▼著者
IFA Leading
加藤 映美(かとう・えみ)
2017年SMBC日興証券に入社。個人・法人向け資産運用コンサルティング業務に従事。本質的な運用提案をしたいという思いと自身のスキルアップのため、2019年にIFA(独立系金融アドバイザー)として独立。資産運用のみならず、法人保険や不動産などのソリューションも提供している。2022年にIFA事業会社IFA Leadingの創業に参画し、「新たなお金の循環から生まれる豊かな世界の実現」のビジョンのもと、資産運用のアドバイスをしている。
資産5,500万円、IT大手で働くAさんの場合
女性の社会進出が進み、働く女性から資産運用に関する相談を受けることが増えています。
中には、大手企業の役員やスタートアップでの上場などを経験し、資産を築かれた方も少なくありません。今回は、私がご相談を受けた女性Aさんの事例を紹介します。
Aさん(40歳)は、新卒でIT業界の大手上場企業に入社し勤続十数年、30代からはマーケティング部門で課長クラスのリーダー職として活躍しています。年月がたつにつれて、給与が増えたほか、持株会への参加などにより資産が増えていったとのことです。
今までのキャリアを生かして副業も始めており、現在は月15万円、年180万円の副業収入もできました。より日々の生活にも余裕ができたことから、自分の資産を今後どうすべきか、資産運用について興味を持ち始めたことがご相談いただいたきっかけでした。
これまでは仕事が楽しく、仕事に対して全力で向き合っていましたが、将来は結婚・出産をするかもしれない。または、さらなるキャリアアップを目指してより仕事に専念するかもしれない。さまざまな可能性を見据えて、今このタイミングで手元の資産を活用し、長期目線で経済面を安定させたいとのご意向でした。
また、生命保険の加入を検討し両親に相談したところ、両親がAさんのために備えをしてくれていることを知りました。Aさんは、独身で一人っ子であることから、両親の資産についても把握し、相談しておかないと、何かがおきたときにどうすればいいか全くわからないことに、漠然と不安を感じたそうです。
◆現在の金融資産
・合計5,500万円(内訳:現預金4,000万円、自社株1,000万円、保険積み立て金500万円)
・賃貸暮らし、持ち家なし(住宅ローンなし)
・2022年から、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)(一般NISAで年間120万円)とiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)(年間27万6,000円)をはじめた。それ以外の運用は未経験
◆Aさんの趣味は、無名作家の絵画をネットで見たり、実際に購入すること。海外の美術館へ絵画を観に行くことが好きで、旅行にもお金を使います。
◆推定キャッシュフロー
・税引前年収1,500万円、手取り1,000万円
・年間家賃240万円、生活費240万円、趣味費用150万円
・NISA年間120万円
・iDeCo27万6,000円(月2万3,000円)
・現在の年間余剰資金 222万4,000円
資産を四つのポケットに分ける
運用の目的は、「今後の選択肢を増やすために資産の基盤をつくりたい」ということでした。達成に向けて長期で運用を続けられ、かつ経済面を安定させるためのポートフォリオにする必要があります。
ここで具体的な運用方針を決める前に、資産を四つのポケットに分ける方針で考えていきます。四つのポケットとは、(1)余裕資金 (2)インカム資産 (3)戦略資産 (4)積み上げです。
(1)余裕資金のポケット
流動性が最も高い現預金を指します。半年から2年分の支出に相当する現金は手元に残しておきます。
(2)インカム資産のポケット
資産から生まれる収入のことを指します。債券の金利収入や株式の配当、不動産でいうと家賃収入です。普段の収入とは別にプラスで入ってくるものなので、旅行や買い物などのぜいたくに当てることができます。
(3)戦略資産のポケット
長期で値上がりを狙い、増やす資産です。主にETF(上場投資信託)や投資信託を使い、投資先の地域や幅広い金融商品に分散させて、長期投資でリスクを減らし、複利効果で資産を増やします。
(4)積み上げのポケット
積み上げるという意味で、最もリスクが高い資産です。代表例は個別株ですが、リスクとリターンが高い積み上げのポケットだけでは、長期資産形成はできません。
リスクを理解した上で、応援したい、将来成長するだろうという思いをのせて投資を行います。