「売れている」「新商品」「少額」など危険なキーワードに要注意!
まず、N氏は資産運用において、投資の目的や運用の将来的なイメージについて、歴代の担当者に聞かれたことも話をしたこともありませんでした。資産運用は将来に向けて連続した時間の上で行われるので、資産運用において目指すべきゴールや姿、期待するものを具体的にイメージしておくことが非常に重要です。それに向かって資産運用の内容やプランを考える必要があるからです。
ゴールや目的の共有がない場合、N氏のように商品セールスの積み重ねに流されがちです。すると保有する意味もあいまいなまま、「儲かりそうだ」という理由で安易に購入して失敗してしまうことがあります。また、どのような商品や提案が必要か、担当者との間に事前のコンセンサスがなければ、いわゆる「提案しやすい、売りやすい、またはノルマを消化しないといけない商品」を勧められる傾向があります。N氏の保有商品が、個別の海外株から公募の仕組債や年金保険まで散らかってしまい、ポートフォリオが意識されていない状態に陥ったのは、勧めやすい商品ばかりの統一性がないラインアップになってしまった典型と言えます。
「売れています」といったワードも要注意です。人の心理としては多くの方が投資をして保有していたり、含み益が出たりしていると安心感を持ちやすく、担当者も勧めやすくなります。
「新商品」というワードにも注意が必要です。保有商品の売却とセットで提案されたり、提案の金額まで具体的に提示されたりする場合はさらに注意が必要です。世界の金融市場は以前よりも様々な資産ごとの相関性が高まって同じような動きをする傾向が強くなってきているため、高値と思って売却しても新しく購入するものも同じく高値になっているかもしれないのです。また、例えば「この商品を売却した資金でこの新商品を買いましょう」といったトークは、担当者の強い思惑で勧められていることも多いのです。
他にも、「少額から投資できる」というワードも要注意です。失敗に陥りやすい傾向として、だんだん提案金額が小さくなり、結果的に保有する商品数が増加する、というものがあります。特に、「少額から投資できますので」というセリフで公募仕組債や変額年金保険を勧められたら要注意です。提案金額が小さくなってくるのは、ずばり担当者がセールスに苦しんでいるサインなのです。
さらに、日本の株式に比べてどうしても情報が少ない海外株式、特に馴染みのない企業や公募株式の提案が増えてくる場合も注意が必要です。株式ですからもちろん値上がりすることもありますが、外国株式は手数料収益が厚く、勧めやすいお客様に集中して繰り返し提案するといった傾向があるからです。
N氏は自分の投資結果を振り返り、「担当者は定期的に交代するので、なかなか長期的な展望でコミュニケーションすることができなかった」と残念な様子でした。しかし、担当者は、在任中にさまざまな商品を提案しますので、担当者とうまく付き合って納得のいく資産運用を実践するためには、以下の注意すべきポイントをあらかじめ知っておくと良いかもしれません。