主力の輸出関連株で高配当利回り銘柄に注目

 米FOMCが0.5%の大幅利下げを実施したにもかかわらず、為替市場では円高進行が一服する状況となっています。当面は今後の日米金融政策のコンセンサスが変化する可能性も低く、とりわけ、輸出関連株には買い安心感が強まるとみられます。

 円高進行への警戒感を映して、8月初めの3営業日で日経平均は19.5%もの急落となっており、依然としてその後の戻りも限定的な輸出関連株も多いとみられ、見直し余地も大きいと考えます。

 一般的にグロース銘柄と位置付けられる輸出関連株は、相対的に配当利回り水準は限定的なものが多いとみられます。そうした中、時価総額1,000億円以上の主力株の中から5%以上の配当利回りがあるものをピックアップしています。輸出関連株としては、海外売上が5割以上あるとみられるものを選定しています。株価が直近安値を付けた8月5日からの上昇率も併記しました。

(表)円安メリットの高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
(%)
9月20日
終値
(円)
時価総額
(億円)
海外比率
(%)
騰落率
(%)
7201 日産自動車 6.16 405.9 17,131 85 7.4
5444 大和工業 5.54 7,216.0 4,690 50 15.8
167A リョーサン菱洋
ホールディングス
5.33 2,625.0 1,569 50 14.5
5105 TOYO TIRE 5.15 2,037.5 3,140 78 8.3
6305 日立建機 5.00 3,500.0 7,529 84 18.7
注:騰落率は8月5日終値比
注:海外比率は東洋経済より

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが5.0%以上(9月20日現在)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 海外売上比率が50%以上とみられる銘柄

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 日産自動車(7201・東証プライム)

 国内生産台数第2位を争う自動車メーカーです。フランスのルノー、約34%を出資し筆頭株主となっている三菱自動車と3社連合体制を敷いています。また、ホンダとはEVやソフトウエアに関連する領域での協業に向け包括提携を結んでいます。

 中国では、東風汽車と合弁で事業を展開しています。軽のEVである「日産サクラ」は2022年度、2023年度と、2年連続で国内EV販売台数トップとなっています。また、プラグインハイブリッド(PHV)車の自社開発も検討、2020年代後半の販売開始を目標としているようです。

 2025年3月期第1四半期営業利益は9億円で前年同期比99.2%減となっています。北米を中心に自動車事業の収益が大きく悪化しています。北米生産や販売の減少、インセンティブの上昇、モデル切り替えの失敗などが背景とみられます。

 2025年3月期通期営業利益は従来予想の6,000億円から5,000億円、前期比12.1%減に下方修正しています。北米を中心に販売台数計画を下方修正した一方、販売費用などは上振れるようです。下半期には複数の北米での新車投入効果を見込んでいますが、通期営業利益の市場コンセンサスは4,000億円を下回る水準となっているようです。

 なお、年間配当金計画は前期比5円増の25円を据え置いています。

 9月20日時点において、配当利回り6.16%はプライム上場企業の中で最高水準とみられます。株式市場においては、業績下振れ、それに伴う減配が強く織り込まれている印象があり、仮に、第2四半期決算発表において過度な業績下振れ懸念が払しょくされてくれば、見直し余地は非常に広がっていく可能性があるでしょう。

 また、国内自動車企業の中では、EVで優位に立っているとみられるため、米大統領選でハリス氏が勝利する状況となれば、今後のEV市場拡大期待が再燃するため、ポジティブに捉えられていくでしょう。なお、1円/ドルの変動は年間で100億円程度の営業利益増減要因と試算されます。

2 大和工業(5444・東証プライム)

 電炉メーカーの大手で、ビルや工場の建設に用いられるH形鋼が7割近くを占める主力製品です。電炉メーカーの中でもいち早く海外に進出しており、現在では、米国、ASEAN(タイ、ベトナム、インドネシア)、中東(バーレーン、サウジアラビア)、韓国に拠点を持っています。

 経常利益の75%が海外で占められており、とりわけ、米ニューコアとの合弁会社ニューコアヤマトスチールの持分法利益が高水準となっています。自己資本比率は85%で無借金経営、財務安定性は高い状況です。2024年5月には、インドネシア鉄鋼メーカーの形鋼事業を新規に買収しました。

 2025年3月期第1四半期経常利益は246億円で前年同期比2.8%減となっています。世界的な鋼材需要や市況の軟化傾向を映して、売上高が大きく減少しました。安価な中国材との競争激化もコストアップ要因につながりました。ただ、持分法投資利益などは順調に拡大し、経常減益幅はほぼ横ばいにとどまっています。

 2025年3月期通期では810億円で前期比18.4%減の見通しです。従来計画の770億円からは上方修正、インドネシア事業の順調スタート、円安効果などが背景です。なお、年間配当金は前期比横ばいの400円を計画しています。

 2023年4月に、配当性向をこれまでの30%メドから40%メドに引き上げています。豊富なキャッシュ水準からは一段の株主還元拡大に対する市場の期待も高く、第1四半期並みの業績推移が続けば、増配の可能性も残ると考えられます。

 また、同社に関しては、米大統領選でトランプ氏が勝利した場合、保護主義政策の強まりがプラスに影響しやすい銘柄ということができます。最大の収益源は米国の合弁会社であり、米インフラ投資の拡大による恩恵享受が期待されるほか、米国企業第一主義政策もストレートに享受しやすいと考えられます。