Aさんへの提案内容

 では、ここからはAさんにどのような提案をし、ポートフォリオ構築をしたのかご紹介します。

 Aさんの場合、以下のように資産を分けました。

(1)余裕資産のポケット

 1年分の生活費があれば精神的に安心できるという意向、近いうちに大きな支出はないことから、月40万円の12カ月分+αで500万円としました。

(2)インカム資産のポケット

 こちらは今回設定しませんでした。なぜならAさんは、日々の収入で十分生活と趣味を楽しむことができているため、あえてインカム資産をつくる必要がないためでした。運用も長期で考えることができ、価格変動を許容できるタイプでした。

(3)戦略資産のポケット

 現金4,000万円のうち、(1)余裕資産の500万円を差し引いた3,500万円を戦略資産としました。

 ここで、戦略資産3,500万円の運用シミュレーションを行います。リスクについては、推定リスク(年間の運用資産の振れ幅)、運用期間中に想定される平均的な下落率、また想定される最大の下落率をご説明。シミュレーション結果についても、想定上昇率の上位・中央値・下位(%)をお話しします。

 戦略資産の運用シミュレーションをすると、10年後、20年後の想定金融資産がみえてきます。運用期間における最大下落率と運用資産の振れ幅を想定し、目標とする期待リターンのもとで、リスクが最小となるポートフォリオを選びます。

 今回は、シミュレーションを行い、Aさんにご相談した結果、期待リターン約5%、推定リスク約10%のポートフォリオが最適なポートフォリオとなりました。想定される平均的な下落率は約7.8%、想定される最大下落率は約26%であることをご説明しました。

 また、運用を長期で考えられているため、20年運用した場合の資産額の想定として、3,000回行ったシミュレーション結果の中央値は2.5倍、上位10%が4.5倍、下位10%が1.3倍でした。

 ご納得いただいた上で、さらに今回は3,500万円を一度に使うのではなく、毎月500万円ずつ7カ月間でポートフォリオを完成させる、時間分散のご提案をしました。

(4)積み上げ資産のポケット

 今回はまず基盤を作り、運用に慣れてきてから四つ目のポケットに挑戦することになったため、運用開始時は積み上げ資産のポケットには配分しませんでした。

 そして、NISAとiDeCoは引き続き金額を変えずに活用をし、年間のキャッシュ・フローでまだ余裕がある部分については、月の積み立て額を5万円ずつ追加で積み立てを行うことにしました。運用に慣れてきたら、応援したい会社の株などに配分していくことを決めました。

失敗しないポイントは?

 たいていは(2)〜(4)のポケットを意識せずに運用を開始してしまうため、自身のリスク許容度を超えた運用をして、「投資は怖い」「難しい」と感じてしまいがちです。運用の目的を考え、ポケットをしっかり分けることで、投資への恐怖心が軽減し、長期で運用を続けていくことができます。

 2024年からは、新しいNISA制度が始まります。制度は恒久化し、年間の投資枠は360万円と現在よりも増額するなど、投資しやすい環境が整います。新制度を活用するためには、このように運用目的を明確にして計画を立てることが大切です。

 これからの将来を考えるとき、誰しもがお金に対する不安を感じるものです。そんな不安の解消や、将来実現したいことをかなえることこそが、資産運用の目的です。より豊かな生活を目指し、自身の資産基盤を整えていきましょう。