住宅ローンのウソホント(4)住宅ローン控除に潜むワナ

 ところで、住宅ローン控除期間の10年(2019年10月1日~2020年12月31日までの間に入居した場合には13年間)は、繰り上げ返済しないほうがいいと考えている方がいます。

 確かに、「年末の住宅ローン残高の1%」が還付(納めるべき税金から控除)される制度なので、繰り上げ返済をして住宅ローン残高が減ると、還付金が減って損してしまうと感じるかもしれません。

 しかし、繰り上げ返済はできるだけ早い方が利息負担は減るのも事実です。そこで住宅ローン控除のことも考慮の上で返済計画を立てるとき、注意したい事例を5つ紹介します。

住宅ローン控除のホント1:高額なローンなら還付金に影響しない

 まず1つ目は、高額な住宅ローンを組むケースです。というのは、住宅ローン控除の対象額には上限があり、新築・未使用であれば4,000万円(一般物件)と定められているからです。物件によっては、上限が変わりますので自分がローンを組む物件の場合にはどうなるのかを事前に確認しておくことが必須です。

 つまりは、毎年100万円程度の繰り上げ返済をしても、上限額を割り込むほどの繰り上げ返済でなければ、住宅ローン控除による還付金にも影響を及ぼしません。

住宅ローン控除のホント2:中古住宅を個人から購入する場合に注意

 そして2つ目は、中古住宅を個人の売り主から購入するケースです。

 一般的には住宅ローン控除が4,000万円が上限と説明されることが多いですが、以前は2,000万円が上限でした。4,000万円の控除が適用されるようになったのは、消費税が5%から8%に引き上げとなった2014年4月以降の新築・未使用物件(中古も条件によって該当)に対してです。

 逆に言えば、消費税は非課税とされている中古住宅の個人間売買などは2014年3月までの措置、つまり2,000万円を上限額としています。そのため、たとえ4,000万円の住宅ローンを組んでも、上限の2,000万円までしか住宅ローン控除の対象にはできないため、どんどん繰り上げ返済して利息負担を減らすほうが良いと言えます。

住宅ローン控除のホント3:納めた税金額を確認しよう

 また、3つ目のケースとして、年収によっては納めている所得税や住民税がローン控除額よりも少なく、還付金可能金額よりも少ない額しか還付されないこともあります。4,000万円の住宅ローンを組んだとしても、「年末の住宅ローン残高×1%」にあたる40万円の還付金を受けるには、当然40万円以上の税金を納めていなければいけません。

 年収300万円の人が仮に20万円の所得税・住民税を支払っていたとき、住宅ローン控除による所得税からの還付金はその20万円が上限額になります(所得税から引ききれない分が住民税からも上限付きで対象)。

 つまりはローン契約を組んだ人の所得税・住民税の納税額が「年末の住宅ローン残高の1%」より少ない場合、控除のことを考えるならその金額以上を借りたままにしておく必要はないので、繰り上げ返済をした方がいいと言えます。

 住宅ローン控除は年々制度が変化しているので、契約前に国土交通省のウェブサイトなどで内容を確認しておくといいでしょう。

住宅ローン控除のホント4:住宅ローンの金利に注意

 また、4つ目のケースとして、金利1%以上の住宅ローンを借りている人も、繰り上げ返済したほうがいいと考えます。住宅ローン控除といっても、還付される1%以上の金利で借りていれば、差し引きしても返済した方が有利です。できるだけ早く借金を減らすに越したことはありません。

住宅ローン控除のホント5:繰り上げ返済時にはローンの返済期間に注意

 最後に5つ目のケースとして、「期間短縮型で繰り上げ返済すると返済期間が10年(13年の場合も)を切ってしまう」という場合は、要注意です。10年(または13年)を切った時点で住宅ローン控除も打ち切りになってしまいます。この場合は、繰り上げ返済の方法を「期間短縮型」ではなく「返済額軽減型」に切り替えれば、返済期間は縮めずに利息の節約を図れます。
 

家計の救済策

長期間の高額な借り入れは大きなリスク

 住宅ローンは低金利で個人がお金を借りられる素晴らしい制度ですが、それでも不動産購入は一度購入したら株式や投資信託のようにすぐやめるということはできず、「負動産」になってしまう可能性もあります。

 そうなると住宅費が家計の大きな負担となり、資産形成どころではなくなってしまいます。計画的な資産形成をするためにも、金額だけではなく「期間」にも余裕を持った返済計画を立てましょう!

【要チェック】
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