円高株安時に慌てないための投資知識2:心理的に損失の方が大きく感じることを知る
投資の行動心理学の一つに「損失回避」というものがあります。投資をしていると誰しも経験すると思いますが、利益と損失では、同じ金額でも損失のほうが大きく感じるということです。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱している「プロスペクト理論」によると、例えば100万円の利益の喜びと、100万円の損失の場合、同じ金額であっても悲しみは2倍程度になるといわれています。
損に対して極端に恐れたり、悲しんだりすることで投資判断を誤ってしまう人が多くいます。つまり本人の許容できる範囲のリスク(投資資産の価格変動)を超えてしまっている状態です。その多くはリスクの取り過ぎであったり、リスクに対して投資金額が大きすぎたりするものです。
投資して利益がでるかもしれないが損もするかもしれないと言われたとき、きちんとリスクとリターンを理解できている人は、自分にとってその投資は適切かどうかを考えた上で判断をすることができます。
しかし、理解できていない人はどうしていいか分からず、単に分からないから投資をしないか、自分で判断せずに相手に任せてしまうということになっているケースが散見されます。
損失についてどの程度許容できるかは人それぞれですが、許容の枠を超えてしまうと過大な精神的負担により投資自体から目を背けたり、諦めて損失を確定しやすくなったりします。そのためにも損失が起きた際に負担とならない程度のリスクに収めることや投資金額を無理のない範囲で投資することが重要なのです。
円高株安時に慌てないための投資知識3:投資は中長期的な目線で考えることを知る
投資を始めると、これまであまり気にしてこなかった相場に触れることでささいなニュースや日々の株価や為替の値動きに敏感になったり、人によっては翻弄(ほんろう)されたりすることもあります。しかし、投資で日々の変動に対応して売買をすることはおすすめできません。
いわゆるデイトレードやスイングトレードで大きな利益を上げている人がいることは確かですが、それだけ投資に時間や労力をかけているならともかく、ほとんどの投資家はそのような投資をする必要はないはずです。
投資をやり始めると最初は長期投資を考えながらも、相場の動きや投資資産の変化が大きければ大きいほど相場が気になり始めてしまいます。私の経験上でも株式投資を始めてみると日中の株式相場が気になって仕事に手がつかなくなり、投資をやめたという人に何度も会ったことがあります。
5年10年という中長期的な目線で考えるためには、初めから遠すぎる先を考えるのではなく3カ月後、1年後といったもう少し短い期間で相場の変化を見ていきながら結果的に5年10年というスパンで投資するイメージを持ちましょう。ライフプランと同じであまりにも先すぎることを考えても、現実味がないので長続きはしないものです。
投資判断を適切に行うには精神的な安定が必要
慌てないためには「投資知識」を増やして「投資経験」を積むこと
ここ何年も円安や株高が続いていることで、多くの人が投資によって資産を増やしています。それは良いことなのですが、その一方で大きな下落を経験したことがないままの人も多くなってきています。それは下落相場でどのような心構えでいればいいのか、どう投資判断をしたらいいのかを経験したことがない人が増えていることでもあります。
そうした人ほど相場の変化に弱く、つい慌てて投資をやめてしまったり、高値で売却できなかったことを後悔したりします。ただ何年か相場を経験していると毎年どころか毎月、毎週いろんな理由で相場が動いていることが分かってきます。
大切なことは投資を継続して相場に居続けることです。そうして少しずつでもいいので、投資知識を蓄えていけば、投資経験を生かして自分にあった投資スタイルを確立できるようになっていくでしょう。
■著者・西崎努氏の著書『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』(アスコム刊)、『老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門』(アスコム刊)が大好評発売中です!
【要チェック】
楽天証券「トウシルの公式YouTubeチャンネル」では、本連載「やってはいけない資産形成」のコラムを動画で視聴できます。
また、リーファス社の公式YouTubeチャンネル『ニーサ教授のお金と投資の実践講座』では、同コラムの他にも動画でお金と投資の知識を学ぶことができます。