投資することで、企業から自社製品や金券などがもらえる優待銘柄。「優待生活を送ってみたい」「優待品をもらいつつ資産形成を進められるのは楽しそう」と気になっている方もいるのではないでしょうか。

 そこで今回は、「リアルに資産5億の超富裕層を目指す」と掲げながら資産形成を進める配当くくんにインタビュー。優待銘柄の選び方やおすすめ銘柄をお聞きします。前編では、配当くんが投資を始めたきっかけや銘柄選びの判断軸についてお聞きしました。

配当くんProfile

地方在住のサラリーマン投資家。4人家族。5億円の超富裕層を目指すも、生活はコツコツ堅実で、節約に喜びを感じる性格。現在、米国株投資(7銘柄)、配当株投資(年間配当165万)、優待つなぎ売り(年間100品)、暗号資産投資などに投資。最低限の生活防衛費以外の預貯金はなく、フルスイングで投資中。

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自分の一生が見えちゃった…

トウシル:配当くんは、非営利団体の職員として働く、サラリーマン投資家なんですよね?

配当くん:はい。20年弱、今も非営利の団体職員として働いています。

トウシル:投資歴は10年以上になるとのことですが、何をきっかけに投資を始められたんですか?

配当くん:投資を始めたのは30歳前後です。私は、昼間は非営利の団体職員として働いているのですが、その職場は、年功序列型の給与体系で、何年働けばいくら貯まるのか、もう先が見通せる環境なんです。

 よく言えば「安定性がある」のですが、一方で、自分の一生が見えちゃう状態で。このまま、本業だけでは富裕層に到達するのは難しいだろうというのが分かってしまった、それではつまらない、と思ったのが投資を始めたきっかけです。

トウシル:確かに自分の人生の行く先が見えちゃうのはつまんないですね。

配当くん:はい。現状に不満があるというよりは、「おもしろくないな」と思ったんです。試行錯誤するのが好きなタイプなので、調べる中で投資という手段を知ったことで、やらない選択肢はないなと思いました。

トウシル:富裕層になる!と決めたとき、まずは何から始めたんですか?

配当くん:まずは、支出を見直して、家計の最小化を始めました。その上で、本業以外で収入を上げる方法を模索し始めたんです。

トウシル:それが「投資」だったわけですね。

配当くん:はい。不要な支出を切り捨てて浮いたお金を投資に回し、支出減×資産増の両面で最大限コミットすれば、力強く資産形成を進められるだろうと考えました。働くこと=自分の労働を提供してお金をもらっているわけですが、それだけではなく、得たお金に「働いてもらう」ことを考えたんです。

トウシル:とはいえ、いきなり投資、というのはなかなかメンタル強めですよね(笑)。最初はどんなふうに投資について学んだのでしょうか?

配当くん:まずは証券会社の配信しているセミナーに参加してみました。まだコロナ前だったので、リアルのセミナーに出席して参加もしましたが、もうその頃からはオンラインセミナーも増えてきていたので、オンラインでのセミナーをよく見ていました。

トウシル:どんなことが学べましたか?

配当くん:印象に残っているのは、米国株の銘柄分析で有名な広瀬隆雄さんや公認会計士の日根野健さんの話です。株式投資の基礎になるファンダメンタルズのベースをゼロから学べました。

 いろいろ学ぶうち、とにかくいろんな商品に分散して、リスク許容範囲内で挑戦をするのが私のスタンスになりました。今は、インデックス投資、米国株式、高配当株式、優待株式、暗号資産など、いろいろ幅広く手を出して、いいとこどりを目指しています。

トウシル:まずは節約から、というコツコツ型なのに、暗号資産などボラティリティの大きい金融商品にも手を広げられている様子なのが意外です!

配当くん:堅実な半面、冒険心や好奇心が強いんですよ(笑)。

トウシル:これまでの投資経験の中で、印象に残っている失敗談を教えてください。

配当くん:投資を始めた当初買っていた、手数料の高い投資信託は…今思うと、失敗だったなと思います。とりあえず投資信託、と思っていて、当時は手数料のことなど考えてなかったという…。

 暗号資産も、比較的早く、投資を始めていて、今はビットコインなどの主力銘柄が力強く含み益を連れてきてくれて入るのですが、始めた当初はマイナー銘柄に注力していて、無価値になってしまったものもあります。

トウシル:初心者の投資信託失敗あるあるですね(笑)。初心者だった配当くんが、ぐいっと資産を増やし始めた転機はいつ頃、何がきっかけでしたか?

配当くん:私の転機、というと、コロナ禍でうまく立ち回れたことだと思います。投資を始めたころ、その前に起こったリーマンショックなど、大暴落の話を聞いていたのですが、株価はそのうち、必ず復活するということも学んでいたんです。

「いつかまた必ず暴落がくる」と思っていたし、暴落は「新たに富裕層をつくる土壌づくり」だと考えていました。そのため、コロナショックが起こったときは、臆せずに暴落した銘柄でこれという銘柄を全力で買いまくりました。それが、今となっては資産増加に相当なアクセルをかけられた契機になったなと思います。

現金はわずか5%!?最低限だけ残して投資にフルスイングする理由

トウシル:現在のポートフォリオを教えてください! 今は何がメインになっていますか?

配当くん:今の私の主力は「米国株」ですね。今は、円安効果もありますし、なにより、日本株より米国株のほうが長期的に見て強いと思っているので、超長期目線で保有することで、勝ちに行けると思っています。

トウシル:どんな銘柄を保有されているんですか?

配当くん:投資信託は、楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI)一択です。ETF(上場投資信託)はETF、インベスコQQQ 信託シリーズ1(QQQ)と、バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)を保有しています。

 米国株の個別株としては、持っていて、あとは高配当インデックス。高配当の個別株としては、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)コカ・コーラ(KO)、とジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)エクソンモービル(XOM)の4銘柄が主力です。暗号資産はビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)がメインです。

トウシル:現在の総資産額はどれくらいなんですか?

配当くん:1億2,000万円くらいに到達しています。そのうち現金比率は5%くらいで、95%前後は、全て投資に注力しています。

トウシル:現金比率は5%しかないんですか?! 不安じゃありませんか?

配当くん:一応、サラリーマンなので、給与所得があるっていうのが強みでしょうね(笑)。日々の生活は給与でまかなえるので、それ以外の部分は投資に全力投球したいです。資産が約1億円なので、その5%は約500万円。これだけあればそんなに不安ではありません。

 ふだんのクレジットカード払いや何かあったときのために約300万円ぐらいを現金でおいておき、残りの200万円くらいは、優待投資に使っています。

トウシル:優待投資については後編でじっくりとお話を伺います。配当くんは、さまざまな金融商品や銘柄を保有されていらっしゃるんですが、銘柄を選ぶ時の基準は何ですか?

配当くん:基本的には中長期的に保有できる銘柄かどうかを見ています。高配当の個別株についても、基本的には長期保有を前提としたディフェンシブ株のみを保有しています。当然いつかは売ることになると思いますが、ベースは永久保有が基本です。

資産が1億円を超えても、ぜいたくはしない理由

トウシル:Xのヘッダー画像には「リアルに資産5億の超富裕層を目指す」という言葉が掲げられています。5億円の資産を達成するのが目標なのでしょうか。FIRE(経済的な自立を実現させて、仕事を早期にリタイアすること。経済的な自立を実現させて、仕事を早期にリタイアすること)を目指しておられるんですか?

配当くん:FIREを目的に、今、精力的にがんばっているというよりは、資産形成を進めていく中でFIREできる状態にまでなれればいいな、という感じです。「何が何でも仕事をやめたい!」「〇歳までにFIREするぞ!」といった目標は立てていません。

トウシル:資産1億円を達成した時点でFIREされる方もいますが、配当くんはそうではないんですね。なぜ5億円という金額なんですか?

配当くん:超富裕層の定義が*「5億円」だからといったシンプルな理由ですね。

*純金融資産が1億~5億円=「富裕層」、5億円以上の世帯=「超富裕層」という定義が一般的に日本で最も浸透している

 FIREに関しては、私が独り身であれば、資産1億円を突破した時点で勤務先を辞めるという選択肢もあったかなと思いますが、妻と子どもが2人いるので、その時点では決断しなかったんです。また、私は地方在住のため、生活費はそれほどかからないのですが、子どもの教育費に今後、どれぐらいかかるのかがまだまだ不透明なので、もうしばらくは兼業投資家でがんばるつもりです。

トウシル:資産が1億円を突破してから、生活は変わりましたか?

配当くん:いえ、生活は何も変わっていません。むしろ、生活レベルを上げたくないと思っているくらいです。

 資産形成が順調に達成できたからと言って、ぜいたくするつもりはないんです。勤務先の福利厚生で家賃補助があるため、自宅も賃貸住宅のままですし。なによりも、1億円を達成した今も、「支出を減らすこと」に喜びを感じる性格なんです(笑)。生活レベルを安易に上げないのは、資産形成上大切なことだと思います。

トウシル:実際に1億円の資産を築き、目指すところは超富裕層の総資産5億円。それなのに節約マインドを忘れず、毎日の生活は普通の人と変わらない、というのが面白いです! 

その後のとなりの億万長者 全米調査からわかった日本人にもできるミリオネアへの道

米国のスタンリー博士が、「一代で億万長者となった人々」を調査した初版がベストセラーとなった。20年後、現在の米国の富裕層を詳細に分析した「その後」が出版され、話題となっている。大金を使い、ゴージャスに生活しているイメージがある「億万長者」は、セイコーの時計を愛用し、安い車に長く乗る「普通」のライフスタイルを貫いていることが多い。配当くんの投資マインドをほうふつとさせる一冊。
著者/編集:トーマス・J・スタンリー, サラ・スタンリー・ファラー/2021年01月発売/パンローリング/1,980円(税込)

配当くん:超富裕層になれたらおもしろそうだな、なってみたいなくらいの感覚なので、確かに前のめり感はないだろうなと思います。それに、仕事からしか得られない満足感もありますから、しばらくは仕事を辞めてFIREすることは考えていません。

 今は「自分自身」を労働市場で運用している、というイメージで、自分のことを社会的には「債権」だと捉えているんです。今後、定年まで働くとして、20年ぐらいは安定的に現金が入ってくる状況なので、手元の現金はリスク資産に置き換えてもいいのかなと思っています。

トウシル:自分=債券っていう考え方が斬新ですね! 自分自身を社会に提供することで資金を得ているという考え方ですね。

配当くん:はい(笑)。仮に定年がくる前に資産5億円を達成してFIREしたり、定年退職したりして仕事がなくなったら、今の比率も変えていく予定です。手元にあるものは金融資産でいいという考えは今の職がある立場だからこそで、長い目で捉えているからだというのが前提ですね。

――ありがとうございます。支出を減らせたらうれしいと感じる配当くんが、どのように優待銘柄に投資しているのか、後編で引き続きお聞きしていきたいと思います。

>>「1年間で届く優待は約100個! 配当くんインタビュー」[後編]を読む!