株価の下降トレンドが続いていることを示すためです。主に底値買いや押し目買いをしたときに用います。筆者が最も多く用いる手法です。

買値からの下落率を基準とした損切り

上昇トレンドの途中で買ったときなど、買値と直近安値との間に距離がある場合は(1)の方法をとると実減損が大きくなってしまいます。したがって、買値からの下落率が例えば10%に達したら損切りとします。パーセンテージは個々の判断で決めればよいですが、小さめに設定すると損切りが頻発してしまい、逆に大きめに設定すると損切り時の実現損が膨らんでしまいます。したがって、10%程度が丁度良いと筆者は考えています。

移動平均線と株価の位置関係からみた損切り

上昇トレンドであれば株価は移動平均線の上方にあるのが普通です。したがって、それまで移動平均線の上方にあった株価が移動平均線を割り込んだら下降トレンド転換の可能性が高まるため損切りとする方法です。対象とする移動平均線は、例えば日足なら25日移動平均線、週足なら13週移動平均線とします。

ファンダメンタルの変化に着目した損切りとは

ファンダメンタルの変化に着目する損切りとは、一言で言えば、「買ったときのファンダメンタルの前提条件が崩れたことを確認できた時点で損切り」することです。
ファンダメンタルに基づいて買い銘柄を選ぶときには、「増収増益を続けている」とか「PERやPBRの面からみて割安」といったような、買いを決断するための前提条件があることが通常です。
したがって、今期も増収増益の予想だったのに実際は大幅な減収減益になることが明らかになったり、業績下方修正や大赤字によりPER、PBRでみた割安感が消滅してしまったような場合、損切りを実行することになります。

ファンダメンタルによる損切りは実現損が膨らむことも

しかし、ファンダメンタルによる損切りには損失が大きくなってしまうリスクがあることに注意が必要です。株価や株価チャートに着目した損切りであれば、最大でも実現損は10%前後に収まります。しかし、ファンダメンタルの変化(悪化)を確認できた段階で損切りを行うと、実減損が30%、50%と膨らんでしまうこともあります。なぜなら、ファンダメンタルの変化を個人投資家が確認できるより前に、他の投資家がそれを察知した結果すでに株価が大きく下落してしまっていることがよくあるからです。

損切りは株価チャート優先が原則

ファンダメンタルによる損切りでは、実現損が30%、50%になってしまうとなれば、実際に損切りすることに二の足を踏んでしまうことにもなりかねません。実減損が大きくなればなるほど、損切りへの抵抗感は増していくものです。
このため、筆者はファンダメンタルを根拠に買った銘柄であっても、損切りは株価や株価チャートに着目した方法とすることをお勧めします。もし、株価や株価チャートに着目した損切りをせずにファンダメンタルに基づく損切りを行うのなら、ファンダメンタルが今後も良好である可能性が高い銘柄選びと、それでも損切りになったときのことを考えて投資銘柄を分散する(20~30銘柄程度は必要と筆者は考えます)ことが重要です。

なお、今回ご紹介した損切りの手法は、損切りのみならず利食い売りのタイミングとして用いることもできます。
バブル崩壊により右肩上がりの上昇が終焉してしまった感のある日本株。バイ・アンド・ホールドではなく適切な買い時・売り時の見極めが私たち個人投資家にも求められています。そんな中、損切りの巧拙が投資成果を大きく左右するのは間違いありません。

楽天証券では、損切りの注文方法として「逆指値注文」があります。
「逆指値注文」とは「価格が上昇し、指定した値段以上になれば買い」、「価格が下落し、指定した値段以下になれば売り」とする注文方法です。通常の指値注文で、それぞれ、「指定した価格以下で買い」、または、「指定した価格以上で売り」とすることと逆の注文方法であることから「逆指値」と呼ばれます。