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著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
次の節目は2029年?中国「三中全会」で見えた8つのポイント

7月15~18日に行われた三中全会が閉幕。公式文書が発表

 本連載でも事前に見通すという観点から度々扱ってきた中国の第20期「三中全会」が7月18日、4日間の日程を経て閉幕しました。

 閉幕から数日後、『さらなる改革の全面的深化、中国式現代化の推進に関する中共中央の決定』と題された公式文書が正式に発表されました。2万字以上に及ぶ文書ですが、それを丁寧に読み込んでいくと、中国が今後どこへ、どのように向かっていくのかという一端がある程度見えてくると思います。

 本稿では以下、中国経済の今後を占う上で私が重要だと考える8つのポイントを解説していきたいと思います。

ポスト三中全会:中国経済の今後を占う上で重要な8つのポイント

ポイント1:「中国式現代化」で中国はより「中国的」になる

 中国共産党指導部は、今回の三中全会を2013年12月に行われた三中全会と比較した上で、2024年度のそれは前回の延長線にあり、それをさらに推し進めるものという具合に位置づけています。第18期の公式文書は『改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定』と題され、比べると一目瞭然ですが、今回新たに加わったのが「中国式現代化」というもの。

 党指導部は、人口の多さ、共同富裕(みんなで一緒に豊かになる)の必要性、社会主義制度といった中国独自の制度的、国情的特徴から、中国が進むべきは、他国、特に西側民主主義・資本主義国が実践してきた現代化ではなく、「中国式現代化」なのだというスタンスを権威付け、国策の次元にまで昇華させて現在に至ります。

 その意味で、今後、中国の戦略や政策、市場や社会へのスタンスは従来以上に(それがいいか悪いか、正しいかどうかは別として)「中国的」になる、言い換えれば、グローバルスタンダードよりもチャイナスタンダードに傾倒するようになっていくという前提で中国情勢を眺める必要があるでしょう。

ポイント2:「市場」の後退は不安要素

 2013年の第18期三中全会は、「市場」という観点から注目を集めました。公式文書が次のように提起しました。

「経済体制改革は改革を全面的に深化させていくうえでの重点であり、核心的な問題は、政府と市場の関係をしっかりと処理することである。資源配分の過程で市場が決定的な役割を担い、政府がより良い役割を果たすようにする」

 市場の役割に関して、それまでは「基礎的」とうたっていたのを「決定的」に昇格させて意義は大きかったといえます。一方、今回の三中全会ではこの文言がなくなり、代わりに次のような提起がなされました。

「市場メカニズムの役割をより良く発揮すること」
「資源配分の効率を最適化し、効率を最大化すること」
「市場の秩序をより良く守り、市場の欠陥を埋めること」

 10年前と比べて、「市場」が後退しているのは明らかであり、そのもう一つの根拠として、三中全会の「決定」文書を読み比べ、「市場」というワードがどれくらい出てくるかを数えてみると、2013年が81回、2024年が55回ということで、明白に減少しています。

 これらを受けて、中国政府が市場を無視した経済政策を取るとは言えませんが、中国経済が市場原理をどれだけ重視、尊重するかという点においては不安が残る結果となりました。

ポイント3:「国家安全」が「経済活動」の前提になる局面は続く

 さらに、「安全」と「経済」というワードを比較してみると、前者に関して、2013年が24回、2024年が41回、後者に関して、2013年が74回、2024年が59回ということで、「安全」が増え、「経済」が減っているという変化の推移が見て取れます。

 この統計は一つの根拠に過ぎませんが、近年における習近平(シー・ジンピン)政権の政策傾向を振り返ってみると、国家安全が経済活動をしのぐ、後者が前者の論理で展開される局面が目立ちます。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込めるための「ゼロコロナ」政策、外国人を含めて、スパイ行為を取り締まるための「反スパイ法」などはその典型例といえるでしょう。