過去1年間に追加された「仕事」は全てパートタイム労働者
1月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が35万3,000人増(季節調整済み)と市場予想(18.5万人増)の2倍の数字であった。最近の米雇用統計はバイデン政権に忖度(そんたく)をしたBLS(米労働省労働統計局)の印象操作という見方が多い。BLSの使命はただひとつ、11月の米大統領選挙を前に、「バイデノミクス」という経済政策を優良に見せることである。
債券王のジェフリー・ガンドラックは、米雇用統計は歪曲(わいきょく)されていると述べた。1月雇用者数は35万3,000人増だが、実際には3万1,000人減である。このうちフルタイム雇用は6万3,000人減り、パートタイム雇用は9万6,000人増えた。
ガンドラックは雇用のデータの偏りを「恣意(しい)的なものではないか?」と疑問を呈しているが、われわれは、金融当局者がゆがんだ目的のために計算し、彼らのゆがんだ価値観が印象操作される社会に生きている。
米雇用統計の本質を一言で言うと、過去1年間に追加された「仕事」は全てパートタイム労働者である。
過去1年間に追加された「仕事」は全てパートタイム労働者
なりふり構わない見え見えの米雇用統計を受けて、市場参加者からは、「こんなことは絶対に書かない、言わないと思っていましたが、米国の経済指標の信頼性に疑問を持ち始めています」との声も聞かれる。
イーロン・マスクは、「アメリカのほとんどの人は、国勢調査が国民だけではなく(不法滞在者を含む)単純な人数に基づいていることを知らない。これにより、不法滞在者の数が最も多い州や下院選挙区に政治権力と資金が移る。民主党が政権を維持できるようにバイデンが国境を開いた」と述べたが、米労働市場の本質があらわになると、米国で社会問題が発生してしまう。
特に国境に不法入国者が殺到している今、不法移民問題が巨大な政治スキャンダルになろうとしている。避けられない不況がついに訪れれば、何百万人もの失業した米国人が、バイデン政権によって開かれた不法入国問題について、より正確な説明を求めるようになるからだ。
バイデン政権が11月の大統領選挙までに「公式な景気後退がない」ように全力を尽くすのもそのためである。従って、大統領選挙が終わった後は、経済的な大混乱が起こる可能性が高くなっている。しかし、選挙までの雇用統計は、ますますつじつまの合わないばかげた数字の発表となるだろう。
世界の債務は2023年に過去最高を記録した。経済が崩壊する前に、MMTによる無制限のバラマキが行われるのは歴史の教えるところである。
世界の債務は2023年に過去最高を記録
中央銀行が市場のメインプレイヤーとなり国家管理相場となっている以上、市場が不合理であり続ける期間が長くなっている。流動性はゆがみを生み出すものであり、われわれはその渦中にいる。
2007年のマーケット・トップも同じ状況だった。先行指標は、経済と市場の方向性を教えてくれる。これこそが、景気後退が起こる理由だ。そしてそれは2024年に始まるだろう。そして、今回の景気先行指数の落ち込みを観察してほしい。世界金融危機(リーマンショック)のときよりもはるかに大きい。
景気先行指数 VS S&P500
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は3月の利下げは「あり得ない」と述べた。昨年来、FRBの「ピボット」のジェットコースターは続いている。いずれにせよ、FRBが3月に開く次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げに転じるとの見方が消滅しつつある。