株の短期売買をしていると自分が迷彩服を着た戦闘モードに入るのがわかった。神経はいつも高ぶったようになり夜は眠りが浅くなった。あげく独身時代に貯めた虎の子貯金100万円をまるごと1つの銘柄に突っ込み、倍になるのを期待した。その会社の業績はおろかビジネスモデルを調べることなく、ノリだけで選んだ銘柄だった。

 その年の夏、中国発の金融危機、いわゆる「チャイナ・ショック」が起きた。買っていた株の値下がりがいつまでも止まらず、株価がつかない、いわゆる「ストップ安」が何日も続いた。見る間に株価は買ったときから70%も下がり、ただ何もできずにその画面をボーと眺める日々を過ごした。

 隆一は、はじめて投資の怖さというものを知り、株から手を引いた。そして、もう二度とやるまいと心に決めたのだった。

 ただ、そのあとも頭の片隅でどこかに、本当に投資はやらないほうがいいのだろうか、と思いが残っていた。

 世界で2番目にお金持ちで株式投資だけで9兆円もの資産を築いた「ウォーレン・バフェット」は、たまたまラッキーだったんだろうか。アメリカ人が資産の大半を投資しているというのはなぜだろうか、と――。