「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第24回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
今日のクイズ:同意なき買収の対象になりやすい企業はどっち?
今日は、買収ターゲットになりやすい企業を当てるクイズを出します。今日は、ちょっと難問です。初心者の方には分かりにくいかもしれません。すみません。
A社とB社のバランスシート(貸借対照表)と株式時価総額を、以下に図で示しています。同意なきTOB(ティー・オー・ビー:株式公開買付)のターゲットとなりやすい特色を備えているのは、どちらでしょう?
上の図は、企業のバランスシートを一目で全体像が分かるように、図で示したものです。
A社もB社も、自己資本比率が50%で、PBR(株価純資産倍率)が0.5倍です。
【自己資本比率】=【自己資本50億円】÷【総資産100億円】×100=50%
【PBR】=【株式時価総額25億円】÷【自己資本50億円】=0.5倍
どちらも、「自己資本より株式時価総額が小さい」という点で、買収のターゲットになりやすい性質を備えているように見えます。
ところが、バランスシートの中身を細かく見ると、この2社のうち、一方は買収ターゲットとなりやすいが、他方はなりにくいことが分かります。TOBがかかりやすいのは、どちらでしょう? バランスシートだけから、判断してください。
バランスシート、PBRの意味が分からない方のために、この後の章で、説明を載せています。そちらを読んで、クイズを解いてください。
バランスシートとは
クイズに出しているのは、企業のバランスシートを、図にしたものです。
バランスシート(貸借対照表)=資産、負債、資本の目録
バランスシートを見ると、事業に使う資産を得るための資金をどう調達したか分かります。上の例では、資産100億円を、負債(借金など)60億円+資本(株主の出資金など)40億円で調達したことが読み取れます。
この会社は、自己資本比率(資本÷総資産)が40%です。
PBRとは、株価割安度を示す株価指標のこと
PBRとは、株式時価総額が、資本(純資産)の何倍であるか示す値です。
PBR=(株式時価総額)÷(資本)
倍率が低いほど、株価は割安と判断されます。
近年、同意なきTOBが増加
近年、日本株市場で、TOBが増えています。そのほとんどが、事前に被買収企業の経営陣の同意を得てから実施されています。ところが、それだけではありません。
近年は、経営陣の同意を得ないまま実施される「同意なきTOB」が増えています。かつて「敵対的TOB」と呼ばれていたものですが、経済産業省の呼びかけで「同意なきTOB」と呼ぶようになりました。
同意なきTOBには、企業価値を高める良い提案も増えています。それを「敵対的」と呼ぶと、悪いイメージが先行する可能性があります。TOBにネガティブなイメージを与えるのは良くありません。そこで、「同意なきTOB」と言った方がよいと思います。経営陣の同意を得ていないということだけ明らかにして、その是非については、別途議論すればよいことになります。
したがって、本リポートでも敵対的TOBという言葉は使わず、「同意なきTOB」という言葉を使うことにします。