7-9月期決算は低調、オフィスソフトのAI化が長期の成長エンジンに

現地コード 銘柄名
03888

金山軟件

(キングソフト)

株価 情報種類

30.50HKD
(11/22現在)

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 キングソフトの2023年7-9月期決算はさえない内容だった。傘下の金山雲(03896:キングソフト・クラウド)の損失とオンラインゲームのマーケティングに起因する営業費用の増大が響いた。オフィスソフト部門の売上高も、「信創」(IT応用イノベーション:中国当局による国産技術の優先的調達システム)ビジネスの低迷を受けてBOCIの予想を10%下回った。ただ、BOCIはAI機能の導入がこの先長期にわたり、主力オフィスソフト「WPS」のMAU(月間アクティブユーザー数)や課金比率、ARPU(契約者1人当たり月額収入)の伸びを後押しすると予想。同社のWPSが中国におけるマイクロソフト365の最良の代替品であり続ける見通しを示した。「信創」の低迷を反映させる形で、目標株価を引き下げつつ株価の先行きに強気見通しを継続している。

 2023年7-9月期の売上高は前年同期比12%増の21億元と、市場予想を3%下回る水準。粗利益率は前四半期を2.1ポイント下回る81.4%。営業利益率は12.5ポイント低下の18.3%にとどまり、BOCIの予想と市場予想から9.8ポイント、65ポイント下振れた。純利益は2,800万元(黒字転換)と、2つの予想を88%、77%下回った。

 事業部門別では、ゲームの7-9月期の売上高は15%増の9億6,100万元。9月に「World of Sword Origin(剣侠世界:起源)」を国内でリリース。10月には「JX3 Ultimate(剣網3無界)」の国内配信認可を取得した。同社は2023年通期のゲーム収入見通しを据え置く半面、2024年に関しては「JX3モバイル」や「World of Sword」の別バージョン、モバイルメカゲーム「Code B.R.E.A.K」の投入を理由に、上振れの可能性を指摘している。

 オフィスソフトの売上高は、7-9月期に9%増の10億9,800万元。ARPUの伸びに伴い、政府機関・企業向けと消費者向けのサブスクサービスの売上高が各36%、26%増加し、部門売り上げをけん引した。MAU はほぼ横ばいの5億8,900万件。同期には「WPS365」を通じて中小企業のユーザー基盤を拡大。デジタルサービスのエコシステムの開発を巡っては、アリババ集団のアリクラウドや科大訊飛(深セン002230:iFlytek)と提携した。11月には「WPS AI」のパブリックベータテストを開始しており、12月からの収益化を見込む。BOCIは「マイクロソフト365コパイロット」の利用料が月額30米ドルであることに言及し、「WPS AI」の膨大な潜在力を指摘している。

 クラウド事業の売上高は前年同期比17%増と、市場予想の12%を下回った。粗利益率は12.1%。巨額の減損損失が響き、純損失率が予想以上に膨らんだ。

 BOCIはSOTP(サムオブザパーツ)方式をベースに目標株価を下方修正しながらも、株価の先行きに対して強気見通しを継続した。レーティング面の潜在リスク要因としては、単一ゲームタイトル(JX)への依存度の高さや「信創」ビジネスの短期的な不透明感、コラボレーションソフト市場における競争などを挙げている。