今週の日経平均株価(225種)はひょっとすると、1989年末に付けた3万8,915円の史上最高値を34年ぶりに越えてくるかもしれません。

 上昇の原動力は、外国人投資家が大量の資金で日本株を買っているからです。

 1月第2週(9日(火)~12日(金))、外国人投資家は現物株を9,557億円、日経平均などの先物を4,881億円、合わせて1.4兆円以上も買い越しています。

 しかも19日(金)には、世界中の機関投資家が運用指針にしている米国のS&P500種指数が前週末比1.17%高の4,839ポイントを付け、2022年1月に付けた史上最高値を終値ベースで上回りました。

 2023年12月に史上最高値をすでに突破していた、重厚長大産業の組み入れ比率の高いダウ工業株30種平均も前週末比0.72%高で最高値を更新しています。

 史上最高値を更新するとそれ以上の高値で買った人がいないため、利益確定の戻り売り圧力が減ることも多く、上昇の勢いが加速するといわれています。

 18日(木)、アップル(AAPL)のiPhoneなどを受託製造する台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が2024年12月期の業績予想で前期比20%増収になる見通しを示したことで、日米の半導体株の上昇が続きそうなことも朗報です。

 ただ、先週の日経平均は17日(水)に一時、前日比620円高の3万6,239円まで上昇したものの、その後は高値警戒感から失速。

 19日(金)終値は前週末比386円(1.1%)高と伸び悩みました。

 今週も仕掛け買いのような急ピッチな上昇後、激しい乱高下に見舞われる展開には注意が必要です。

 先週の株価を支えたのは、19日(金)の東京外国為替市場で一時148円80銭台を付けた円安トレンドでしたが、今週の22日(月)~23日(火)には日本の中央銀行である日本銀行の金融政策決定会合が開催されます。

 日銀も1ドル=150円を超える円安トレンドが再開して、再び輸入品を中心に賃金上昇以上の物価高が進むのは望ましくないと考えている状況です。

 ただでさえ自民党の裏金問題による派閥解散騒動で混乱する岸田政権もそれは同じ。

 そのため、23日(火)の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、植田和男総裁が金融正常化に向けた具体案をある程度示して、これ以上の円安を食い止める可能性もあります。

 ただ週明け22日(月)の東京株式市場の日経平均株価の終値は前週末比583円高の3万6,546円で、バブル経済期の1990年2月以来の高値を更新しました。米国S&P500種指数が前週末に最高値を更新した流れに乗り、半導体関連の主力株が上場来高値を付けました。

先週:台湾TSMC好決算で日米半導体株が爆騰!外国人買いで割安大型株も力強い 

 先週の日経平均は、年初早々の先々週(1月9日(火)~12日(金))に2,199円(6.6%)も上昇したのに続き、386円(1.1%)高と続伸しました。

 日経平均が週間でプラスに転換したのは19日(金)に497円高と大きく上昇したから。

 その原動力になったのは、18日(木)に世界的な半導体受託製造会社の台湾TSMCの好決算が発表され、生成AI(人工知能)向け半導体販売が絶好調のエヌビディア(NVDA)をはじめ米国の半導体株が上昇したこと。

 2024年に入って株価が低調だったアップルが、金融機関の投資判断引き上げで18日(木)に前日比3.3%高したことも相場の雰囲気を盛り上げました。

 日本でも、半導体検査装置のアドバンテスト(6857)が19日(金)に前週末比14.5%高、半導体切断装置のディスコ(6146)が12.4%高するなど、半導体関連株の多くが急上昇しました。

 その流れは19日(金)夜の米国株市場でさらに加速。

 エヌビディアは前日比4.17%高、前週比8.74%高で史上最高値を更新し、同社とライバル関係にある半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も前日比7.11%、前週末比では18.9%も上昇しました。

 そのため、今週の日本株も東京エレクトロン(8035)レーザーテック(6920)といった半導体株が力強いけん引役になりそうです。

 ただ、米国では2024年の利下げ時期を巡って、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)高官が株式市場をけん制する発言も目立ちました。

 18日(木)にはアトランタ地区連邦準備銀行のボスティック総裁が利下げ開始時期を2024年7-9月の第3四半期と予想して、3月早々にも利下げが行われるという超楽観論に水を差しました。

 これらの発言を受けて米国の金利は上昇しましたが、日米の金利差が拡大したことで、東京市場では先週の始値1ドル=144円90銭台から終値148円50銭台まで急速に円安が進行。

 米国の早期利下げ期待の後退が円安株高につながることも、世界的に見て日本株が強い理由でしょう。

 一方、先週発表の米国経済指標では、16日(火)の1月ニューヨーク連銀製造業景気指数が予想を大幅に下回るマイナスとなり株安につながりました。

 しかし、17日(水)の12月小売売上高は自動車販売やオンライン売り上げが好調で前月比0.6%増と予想を上回りました。

 また、19日(金)のミシガン大学消費者信頼感指数の2024年1月速報値も2021年7月以来の高水準まで予想外に上昇。

 米国市場は早期利下げを織り込んで上昇していましたが、FRBが2024年3月からの早期利下げを行うのは景気が悪化して株価も急落しているときです。

 そう考えると、米国経済の堅調な経済指標が続いて、利下げ時期が2024年の後半にずれ込んでいく今の流れが、今後も日米の株価が順調に上昇し続ける基盤といえるかもしれません。

 日本では時価総額No.1のトヨタ自動車(7203)の19日(金)終値が前年末比ですでに14.3%上昇しました。

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が保有する三菱商事(8058)が前年末比14.4%上昇するなど、多くの割安大型株が見事なスタートダッシュを切っています。

 17日(水)には、日本証券業協会の森田敏夫会長が2024年に日経平均が4万2,000~3,000円に達することもあり得ると発言。

 さすがにそこまで上がるかどうかは定かではないものの、2024年の日本株に根強い先高観があるのは間違いありません。

今週:23日の日銀会合後に円安進行?米国GDPや重要物価指標が順当なら続伸!?

 今週、昇り竜のように上昇する日本株が失速する元凶になりかねないのは、23日(火)に終了する日銀の金融政策決定会合です。

 最近の物価高沈静化を受けて、23日(火)の会合終了後に発表される「経済・物価情勢の展望」では2024年度の物価上昇率の見通しが前回予想2023年10月時点の前年度比2.8%高から引き下げられる見通しです。

そうなると、日銀の金融緩和が長期化することになるので、円安がさらに進む可能性もあります。

 反対に植田総裁がドル/円相場に対して「口先介入」的な発言を行った場合、株価が急上昇し過ぎている分、相場が急変する恐れもあるでしょう。

 米国では23日(火)に1月のリッチモンド連銀製造業指数、25日(木)には2023年10-12月期の米国実質GDP(国内総生産)の速報値が発表になります。

 米国経済が順調に6四半期連続のプラス成長を遂げれば、米国株にとって追い風でしょう。

 26日(金)には米国の12月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。

 11日(木)発表の12月CPI(消費者物価指数)が家賃の高止まりなどで、前年同月比3.4%増に伸びが加速しただけに注目されそうです。

 今週は米国企業の2023年10-12月期の決算発表も続きます。

 週全体を通じて米国の地方銀行の決算発表が相次ぎ、23日(火)には先週に前週比5.33%上昇した半導体メーカーの一角、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、24日(水)には巨大テック企業の中では19日(金)終値が前年末比15%も下落するなど株価が低調な電気自動車のテスラ(TSLA)などが発表を予定しています。

 ちなみに米国株をけん引する巨大IT企業の決算発表はマイクロソフト(MSFT)などが発表する来週1月30日(火)以降になります。

 一方、気がかりなのは日本最大の貿易相手国である中国の代表的な株価指数・香港ハンセン指数が2024年に入って前月末比10.2%安となるなど、中国株が急落していること。

 2024年は中国の景気後退がより深刻化しそうで、日本の中国関連株にも悪影響を及ぼしそうです。

 しかし、その中国でも約34年ぶりの高値を付ける日本株に対する投資熱が高まり、日経平均に連動するETF(上場投資信託)が実体以上に急騰して先週17日(水)、18日(木)に2日連続で売買停止になるほど。

 中国株に投資されていた資金が日本株に流れ込む動きはますます強くなると予想され、世界中から期待を寄せられる日本株の今後の展開にとって楽しみといえるでしょう。