アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2023年12月29日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。▲はマイナス。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 12月29日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。

12月の日経平均は売り先行後に下げ渋り、高配当銘柄もまちまち

 12月(11月30日終値~12月29日終値まで)の日経平均株価(225種)は0.1%の下落となりました。

 為替市場でドル安円高の動きが強まり、上旬に売り優勢の展開となりました。日本銀行の植田和男総裁が7日に「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言、これが早期の政策修正観測につながり、翌日には大きく下げ幅を広げて月間の安値をつけました。

 ただ、その後は、米国でFRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)で3会合連続の政策金利据え置きを決定し、FRBのパウエル議長もFOMC後の会見でタカ派色を見せなかったことなどから買い安心感が強まっていきました。

 また、19~20日に開催された日銀金融政策決定会合でも、会合後の総裁発言が想定以上にハト派的な内容となったことで、20日には一気に月間の高値水準まで反発する展開となりました。

 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は7銘柄がプラス、8銘柄がマイナスパフォーマンスとなるなど、まちまちの動きとなりました。

 プラスサイドでは、神戸製鋼所(5406)の上昇が目立ちました。CB(転換社債)発行による潜在的な希薄化が前月末にかけて警戒されたことで、その反動が強まったもようです。

 一方、マイナスサイドでは、クミアイ化学工業(4996)が急落する展開となっています。2023年10月期決算が下振れ着地となったほか、2024年10月期の減益・減配見通しがネガティブサプライズにつながりました。

 ほか、東ソー(4042)いすゞ自動車(7202)日本製鉄(5401)なども下げが目立ちました。東ソーは塩化ビニール市況の低迷が警戒視されたとみられるほか、いすゞ自動車は決算を好感した前月の上昇の反動で売り優勢に、日本製鉄は米国のUSスチール買収を発表したことによる資金負担増が懸念視されたもようです。

クミアイ化学が株価急落で上位、ただコンセンサス高過ぎる印象

 今回、新規にランクインしたのは、クミアイ化学(4996)と東ソー(4042)の2銘柄で、除外されたのはサンゲツ(8130)SOMPOホールディングス(8630)となっています。

 クミアイ化学は1カ月で25.9%の株価急落となり、配当利回りが上昇しました。東ソーも同様に、株価が大きく下落したことで、相対的に利回りが高まる形となりました。

 一方、サンゲツはコンセンサスレーティングが基準未達となりました。買い推奨アナリストのカバレッジ停止(業績の分析や株式の推奨、論評などを辞めること)が要因とみられます。ただ、もともと、会社計画と比べて、配当利回りのコンセンサスが高過ぎた銘柄ではありました。SOMPOHDは相対的に株価が堅調推移となったことで配当利回り水準が低下しました。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が大きく異なっている銘柄としては利回り上位のクミアイ化学(4996)と西松建設(1820)、ならびに、大和工業(5444)などが挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りはクミアイ化学が3.47%、西松建設が4.41%、大和工業は4.03%であり、それぞれコンセンサス予想が会社計画比で高くなっています。

 クミアイ化学に関しては12月14日に決算を発表したばかりであり、今期の減配見通しがコンセンサスにはほとんど反映されていません。配当性向を30%程度としていることで、今後の業績上振れが配当金の引き上げにつながる余地はありますが、正直、コンセンサス予想は今後大きく引き下がる可能性が高いと考えられます。

 一方、西松建設は2023年度上半期業績が上振れ着地となっているため、コンセンサス予想に近づく期待は持てるでしょう。また、大和工業も配当性向を40%としていることから、よりコンセンサス水準に近づく可能性は高いとみられます。

 SBIホールディングス(8473)は、会社側で2024年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は2023年3月期から4円増配となる154円程度となっています。なお、上半期末の配当金は前年同期同様に30円でした。

1月は日銀金融政策決定会合や台湾総統選が注目イベントに

 2024年相場がついにスタートしました。欧米が利下げに転じるとみられる一方、日本では逆に超緩和政策の修正が予想されるなど、各国の金融政策に対する関心が高まる年となります。

 また、世界的な選挙イヤーともなります。まず、1月には台湾総統選が行われ、結果次第では日中、あるいは米中の緊張が高まるリスクがあります。ロシアの3月大統領選ではプーチン氏の再選が確実視されていますが、再選後にウクライナ軍事侵攻にどのような影響があるか注目されそうです。

 そして最も重要視されるのが11月の米大統領選となります。とりわけ、トランプ前大統領の再選の有無が焦点で、再選の場合、保護主義的な色彩が強まるリスクは非常に大きくなると考えられます。米大統領選直前には、株式市場も様子見ムードが強まりそうです。

 目先的には1月22、23日の日銀決定会合が最注目となります。今回の大幅な政策修正は想定されませんが、4月会合での政策修正を織り込みにいく流れとなる可能性は十分にあります。その場合は為替市場での円高進行も想定されるため、現段階では、日本株に対して慎重な対応が必要であるとみます。

 日銀の政策修正がプラスとなる金融関連株や円高メリット銘柄などに関心をシフトさせたいところです。なお、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしており、資金流入の大小を見極める上で、主力の高配当利回り銘柄の動向には注目すべきでしょう。