注意すべき円キャリートレードの巻き戻し
今後、注意しなければならないのは、円キャリートレードの巻き戻しだ。30年にわたり日本市場を見ているアシンメトリック・アドバイザーズのストラテジスト、アンバルザデは、「金利上昇を容認すれば、国外にある日本の資金が津波のように国内へ押し戻される可能性がある、これは大きな巻き戻しの動き」とみているという。
12月21日のゼロヘッジの記事『Kuroda-nado Not Enough To Derail US Treasury Rally, BoJ Shift Sparks Japanese Banking Bonanza』では、「日本の米国債の買い手のネット利回りを日米のインフレ率で調整すると、USDJPYと密接な先行関係がある。これは今年急落しており、もしこの関係が続くなら、USDJPYの年間騰落率は今後6ヶ月ほどで5~10%に低下し、ドル/円は115円~120円レベルまで下落することになるだろう」と、円高観測が紹介されている。
魅力的ではない米国債金利によりドル/円はさらに下落する!?
「住宅市場の落ち込みと債券市場の影響で、FRB(米連邦準備制度理事会)はすぐに利上げを止めなければならない状況に追い込まれるのではないか? そしておそらく2023年には利下げに踏み切るのでは…?」という観測が増えているが、円相場を押し上げる突然の資金還流(リパトリエーション)は、<米国債利回りが低下する局面>で起こる傾向がある。
2008年の世界金融危機(リーマンショック)、1998年のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)破綻とロシア債務危機などが思い起こされるだろう。
米10年国債金利(日足)
ドル/円相場が円高になるには、「米国が金利を下げるか」、「日本が金利を上げるか」、「米国株が暴落するか」の、いずれかの要因が引き金となるが、日銀のYCCの破綻でそうした状況が迫っているようにも思われる。
円売りブームに乗った円売りトレードや円キャリートレードは、株式市場が暴落すれば(1998年のロシア危機・LTCMショックや2008年のリーマンショックで巻き戻されたように)最終的には涙をのむことになる。
ドル/円(日足)1998年のロシア危機とLTCMショックによる円キャリーの巻き戻し
豪ドル/円(日足)2008年のリーマンショックで大暴落