先週の日経平均は2万9,388円で終了
連休明けで迎えた先週の国内株市場ですが、週末12日(金)の日経平均株価終値(2万9,388円)で取引を終えました。前週末終値(2日の2万9,157円)からは231円ほどの上昇です。
あらためて先週の日経平均の動きを振り返ると、下の図1のようになります。
図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2023年5月12日取引終了時点)
週初の5月8日(月)は、節目の2万9,000円台を下回る場面があったものの、すぐに回復。週半ばの取引も、この2万9,000円台を足掛かりにする値動きが続きました。そして、週末の12日(金)に、上値を伸ばす格好で年初来高値を更新して、一週間の取引を終えています。
週足ベースでも、日経平均は5週連続で上昇しています。この連騰記録は4月7日週から始まっているのですが、この期間の上昇幅は2,000円を超えています。下段のMACDも上向きを続けていて、短期的なチャートからは相場の強さが感じられます。
また、ローソク足の並びから見るフォーメーション分析の視点では、図1にもあるように、先週の日経平均が年初来高値を超えてきたことで、これまでの「上昇ウエッジ(1)」と同時に、「上昇ウエッジ(2)」が描けるかもしれないような状況になりつつあります。
上昇ウエッジは、下値の切り上げが急角度なのに対し、上値の伸びの角度が鈍い状況が続くことで形成されます。そのため、「頑張って下値を買っているのに、思ったように上値が伸びてくれない」ということで、一般的には、「やがて買いが負けて下落することが多い」形とされています。
そのウエッジを上抜けたことからも、足元の日経平均の強さが垣間見えます。そのため、今週もこの強さが続くのかが焦点になります。
次の日経平均の目安は?
では、このまま日経平均の強さが続いた場合、目標となる株価はどのあたりになるのでしょうか?
図2 日経平均(週足)の動き (2023年5月12日取引終了時点)
上の図2は日経平均の週足チャートです。
先週の株価上昇によって、昨年8月の高値(2万9,222円)をクリアしてきました。次の目標としては節目の3万円台ですが、2021年11月にトライする場面がありました。
さらにその前に3万円台を超えて高値をつけたのが同年9月ですが、このときの高値は3万795円でした。
チャートの視点を足元に移すと、3本の移動平均線(13週・26週・52週)が全て上向きで、株価の高い順から短期・中期・長期と並ぶ格好になっています。いわゆる「パーフェクト・オーダー」という格好で、週足ベースでも上向きの意識は強い状況となっています。
日本株買いは外国人が中心
こうした足元の日本株上昇の背景には、日本のリオープン(経済再開)期待などの相対的な出遅れ感や、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の発言に見られるような日本株再評価の動き、米国株市場の先行き不透明感が強まる中でのリバランス買いなどを、追い風にしている面があるほか、外国人投資家の買いが目立っていることが挙げられます。
図3 投資部門別売買状況における直近の外国人投資家の動向
上の図3は、東京証券取引所が週次で公表している「投資部門別売買状況」のうち、最近の外国人投資家の動向を整理したものですが、確かに外国人投資家による買いが続いていることが読み取れます。
こうした相場の基調が崩れなければ、日経平均は3万円台の節目や、先ほどの2021年9月の高値(3万795円)を目指していくことも期待できそうです。
過熱感も高まりつつあり、出遅れ感の買いは一服か
その一方で、そろそろ株価の上昇が一服する展開も想定しておく必要もありそうです。
図4 日経平均と225採用銘柄の予想PERの推移(2023年5月12日時点)
上の図4は日経平均と日経平均採用銘柄のPER(株価収益率・予想ベース)の推移を示したものです。PERについては、程度が銘柄や業種によって異なりますが、PERの数値が高くなるほど割高となります。
日経平均については、おおむね12~14倍の範囲で推移することが多いのですが、先週あたりからPERが14倍を超えるようになり、先週末12日時点のPERが14.49倍となっています。PERの14倍台超えは2022年1月以来です。
そのため、日本株の割安感が薄れつつあるほか、足元の株価上昇のペースも、やや早い印象でもあるため、今週は相場の過熱感が意識される中、利益確定の売りもこなしながら、どこまで買いが続きそうなのかが試されることになりそうです。
カギを握るTOPIXの動き
その日本株の強さを探る上でカギを握りそうなのは、TOPIX(東証株価指数)かもしれません。
図5 TOPIXの動き(2023年5月12日時点)
先週末12日(金)のTOPIX終値は2,096pでした。
TOPIXも日経平均と同様に足元で株価の上昇が目立っていますが、現在のTOPIXが意識しているのは、2,100pの節目であるほか、日経平均がまだ手の届いていない、2021年9月の高値(2,120p)となっています。
この株価水準を突破できれば、一段高も期待できますが、今週の国内株市場は、15日(月)で企業決算シーズンが一巡することもあり、相場の手掛かりが一つ減ることになるため、達成感の方が強まって、いったんの利益確定売りに押される展開も想定しておく必要がありそうです。
目先の日経平均の予想レンジは2万9,800~2万8,300円
したがって、今週の日経平均の見通しは、「ある程度の上値追いも期待しつつ、下げに転じる展開の準備もしておく」ことがポイントになります。
目先の日経平均の予想レンジについては、下の図6にあるように、25日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドで考えていくと、25日移動平均線からプラスマイナス2σ(シグマ)の範囲となる、2万9,800~2万8,300円あたりになりそうです。
図6 日経平均移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2023年5月12日時点)
日本株が目標としている2021年9月の相場状況は?
ちなみに、日経平均やTOPIXが目指している2021年9月の株式市場の状況を振り返ると、米国ではインフレ警戒が高まり、金融政策の引き締め転換観測や景気への悪影響が懸念されて、米国株市場が軟調な展開となっていました。
一方、日本国内については、新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向となり、経済再開(リオープン)期待が浮上してきたこと、自民党総裁選を前に次期政権に対する景気浮揚策への期待感が買い材料となっていて、米国株よりも日本株が優位となっていました。
先ほども触れましたが、足元の株式市場についても、日本株がやや優位となっている印象があり、2021年9月のときと似ている面があります。そのため、今後の相場展開を想定する上で、2021年9月以降の値動きがどうなったかを振り返ることはある程度の参考にはなりそうです。
2021年当時、軟調だったダウ工業株30種平均(NYダウ)は9月下旬に底を打ち、株価の上げ下げを繰り返しながら、同年11月、そして翌年(2022年)の1月あたまに戻り高値を更新していきました。
しかし、日本株はその動きについていけず、その後は米金融引き締めと景気悪化懸念を織り込む格好で、日米の株式市場が歩調を合わせる流れで下落トレンド入りしていくことになりました。
米国株市場もチェックしておく必要あり
したがって、直近の日本株優位の展開があまり長く続きそうにないことをはじめ、現在の米国株市場が金融不安とそれに伴う景気悪化加速への不安がくすぶっていること、さらに、早ければ6月初旬にも訪れるとされる「債務上限問題」も目先の相場のかく乱要因になるかもしれません。
もっとも、債務上限問題については政治的な妥協次第という面があり、どこかの時点で与野党の折り合いがつくと思われます。
そうなると、株式市場が早期解決へのプレッシャーとして、催促相場的な下落を見せることはあり得るものの、相場そのものを崩すほどにはならないと思われます。
むしろ、妥協された内容が今後の経済などへ悪影響を及ぼさないかの方が重要かもしれません。
足元の米株市場は、米金利低下と決算を受けて、米大手IT企業株を中心に相場を支えてはいますが、一部の銘柄に資金が集中する株高は、脆さも抱えていますので、相場が軟調に転じた際の下落幅には注意が必要です。
これまで功を奏してきた、株価が軟調なときの押し目買いが報われない事態も想定され、相場は難しい局面に入りつつあるのかもしれません。