先週の日本株は20日(火)正午に日本銀行が突如、長期金利の実質的な利上げを決めたことで急落。日経平均株価(225種)は前週比1,291円安と大幅下落しました。

 日銀の政策修正の影響は極めて大きいため、今週、26日(月)から今年最後の取引日である大納会の30日(金)も、急落や下げ過ぎからの急反発など、不安定な動きが続きそうです。

先週:日銀の唐突な利上げで日本株急落、円急騰。悪影響は深刻! 

 20(火)正午、日銀が金融政策決定会合を終了。

 株式市場がほぼ予想していなかった長期金利の指標となる10年国債の金利を実質的に利上げすることを発表し、金融市場に激震が走りました。日銀が長期金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度からプラスマイナス0.5%程度に拡大する決定を下したのです。

 日本の10年国債は日銀が大量の資金を投じて金利操作を行っているため、この決定は実質的に長期金利を0.25%から0.5%に利上げすると表明したことを意味します。

 その日の日経平均株価は午前の取引の終値は2万7,300円台でしたが、午後の取引が再開されると約900円も急落しました。

 ドル/円の為替相場は一時1ドル=130円台を付け、最大約7円の円高が進みました。日米の金利差縮小を見込んだ円買いドル売りが広まりました。

 日銀は、黒田東彦氏が2013年4月に総裁に就任してからこの10年、一貫して量的金融緩和を続けてきました。

 その黒田日銀が初めて金融引き締めに動いたことはある意味、歴史的な転換点ともいえます。

 黒田総裁の任期は2023年4月までです。今後、新総裁が選出されるまで、黒田総裁の発言や次期総裁が誰になるかを巡るニュースで、日本株が乱高下する展開が続きそうです。

 中でも、株価が割高で金利上昇に弱いIT関連の成長株や東証グロース市場の中小型株は大きく売り込まれるかもしれません。

 先週末の東証マザーズ指数が前週比で9%近く下落したのがその前兆です。

 円安の恩恵で業績拡大が続いていた自動車、精密機器、電気機器といった外需株にとっても、今回の日銀の決定は大打撃です。

 今年10月に1ドル=151円台の高値をつけたドル/円の為替レートは、今年円が値下がりした分の半分を取り戻す「半値戻し」の水準まで円高が既に進んでいます。

「半値戻しは全値戻し」という格言もあることから、2023年前半の日本株は円高トレンドに苦しみそうです。

 金利上昇が唯一、追い風になりそうなのは、長期金利の上昇で住宅ローンの利ザヤ拡大が見込める銀行や、保有資産の運用収益拡大に期待できる生命保険会社といった金融株だけ。

 実際、下げ一色だった先週も、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は前週比18%高、生保会社3社を要するT&Dホールディングス(8795)は前週比17%高と逆行高しました。

 一方、米国株は21日(水)発表の12月消費者信頼感指数がガソリン価格の下落で8カ月ぶりの高水準に達したことやスポーツシューズのナイキ(NKE)の好決算を好感して上昇。

 しかし、翌22日(木)に2022年7-9月期の実質GDP(国内総生産)の確定値が上方修正されると、景気好調で高金利が長期化するという懸念が広がり、下落。

 翌23日(金)発表の米国の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)は前月比0.1%増、前年比5.5%増と予想を下回る低い伸びに。

 インフレ鈍化は株価にとって一番のポジティブ材料のはずですが、23日の株価上昇の勢いはそれほど強くありませんでした。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は、前週比0.2%の小幅下落で1週間を終えました。

 日本株では、日銀の政策修正による金利負担増が市況悪化に直結する不動産セクターやJ-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)が急落。

 三井不動産(8801)が前週比10%近く下落し、東証REIT指数も前週比5%以上、値下がりしました。

今週:26日黒田講演で波乱!?薄商いの中、株価持ち直しも? 

 2022年最後の1週間となる今週の注目は、やはり黒田日銀総裁の動向です。

 26日(月)には日本経済団体連合会(経団連)の審議員会で黒田総裁が講演を予定。

 発言次第では、米国のヘッジファンドなどが日本株売り、日本の長期国債売り、円買いなどの攻勢をかけて、日銀の次なる一手を催促する可能性もあります。

 今週発表される米国の経済指標は、27日(火)の10月ケース・シラー米住宅価格指数、28日(水)の12月リッチモンド連銀製造業指数、29日(木)の前週分新規失業保険申請件数など。

 閑散とした市場で、2023年に向けた仕掛け的な動き、どちらかというと急落方向の動きが出る可能性もあるので注意が必要でしょう。

 年明け以降は、1月4日(水)に前回11月分の発表が株価急落につながったISM(全米供給管理協会)の12月製造業景況指数、12月に0.5%の利上げを決めたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録公開があります。

 6日(金)には12月の米国雇用統計も発表になります。

 今週の株式市場はそういった年始早々の経済指標発表をにらみながら、基本的には小幅な値動きが続くものと思われます。

 先週、株価を急落させた日銀の政策修正に関しても、黒田総裁や岸田政権が景気や株価を犠牲にしてまで利上げする理由は全くありません。

 もし株価の下落が続くようなら、日銀が日本株ETF(上場投資信託)の大規模購入を再開させるなど、株価対策を打ち出すはずです。

 そう考えると、先週、日銀の決定に過剰に反応した分、今週は株価が多少、持ち直す可能性があるかもしれません。