著者プロフィール

       

ファイナンシャルプランナー。株式会社ウェルスペント 横田健一さん
大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立し、現職。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。2023年6月、初の著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社)を発売。

YouTube:資産形成ハンドブック
Twitter:@ken1yokota 

 

「お金持ち」を目指しても幸せになれない? 

 

 お金持ちになりたい! 誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。では、いくらあれば幸せになれると思いますか。

 収入と幸福度について、米国プリンストン大学の名誉教授ダニエル・カーネマンらが発表した研究結果によると、年収7万5,000ドルあたりから幸福度はそれ以上上昇していかないといわれています。 

出所:ダニエル・カーネマン名誉教授による研究結果を模式化(筆者作成)

 年収2万ドルよりは3万ドルが、3万ドルよりは5万ドルの方が幸福度は高まりそうに思えます。

 睡眠や趣味、家族との時間を削ったり、仕事の効率を上げたりすることで、ある程度までは年収を増やしていくことも可能でしょうが、一定水準を超えてくると年収を上げるための努力が苦痛になってしまう、つまり幸福度が低下してしまうというわけです。

 近年、幸福という意味で使われる言葉に、ウェルビーイング(well being)という言葉があります。これはもともと世界保健機関(WHO)憲章の中で、次のように健康を定義する言葉として使われているものです。

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」
出所:
世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)

 この中の「満たされた状態」というのがウェルビーイングです。

「1億円だ!」「もっともっと!」と上を目指し続けてもきりがありません。お金の面で、自分が満たされたと感じられる状態、つまりファイナンシャル・ウェルビーイングを目指すことが大切なのではないでしょうか。そのためには、自分が満たされたと感じられる水準を明確にしていく、つまり「足るを知る」ことが大切なのです。

人生100年時代、今と昔ではライフスタイルがこんなに違う

「足るを知る」ためには、自分自身がどのように生きていきたいかを長期目線で考えることが第一歩です。

 次の図は、今から50年近く前の1970年と、2020年のライフサイクルを比較したものです。

出所:「ライフプラン情報ブック2023年2月改訂版(生命保険文化センター)」

 人生100年時代といわれる昨今ですが、1970年ごろと比較すると単純に寿命が延びているだけではなく、さまざまな点が異なっています。

 まず、初婚年齢が25歳前後から30歳前後へと5年ほど遅くなっています。また、定年年齢も55歳から60歳へと5年延びており、第一子結婚の年齢も6年以上遅くなっています。

 そして、夫の定年後の期間が約5年長くなり、夫死亡、妻死亡の年齢がそれぞれ10年以上延びていることが確認できます。

 これはあくまで全体的な傾向を見たものであり、実際には個人差がありますから人生は多種多様であるはずです。人生が長くなりつつある今、一人ひとりがしっかりとご自身のライフプランを考え、作っていくことが重要になります。