「世界最大規模の民主選挙」で与党連合は過半数を維持

 インドの総選挙は有権者総数が約9.7億人とされ「世界最大規模の民主選挙」と呼ばれます。4月19日から6週にわたり全国各地で7回投票が実施され、6月4日に開票結果が発表されました。

 3日に報道された出口調査で与党(BJP)大勝が伝えられると株式、債券、通貨ルピーがともに急伸。株式ではセンセックス指数やニフティ指数が過去最高値を更新しました。ところが、4日に全543議席の当落が発表されBJPが5年前の選挙より議席を減らしたことが判明すると市場は一転急落しました。

 結果的に、BJPを中心とする与党連合「国民民主同盟」が293議席を獲得して過半数以上の議席を確保し、モディ首相は4日に勝利宣言。「2047年までに先進国入りする」との目標をあらためて示しました。モディ氏が3期続けて首相を務めると、インド独立運動の指導者とされる初代首相のネール氏以来となります。

 経済成長優先で見失われがちな「貧富格差」や「失業問題」などを訴えた野党勢力が盛り返した今回の選挙結果は、某国のような「一党独裁政治」ではなく、幅広い民意を取り入れる「議会制民主主義」が機能した事象として評価できると思われます。選挙結果判明後はモディ首相率いる与党連合の結束への期待が広がり、インド株式は5日に反発し6日も続伸しました。

<図表2>インドの実質GDP成長率は高水準を維持する

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年6月5日)

 図表2は、インドの四半期別・実質GDP(国内総生産)成長率(前年同期比)の実績と予想(市場予想平均)です。インド政府が5月31日に発表した2023年度(2023年4月~2024年3月)の実質GDP成長率は8.2%と政府による事前予測(7.6%)を上回りました。2024年1-3月期は7.8%に減速したものの、2024年度も2025年度も高成長率が見込まれています。

 インドは労働人口の増勢に「メーク・イン・インディア」(製造業振興策)、「デジタル・インディア」(社会・経済のIT化)、インフラ整備の効果で高度経済成長が続き、IMF(国際通貨基金)はインドの名目GDP(ドル換算)が2025年に日本を、2027年にはドイツを抜き「世界3位」に浮上すると予想しています。