2度の為替介入とみられる急激な円高
先週の為替相場は非常に激しい動きとなりました。急速に円安・ドル高が進み、4月29日にはドル/円レートが160円まで達しました。その後、日本銀行の為替介入とみられる動きにより一気に1ドル=155円近辺まで円高が進展しました。
それからは反発して円安基調となっていましたが、5月2日未明に再びの為替介入と思われる動きから、1ドル=157円台から153円近辺まで円高が進みました。
さらに5月3日夜の、米国の雇用統計の結果から、米国での早期の利下げ観測が高まったことから、1ドル=151円台まで円高が進行しました。
急速に円安が進んだ後、実に1週間で8円以上も円高となったわけで、ここまでの為替レートの乱高下は久しぶり感があります。
FX取引をしている個人投資家の中には、急激な変動により大きな損失を被ったケースも多々あるようですが、株式投資においてはそこまでのダメージを受けることはありません。
とはいえ、為替レートの変動は株価にも影響しますから、今後に備えて、ご自身がどのような対処をするかどうかをあらかじめ決めておくことが望ましいといえます。
為替の対応策-日本株の場合
まず日本株への影響です。先週の為替介入とみられる急激な円高進行や、米国での雇用統計発表後の円高の際、日経平均先物は大きく下落しました。
個人投資家の皆さんは、円安進行は日経平均株価にとってプラス、円高は日経平均株価にとってマイナスであることをご存じの方も多いと思いますが、まさに先週はそのことが如実に表れた形となりました。
ただ、株価の変動要因は、為替レートの変動だけでなく企業業績や国内外の景気見通しなど複数に及びます。また、米国株の動きとの相関関係も強いです。
従って、例えば今後しばらく円高が進行すると予想したとしても、それをもって日本株の投資を控えるとか、現在の保有株を全部売却してしまう、という行動は早計だと感じます。
例えば、1ドル=152円近辺から140円近辺まで円高が進行した昨年11月中旬~年末にかけての日経平均株価の動きをみると、確かに弱含みの動きではありましたがほぼ横ばいであり、株価が大きく下落する形にはなりませんでした。
さらには、日経平均株価ではなく個別株ベースでみれば、逆に円高が業績に追い風となるような業種もありますから、そうした銘柄を安易に売却するのも考え物です。
筆者は株価がどのような要因で動いたにせよ、移動平均線を超えたら買い、割り込んだら売るというシンプルなルールで対応しています。
株価の変動は複数の要因が絡み合っており、プラス要因とマイナス要因が将来どのように作用し、株価に影響を与えるかを事前に予測することはできません。
もし円高が日本株に大きくマイナスに作用するのであれば、株価は下落して移動平均線を割り込むことになるので、そこで機械的に保有株を売却すればよいと思います。
為替変動への対応策-米国株の場合
本コラムをご覧の個人投資家の方は、米国の個別株へ投資されているケースも多いと思います。
日本株もドル/円相場の影響を大きく受けますが、米国株の場合は円建ての価格そのものがドル/円相場の影響をストレートに受けますので、日本株より影響度は高いといえます。
例えばここ2年ほどの米国株の値上がりの要因は、銘柄にもよりますが半分以上は為替レートの円安が大きく進んだことが理由といわれています。
ということは、もし急速な円安がストップし、ここから大きく円高にかじを切ったとすると、現地通貨建てでは株価が下がっていなくとも、円高による為替差損が大きく影響し、円建てではマイナスが膨らんでしまうかもしれません。
筆者は、米国株をはじめ外国株の場合、円建てではなく現地通貨建てのチャートを用い、現地通貨ベースで移動平均線を割ったら売却、とするのが筋だと考えています。
なぜなら、為替レートの変動による円建ての株価の動きは、企業業績とは無関係だからです。
しかしながら、現地通貨建てでは移動平均線を割らずに推移する一方、円高が急速に進行するような状況となれば、円建てでのパフォーマンスは大きなマイナスとなりかねません。
従って、株価チャート以外に、損切りのラインを決めておき(例えば買値を5~10%程度下回ったら損切りなど)、大きな損失を回避するというのも一法です。
為替変動への対応策-長期積立投資の場合
最後に、長期積立投資の場合です。S&P500種指数連動型や、全世界型のインデックスファンドにて長期積立投資を行っている方も多いと思いますが、この場合、為替レートがどうなろうと動じることなく保有継続というのが回答になります。
長期積立投資は、いかなる理由で株価が変動したとしても、それを全て受け入れ、愚直に積立を長期間継続することによりそれなりのリターンを得るという考え方です。
仮に今後リーマン・ショックのような暴落が起こり、かつドル/円レートが急激な円高になるようなことがあれば、投資している資産が60%、70%目減りする可能性もあります。しかしそうなることも想定した上で淡々と長期積立投資を行うことになります。
もしその覚悟がないのであれば、筆者が用いている「移動平均線ルール」など、株価が下がったら損失が大きくならないうちに売却するというルールを設け、それを実行するようにしてください。
今後為替レートが円安になると決めつけることはせずに、株価が上に向かったらこう動く、下に向かったらこう動く、と、株価がどうなっても対応できるようなルールづくりを強くお勧めします。
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