生成AI事業強化も国内のLLM価格競争が白熱化
現地コード | 銘柄名 |
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00020 |
商湯集団 (センスタイム・グループ) |
株価 | 情報種類 |
1.36HKD |
株価 企業情報 チャート |
BOCIは中国の画像認識システム最大手、センスタイムについて、2024年には生成AI関連ビジネスの売り上げ比率が50%を上回ると予想。生成AIに完全にシフトする同社の戦略が、長期的には好結果を生むとみている。ただ、多くの競合LLM(大規模言語モデル)が国際ベンチマークシステムで上位ランキング入りを果たす中、2024年には中国国内で競争が激化すると予想。また、「TikTok」を運営する字節跳動(バイトダンス)が5月に始めた価格競争が、センスタイムの生成AI事業の成長と利益率の重しとなる可能性を指摘した。営業損失と価格競争、膨大なAI投資の必要性などから、2025年までには新たな資金調達が必要になるとの見方。同社のLLM「SenseNova」の能力が国内外の同業他社を凌駕(りょうが)すれば、株価の大きな支援材料になるとしながらも、現時点では目標株価を引き下げ、株価の先行きに対して中立見通しを継続している。
センスタイムは生成AI、従来型AI、スマート自動車を三本柱とする事業再編を実施。この3部門の売り上げ比率は2023年12月通期に35%、54%、11%だった。今後はスマートシティ・プロジェクトに関わる従来型AI事業を段階的に縮小し、生成AIを全面的に採用する計画。BOCIはこの戦略を前向きに評価している。
同社は「SenseNova」で、中国の最先端LLMを目指すが、アリババ集団(09988)の「Qwen(通義千問)」や百度(09888)の「ERNIE(文心一言)」、その他KimiChat、ChatGLM、Baichuanといった国産のLLMも急速に進化し、LMSYS Chatbot ArenaやMT-Benchなど、国際ベンチマークとなるさまざまなLLMランキングサイト(リーダーボード)で積極的に宣伝を行っている。半面、センスタイムは中国語のSuperCLUEを除き、この種の競争にあまり登場しておらず、BOCIは今後のリーダーボードへの参加が投資家の信頼感を回復するためのカギになるとの見方だ。一方、マネタイズ(収益事業化)の点では、バイトダンスが自社LLMサービスに「業界平均より99.3%低い価格」を設定したことが懸念材料。短期的には生成AI部門の収入と利益率に影響するとみている。
また、2025年までには資金調達が必要となる可能性を指摘している。2024-26年の損失計上(純現金収支は44億元)が予想される中、AIサービスの価格競争が見込まれ、さらにLLMの機械学習投資が必要となる見通しなどが理由。
BOCIは2025年のEV/売上高倍率7.5倍(企業価値EVが売上高の何倍かを測定する指標)をあてはめ、目標株価を引き下げた。新たな目標値は2024-26年の予想PER(株価収益率)で9.9倍、8.3倍、6.8倍に相当する。
一方、今後のレーティングを左右する潜在要因としては、LLMがブレークスルーする可能性、営業損失が予想以上に早く縮小する可能性のほか、国内LLM市場での競争激化の可能性を挙げている。