先週末の日経平均株価(225種)は前週末比810円安と急落。

 先週は、10日(金)の米シリコンバレー銀行破たんに端を発した欧米の金融不安が拡大し、株価の乱高下が続く激動の1週間になりました。

 12日(日)には米ニューヨークに拠点を置き、暗号通貨取引も手がける シグネチャー銀行(SBNY) も破たん。

 15日(水)には、金融不安の波が欧州に飛び火し、スイス第2位の大銀行クレディ・スイス・グループ(ADR[米国預託証券]:CS)の株価が急落。

 16日(木)には、経営悪化が懸念されていた米カリフォルニア州のファースト・リパブリック銀行(FRC)について、米大手11行が預金援助をすると表明しました。しかし、援助を受けることになったにもかかわらず、17日(金)の株価は急落。前週比72%安まで売られました。

 今週20日(月)~24日(金)も「次はどの銀行に波及するのか」という不安感に包まれた1週間になりそうです。

 21日(火)~22日(水)には、米国の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)も控えており、再び株式市場が乱高下する可能性も高いでしょう。

先週:米ファースト・リパブリック銀行、クレディ・スイスの命運は?

 先週は、資産規模全米16位のシリコンバレー銀行破たんの余波が、他の米国地銀や欧州の大銀行の信用不安にまで拡大。

 12日(日)には、米国の財務省と、中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)、預金を保護する預金保険制度を運営するFDIC(連邦預金保険公社)が共同声明を発表し、破たんしたシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行の預金の全額保護を表明しました。

 FRBも預金の取り付け騒ぎで資金不足に陥った銀行に緊急の融資枠を設定するなど、早々に信用不安を抑え込む政策を打ち出しました。

 一方、欧州ではスイス第2位の銀行クレディ・スイス・グループが14日(火)に過去2年分の財務報告の内部管理に「重大な弱点があった」と公表しました。クレディ・スイスはヘッジファンドとの取引による損失などで2期連続で巨額の赤字を計上し、相次ぐ不祥事や経営幹部の交代なども重なり、財務の健全性への不安が高まっていました。

 15日(水)には筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクがクレディ・スイスへの追加出資を見送ると伝えられ、株価急落の引き金になりました。

 こうした中で、クレディ・スイスは16日(木)、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行(SNB)から最大500億スイスフラン(約7兆1,000億円)の資金貸し出しを受けると公表しました。

 しかし、クレディ・スイスの株価は下げ止まらず、17日(金)には前週末比24%下落しました。

 日本時間の20日(月)未明、スイス政府の仲介のもと、スイスの金融機関最大手UBSが30億スイスフラン(約4,300億円)でクレディ・スイスを買収することで合意したとの発表がありました。クレディ・スイスの株式はUBSの株式に交換されることになるとのことです。

 またスイス国立銀行は2社に対して最大1,000億スイスフラン(約14.2兆円)の融資枠を設定したほか、買収に伴う追加損失などに対する支援を表明しました。

 迅速なクレディ・スイス救済合併の発表で株式市場はいったん落ち着きを取り戻しそうですが、今後の展開はまだ予測できません。

 米国では、カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置く米国14位のファースト・リパブリック銀行(FRC)の株価が急落。

 同行は預金保護の対象外である1口座25万ドル(約3,300万円)以上の大口預金が預金全体の約7割を占め、取り付け騒ぎが発生するリスクが比較的高いことも影響しているようです。

 16日(木)には、JPモルガン・チェース(JPM)など米銀11行が計300億ドル(約4兆円)の預金を同銀行に預ける資金支援を表明。

 ファースト・リパブリックの株価は16日に前日比10%近く反転上昇したものの、17日(金)には株主配当の停止を表明したこともあって33%安と再下落。

 17日は前週末比72%安と大幅下落して先週の取引を終えました。

 米国の主要な銀行株で構成されたKBW銀行株指数(BKX)はこの2週間で3割近く下落し、米国地銀ショックは米国だけでなく、日本の銀行株にも大打撃を与えています。

 先週は米国の重要経済指標の発表も相次ぎました。

 14日(火)発表の2月CPI(消費者物価指数)は、事前予想とまったく同じ前年同月比6.0%の伸びで、上昇率は8カ月連続で前月を下回りました。

 インフレ収束に向かいつつあるトレンドが確認できたことで、株価はポジティブに反応しました。

 欧米銀行の信用不安に揺れた1週間でしたが、米国株は銀行株を除いて、思いのほか堅調でした。

 それをリードしたのが、17日の終値が前週末比4.4%も上昇したナスダック総合指数の躍進、ハイテク株人気の復活です。

 その背景には銀行の信用不安の高まりで、金利が急低下したことがあります。

 シリコンバレー銀行破たん前に一時5%台まで上昇した米国2年国債の金利は、先週末の17日(金)には3.8%台まで急激に低下。

 金融不安でFRBの利上げペースが鈍るという思惑から、株価が割高なため金利上昇局面では売られやすいハイテク株主体のナスダックに買いが集まりました。

 ナスダックがこれだけ好調なのは、今回の金融不安が一種の「ショック療法」となり、FRBがインフレ退治の利上げを打ち止めし、年内早々にも利下げに転じるのではないかという期待感が背景にあるからです。

 先週は、金融不安になると資産の逃避先として価格が上がりやすい金(ゴールド)、さらにビットコインも暗号通貨内の安全資産と見なされたのか、大幅に上昇しています。

 また、日米金利差の縮小で、17日(金)のニューヨーク外国為替市場では急速な円高が進み、1ドル=131円台後半で先週の取引を終了しています。

 米国発の金融危機にもかかわらず、先週は円高警戒が重しとなり、日本株は米国株以上に軟調となりました。

 特に、銀行、保険、証券セクターが業種別下落率で上位を独占。

 地銀最大手の横浜銀行や東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(7186)の17日の株価は前週末比13.9%の下落。

 メガバンク最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が前週末比9.8%安。

 一方、IT、バイオ系の新興企業が集まる東証マザーズ指数が17日(金)に前日比3.5%高(前週末比では0.1%高)となるなど、物色動向が銀行株、鉄鋼株など高利回りな割安株から成長株へシフトする傾向が見えました。

今週:過度の銀行救済は逆効果?FOMCで0.25%利上げへ!?

 今週もファースト・リパブリック銀行をはじめとした米国の地銀や、クレディ・スイスなど欧州銀行の動向に注意が必要です。

 すでに公的機関などの支援が入ったにもかかわらず、銀行株の下落が続いているのは、安易な銀行救済に対するモラルハザード(倫理の欠如)への不信感、さらなる銀行の破たん懸念などが払しょくされていないことの証しといえるでしょう。

 その不信感が沈静化するかどうかが今週の焦点です。

 最も注目すべきイベントは、22日(水)に終了するFOMC。

 市場の大方の予想では、金融機関に対する信用不安が広がる中でも、市場では0.25%の利上げが見込まれています。

 ただ、FRBが金融不安に配慮して、今回は利上げを見送るのではないかという見方も台頭。

 一部証券会社では、さらに踏み込んで、金融不安解消のための利下げを行うのではないかといった予測まで出ています。

 FOMC後の記者会見で、FRBのパウエル議長がどのような言葉で、金融不安とインフレという相反する二つの課題への対処法を語るのか注目を浴びそうです。

 先週16日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会では、クレディ・スイスなど欧州金融機関に信用不安が広がっている状況にかかわらず、0.5%の利上げを断行しました。

 金融危機が始まったさなかの利上げで株価急落の恐れもありましたが、機関投資家が運用の指針にするS&P500種指数は16日、前日比1.76%の大幅高で反応。

 ECBのラガルド総裁の「物価安定と金融安定はトレードオフ(両立できない関係)ではない」という発言もあり、株式市場はECBの大幅利上げに一定の理解を示したもようです。

 そう考えると、FRBが21~22日のFOMCで0.25%の利上げを決定しても、株価にはそれほど悪影響はないかもしれません。

 逆に利上げ停止となると、「それほど金融危機が深刻なのか」「利上げ停止で物価の高止まりが続く」という不安が台頭する恐れもあります。

 FOMC以外では、24日(金)、米国の3月製造業、サービス部門PMI(購買担当者景気指数)の速報値が発表になります。

 FOMCを区切りにして、金融危機に対する不安感が弱まる可能性もあり、週後半に向けた株価の回復に期待したいところです。