2010年1月4日からスタートした東証新システムとは

明けましておめでとうございます。2010年もよろしくお願いいたします。
日本株は1月4日から新年の取引が始まりましたが、東京証券取引所(東証)では、1月4日より新システム「arrowhead(アローヘッド)」による取引がスタートしています。

このアローヘッドの最大の特徴は、注文約定処理のスピードが従来より格段に速くなったということです。従来は約定処理に約3秒かかっていたものが、アローヘッドではたった0.005秒に短縮されています。その差、何と600倍です。
そのため、アローヘッド導入後は、株価が変動する回数も格段に増加することが見込まれます。

アローヘッド導入の背景と個人投資家への影響は

アローヘッドが導入された背景には、海外の証券取引所との間の投資家獲得競争があります。実は、海外の主要な証券取引所では、すでに注文約定処理時間がアローヘッドと同程度にまで短くなっており、東証はやっと世界標準に追いついたという格好です。
ヘッジファンドや機関投資家などはアルゴリズム取引(コンピュータプログラムに基づく自動発注取引)をはじめとした高速・自動売買の比重を高めています。彼らの間ではすでに1000分の1秒の世界で熾烈な運用競争が繰り広げられています。
しかし、従来の東証のシステムは約定処理に3秒かかっていたわけですから、彼らからすると「遅すぎて使えない」となっていたわけです。
アローヘッド導入により、これまで東証での取引を見送ってきたヘッジファンドや機関投資家の参入も大いに見込まれます。

一方、アローヘッド導入により、最も影響を受けるのは板情報を見ながら1円のサヤを抜くような(いわゆる「1カイ、2ヤリ」)手法をとるデイトレーダーや証券会社のディーラーです。アローヘッドでは、注文約定処理時間が飛躍的に短縮されたため、板情報を見ながら注文を出していたのでは遅すぎるのです。
今後は、1分、2分で売買を繰り返すような超短期のトレーディングは事実上不可能になるでしょう。しかし、デイトレーダー以外の個人投資家のように、テクニカル分析やファンダメンタル分析に基づき売買する分には、アローヘッド導入による問題は特段生じないはずです。

成行注文には特に注意

アローヘッド導入により最も注意しなければならないのは「成行注文」についてです。
今までも、取引時間中の成行注文は、想定外の価格で注文が成立してしまう可能性がありましたが、アローヘッドの導入により、その可能性が格段に高まっています。
例えば、板情報をみて今の株価が100円だったとしても、その0.5秒後にはすでに105円になっていたり、95円になっていたりする可能性も十分にあるのです。
したがって、取引時間中の成行注文は特に慎重に行うようにしてください。現在の株価が100円の銘柄を現在の株価近辺で今すぐに買いたい、という場合でも、これ以上高い株価なら買いたくない、という価格(例えば103円)での指値注文を出すなどといった工夫が必要です。
流動性の低い銘柄ほど成行注文で想定外の価格での注文成立のリスクが高まりますので、十分に注意しましょう。

その他1月4日からの大きな変更点は?

アローヘッド導入に合わせて、次のような点も変更されていますので注意してください。

(1)呼値の刻み幅の変更

例えば株価が3,000円~5,000円の銘柄は、従来は3,000円・3,010円・3,020円……といったように10円刻みで株価が形成されていましたが、これが1月4日以降は3,000円・3,005円・3,010円……と5円刻みに変更されています。
これ以外にも、株価2,000円~3,000円の銘柄は刻み幅が5円から1円に、株価300,000円~500,000円の銘柄の刻み幅は1,000円から500円に変更となっています。

(2)制限値幅の変更

制限値幅、いわゆるストップ高・ストップ安となる株価も大きく変更されています。
例えば株価が1,200円の銘柄の制限値幅は従来200円でしたので、1日に株価が変動する範囲は1,000円~1,400円でした。これが1月4日以降は制限値幅が300円となり、株価変動の範囲が900円~1,500円に広がっています。

これ以外も、変更や新設された制度がいくつかありますので、詳しくは東京証券取引所のホームページをご覧下さい。新システムの約定処理のスピードが実感できるコーナーもあります。