グロース株、買い場?

 昨年末から暴落が続いていた東証グロース株(旧東証マザーズ株)に、底入れの兆しがある。楽天証券チーフ・ストラテジストでファンドマネージャーの経験を持つ窪田真之は、「グロース株を見直すタイミングだ」と話す。今が買い場と考える理由と、グロース株投資の注意点を聞いた。

__グロース株が買い場を迎えたと判断した理由は。

「主にグロース株で構成する東証マザーズ指数の13週移動平均線が、上向きに転じたからだ。僕は25年の間日本株のファンドマネージャーをしていて、いつも東証マザーズ指数の13週移動平均線を見ていた。13週移動平均線が下向きで下げトレンドが出ている時は、絶対にマザーズ株を買っちゃダメだって思っていたからね」

「2022年4月の東証再編で『マザーズ株』は『グロース株』に変わったけど、今も東証マザーズ指数は算出されている。構成銘柄は主にグロース株(旧マザーズ)なので、今でも旧マザーズ株のトレンドが見られる」

「以下のチャート図を見ると、ずっと下向きだった13週移動平均線が8月に入ってから上向きに転じているでしょ。ひょっとしてこれから上向きトレンドが出るかもしれない。まだ確信は持てないけど、今から少しずつ買い進めていいんじゃないかって思う。このままグロース株が堅調に推移すると、いずれ13週移動平均線が26週移動平均線を下から上に抜ける『ゴールデンクロス』が出る可能性がある。僕がファンドマネージャーなら、今が買ってみる時期だね」

※東証マザーズ指数は、2023年に「東証グロース市場250指数(仮称)」へ変更予定

東証マザーズ指数の推移(2020年10月~2022年8月)

楽天証券経済研究所作成

__注目している銘柄は。

「個別銘柄を買うと当たり外れが大きいので、今は市場全体を買うという考えでいいんじゃないかな。東証マザーズ指数への連動を目指しているETF(上場投資信託)で、東証マザーズETF(2516)があるので、それから始めたらいいと思います。これだったら、10株(約6,000円)から買えるので、少しずつ時間分散しながら買い増ししていくこともできる」

グロース株投資の秘訣は、「波に乗ること」

__グロース株投資で気を付けることは。

「波に乗ることが何よりも大切。グロース株は売り買いが一方通行になりがちだから、どんなに良い銘柄を選んでも下落トレンドの時は下がってしまう。でも、13週移動平均線が上向きで上昇トレンドが出ている時は何を買ってもおもしろいように上がるのが特徴だ」

「この波に乗るためには、東証マザーズ指数の13週移動平均線が下向きになったらすぐに売り、下落中は触らないこと。そして現在のように上向きになったらドンと買うという緩急をはっきりつけることが、グロース株投資の秘訣(ひけつ)と言える」

「相場がダメな時は、損切りしてでも売る覚悟もないといけない。グロース株は値動きが大きい分根強い人気があるが、波にうまく乗れない人が多いことも事実。下げ始めたらすぐ売らなければいけないのに損切りできず、逃げ遅れる人が多い。一方、上げ始めたら待てずにすぐ売ってしまう人もいる」

グロース株上昇は、なぜ?

__グロース株が上昇を始めた理由は。

「これまではインフレと金利上昇を追い風に資源関連株や金融などの大型バリュー株が上昇してきたが、その環境が変わってきたためだ。原油や穀物、貴金属などの商品価格が下落しているほか、米国でインフレが沈静化に向かうとの観測もある。世界の株式市場で売られ続けていたグロース株が買い戻されており、日本にもその流れが波及する。世の中の流れから、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを手掛けるIT(情報技術)企業の成長期待も高まっている」

「ただ、このようなファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は後に説明できることで、今この時点では何が起こっているかわからない。マーケットは先読み。特にグロース株のように値動きの激しい投資先は、ファンダメンタルズではなくテクニカルで考える価値が高い。ここをしっかり押さえることが重要だ」