新NISA成長投資枠で買える投資信託をチェック
新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠に幅広いリスクレベルの投資信託が用意されていることは、前回の本連載で触れた通りです。特定の業種やテーマに特化したタイプのほか、新興国株式に投資するものなど、投資経験者向けの商品も多く含まれていますが、実は、成長投資枠の対象商品の基準自体は、投資初心者向けの一定の配慮もなされています。
ここで、金融庁がホームページ上で公表している投資対象商品の基準を確認しておきましょう。
金融庁ホームページ「新しいNISA」より
買えない商品には理由がある!投資初心者向けの配慮とは?
「投資初心者向けの一定の配慮」というのは、上記の太字部分です。具体的には、以下の三つの要件に該当する投資信託と株式は、成長投資枠の対象外です。それぞれ見ていきましょう。
(1)整理・監理銘柄
投資信託ではなく株式に適用される用語。証券取引所が定めている上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定した銘柄を「整理銘柄」、上場廃止基準に該当する恐れがある銘柄を「監理銘柄」という。両者は、長期資産形成にふさわしくないというだけでなく、投機的な取引を誘発する恐れもあることから除外。
(2)信託期間20年未満
「信託期間」とは投資信託の運用期間のこと。設定から償還まで20年未満の投資信託は、長期資産形成に適さないとの理由から除外。
(3)毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等
「毎月分配型」とは、分配金を払い出す目的で、毎月決算を行う投資信託。元本を取り崩して分配がなされることで、長期資産形成で重要な複利効果を十分に得られない可能性がある。
「デリバティブ取引」とは、先物取引やオプション取引など、主に投資効率を高める目的で利用される取引手法のこと。デリバティブ取引を用いた投資信託の中には、相場環境次第で、短期間のうちに基準価額が大きく下落する恐れのあるものも含まれる。
いずれも、長期資産形成には適さないということに加え、デリバティブ取引を用いた投資信託については、一部、極めてリスクが高いものもあることから除外。
以上の基準は、現行の一般NISAには適用されていません。つまり、新NISAの成長投資枠は、一般NISAよりも対象商品が絞られることになります。
商品の選択肢が少なくなることについては、全面的に歓迎できない面もありますが、「投資初心者が失敗しにくい制度」にするための改良点と考えることもできます。
金融庁が監視を強化。手数料稼ぎのための回転売買は×
尚、先の金融庁のホームページには、成長投資枠の注釈として以下の文言も記載されています。
新NISAには、株や投資信託を売却すると、売却した分の非課税投資枠を再利用できる仕組みがあります。この仕組みを金融機関が悪用し、手数料稼ぎを目的として必要以上に商品の売買を推奨しないよう、金融庁が一定のルールを設けて監視を強化する、というのが上記の文言の意図です。
これも、投資家が安心して制度を利用できるようにするためのセーフティーネットの一つです。
現行のNISA制度がそうであったように、新NISAも、制度の開始後に改良が加えられることは十分に考えられます。反対に、制度の意図に反した利用方法が目立つようなことがあると、対象商品の基準や取引ルールが厳格化される可能性も否定できません。長期にわたって付き合っていく制度だからこそ、制度がつくられた背景も含めて理解することが大切です。