日経平均株価連動の2種類のETF(上場投資信託)を売買するという独自の手法で利益を出している前畑うしろさんのインタビュー[中編]をお届けします。今回は、何を基準に日経平均の動きを予想するのか、どのようなタイミングで売買するのか、などについてお伺いしました。

──前畑さんの「ETF2銘柄投資」について、もう少し具体的に手法を教えてください。

前畑さん 簡単にいうと、日経平均株価が上昇すると値が上がるETFと、日経平均株価が下落すると値が上がるETFの二つに絞って売買する方法です。日経平均株価連動のETFはいくつかあるのですが、私の場合、前者は「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型」(1570)、後者は「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型」(1357)と決めています。

ココが違う、1570と1357

  NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型 NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型
愛称・証券コード NF・日経レバETF(1570) NF・日経ダブルインバETF(1357)
どんなETF? 日経平均株価の日々の変動率のプラス2倍の変動をする「日経平均レバレッジ・インデックス」への連動を目指す運用を行う。 日経平均株価の騰落率のマイナス2倍として計算された指数である「日経平均ダブルインバース・インデックス」に連動する投資成果を目指す。
日経平均が上がったら? 上昇 下落
売買単位 1口 1口
現在値 1万3,530円* 365円*
自純資産総額 5,301.7億円* 1,282.9億円*
*2023年1月23日終値
ポケットマネーではじめる月1500円のETF投資
2019年01月09日発売/ぱる出版/1,650円 (税込)

──日経平均株価が下落すると値が上がるETFもあるんですね。

前畑さん 私も本を読むまでは、そんなETFがあるとは知りませんでした。

──投資しているのは、その二つの銘柄だけなんですか?

前畑さん 私は下落局面で買い、上昇局面で売る、逆張りを専門としています。トレンドを確認するのではなく、「上がると思えば1570を買い、下がると思えば1357を買う」スタイルを基本としています。最初から買う銘柄は決まっているわけですから、銘柄を迷うこともありません。

 しかも、日経平均だけをチェックしていればよいので、いろんな指標を見過ぎて振り回されることもないし、売買基準もシンプルなので、私には向いていると思います。

――利益は出ているんですか? 

前畑さん この方法に変えてから、勝率が上がったのは事実です。この方法は大もうけを狙うというものではありません。売買を繰り返しながらコツコツ利益を確保する、という方法です。ですから、「ドカンと一発」当てたわけではないけれど、年間収支はプラスに転じています。少なくとも、個別株で減らした分は、取り返せてホッとしています(笑)。

「騰落レシオ」の数値から買い時を探る

──日経平均株価が上がると思えば1570を買い、下がると思えば1357を買うとのことですが、その判断が難しいわけじゃないですか。そもそも何を基準に判断されるのですか。

前畑さん 私の場合、日経平均株価の基準値みたいなものを決めています。その値より高くなったら、今後は下降トレンドに向かう可能性が高いと判断して、「1357」の購入を検討します。反対に低くなったら上昇トレンドに向かう可能性が高いと判断し、「1570」の購入を考えるわけです。

──実際に買うかどうかは、どれくらい上昇するか、下落するかによるんでしょうか。

前畑さん はい。ただし、日経平均株価の動きだけで決めるわけではありません。国内外の経済情勢や円相場の動向、さらには米国の代表的な株価指数であるNYダウ(ダウ工業株30種平均)平均や日経先物(日経225先物取引)、騰落レシオの数値などを総合的に判断し、今後、どう推移するかを予想するわけです。

──騰落レシオというのはテクニカル分析でよく用いられる指標ですね。

前畑さん 値上がり銘柄数と、値下がり銘柄数の比率を示す数値で、市場の過熱感を知る手がかりになります。その二つが同数だと100%で、100%を越えると「値上がり銘柄が多い」、100%を下回ると「値下がり銘柄が多い」ということになります。

 ウオッチングしていると、ときとしてこの数値が大きく変動することがあるんです。120%を越えたり、80%を下回ったり。これはどういうことかというと、120%とか130%だと買われすぎている、80%とか70%だと売られすぎていることを意味します。

──つまり、買われすぎだと、いずれ反発がきて、みんな売るようになる。そうなると株価は下落する可能性が高いので、「1357」が狙い目(買い時)になると、そういうことですね。

前畑さん おっしゃる通りです。反対に売られすぎ、つまり、騰落レシオの数値が80%、70%になったら「1570」をコツコツと買い、逆に上昇するタイミングを待って売る、ということになります。

──なるほど。たしかに参考にできそうです。

前畑さん もちろん騰落レシオの数値といえども、絶対というわけではありません。80%になって「1570」を買ったら、75%、70%と下がって「1570」の値がさらに下落することもありえます。

 だから、騰落レシオの数値だけで判断するのは危険で、ほかのデータと組み合わせて検討する必要があります。とはいえ、市場の過熱感がひと目でわかりますから、私はかなり重要視しています。

確信を持てなかったら無理して買わない

──先ほど、日経平均株価の基準値みたいなものを決めているとおっしゃいましたが、どのくらいを基準にしているのですか。

前畑さん 私がETF投資を始めた頃、日経平均株価は2万円から2万5,000円の間で推移していたので、2万3,000円を目安にしていました。今は当時より日経平均株価が上昇しているので、2万7,000~2万8,000円を基準にしています。

──実際に売買したケースをサンプルとして教えてください。

前畑さん 例えば昨年のケースでいうと、年初は2万8,000円を越えていましたが、それをピークに下降トレンドに入りました。そこで、2万6,000円を下回ったあたりから、「1570」の購入を検討し始め、2万5,000円を切った時点で、「これ以上、下落するのは考えにくい、そろそろ上昇トレンドに向かう」と判断し、「1570」を買い始めました。

 そうしたら、予想通り上昇に向かい、およそ1カ月後、2万8,000円台に回復したところで売却して利益を出しました。

──今、「買い始めた」とおっしゃいましたが、一度にまとめて買うわけではないんですね。

前畑さん 一度にまとめて買うと、予想を外したとき、大きなマイナスを背負う恐れがあります。だから、状況を見ながら少しずつ買い増ししていきます。

──年初に2万8,000円まで上昇したとき、下降トレンドに入ることを予想し、「1357」を買うこともできたと思います。それをしなかったのはなぜですか?

前畑さん そのときはまだ天井に到達していない、3万円を突破するのではないかと考えていました。だから、様子を見ることにしたんです。

──確信を持てないときは、無理には買わないのですね。

前畑さん 前にもいいましたが、この方法は大勝ちを狙うものではないんです。だから、「いかに勝率を高めるか」が重要になります。少しずつでもいいから勝ちを積み重ねていくことが大事だと考えています。確信がないのに勝負に出て、大損したら取り返しがつきませんから、無理はしません。だから、1年中、常に売買しているかというと、そういうわけではないんです。

──なかなか好機が訪れないので様子を見ていたら、1年たってしまった、なんてことはありませんか。

前畑さん それはありません。普段、日経平均株価の動きを追っていると、1年間ずーっと横ばいということはないんです。昨年は比較的、動きが穏やかでしたが、それでも何度か、ちょっとした高騰や暴落がありました。どんな年でも何度か好機が訪れるので、そこを見逃さずに買っていく、売っていくようにしています。

失敗から学んだ「欲張りは最大の敵!」

──確信を持てないときは無理に買わないというのは、前畑さんの「ルール」なのだと思いますが、ほかに自分に課しているルールはありますか。

前畑さん 決して欲張らないということですね。この方法で大事なのは、買い時よりむしろ、売り時なんです。自分が予想した通り、日経平均株価が動くと、気持ちが大きくなって、もっと上昇するだろう、もっと下落するだろうと考えてしまうんです。

 もう少し上昇したら、「1570」の値が上がって、さらに利益が増えるだろうと。でも、それが危険で…。欲を出して売らずにいたら急落し、結局、もうけを取り損ねるということになりかねません。

──もうけを取り損ねるだけで済めばいいですが、損切りせざるを得なくなることもあるでしょうし。

前畑さん はい、だから、いつも「欲張りは最大の敵」と言い聞かせています(笑)。

──個別株投資時代とはかなり変わりましたね(笑)

前畑さん それだけ失敗が痛かった、ということです(笑)。とくに危ないのは勝ちが続いているときで、自分は天才なのかもしれないと有頂天になってしまうんです。これはETF投資に限ったことではなく、どんな投資にもいえることですが、永遠に勝ち続けるなんて不可能です。

 どんなに調子がよくても、いつか負けるときがくる。これから投資を始める人は、私の失敗に倣って(笑)、ぜひそのことを肝に銘じておいてください。

──では、次回は投資初心者へのアドバイスを中心にお伺いしたく思います。

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