企業利益は堅調、株価大暴落は起こりにくく、現状維持か?

 基本観として、株価は最終的には企業利益が反映されるという前提で考えると、経済状態が決して良くなくても、企業利益さえ増えれば株は上昇するということになります。

 言い方を変えれば、国の借金が増えて、インフレの中で所得は十分に上がらず、国と国民がどんなに苦しい状況にあったとしても、企業が利益を増やせば株は上がります。私は現状、このような状況になっていると考えています。

 ざっくりとですが、日本株は円安によって企業利益がかさ上げされた結果株高に、米国株においては減益に転じて苦境に陥っている企業も多い中で、一部の超巨大企業が苦しい企業のマイナスを補って余りのある利益を上げているため、株高になっていると考えています。

 そして、今後、過去と同じように株式が大きく下落していくのか否かですが、今回は過去と状況が異なっているものがあります。それは、製造業の置かれている状況です。

 製造業の景気を示す先行指標といわれているのが、工作機械の受注動向ですが、その推移は次のようになっています。

(グラフ3)工作機械受注額の推移

*赤矢印は米国就業者数が前年比でマイナスに転じた時期
出所:内閣府「機械受注統計調査報告」よりマネーブレインが作成

 このグラフは日本の内閣府が出しているものですが、工作機械は世界中から受注しているので、この受注動向から世界の製造業の動向を類推しても遜色ないと私は考えています。

 グラフをみると、2008年3月時点の機械受注額は高水準を保っている中、つまり、製造業が好調な状態にある中で米国就業者数のマイナス転換が出ましたが、今回の2024年8月は、受注額は減り続けた後、ようやく底入れをしてきたかという段階で出た形となっています。

 言ってみれば、2008年当時の製造業は良い状態が続いていたという状況だったので、良い状態から悪い状態になるという落差の大きさに加えて、欧米を中心とした金融危機も相まって株式は大暴落したといえます。

 ちなみに、2001年6月においては、工作機械受注のデータがないため類推になりますが、関連する企業の売上高・受注額の動向からすると、良い状態から悪い状態になっていく中でマイナス転換が出たとみています。

 しかし、今回においては、製造業はこれから悪くなるのではなく、もうすでに悪い状態がずっと続いているという状況で、場合によっては底入れもあり得るかという状況にあります。

 また、リーマン・ショックのときのような金融危機が起こりそうかというと、日米欧の巨大金融機関において、現時点でその気配はないと考えています。

 このため、今後の株価動向については、下落するにしてもリーマン・ショックやITバブル崩壊ほどの大暴落にはなりにくい、場合によっては、製造業の底入れや、国と国民は苦しくても、企業の利益が増え続けることによって、株価が保たれることもあり得るのではないかと考えています。

 いずれにしても、株価には最終的に企業利益が反映されるものであり、過去に株式が大幅に下落した局面には、企業業績の大幅な悪化が伴っています。

 では現時点でどうかというと、独自分析上、企業業績は伸び続けていて、悪化の兆候はまだ出てきていない状況にあります。

 これまでも、いつ悪化しても不思議はない状況の中で企業業績は上昇を続けていて、今後においても伸び続けていく可能性も捨てきれないので、悪化するだろうという予想ではなく、悪化の兆候が実際に出てくるか否かについて、引き続き着目していきたいと考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。