はじめに

今回より、個人投資家サーベイ「楽天DI」は、「楽天証券経済研究所のチーフストラテジスト」という立場から、「楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者」として取りまとめをし、コメントをさせていただくことになりました。 セルサイドからバイサイドへと立ち位置は変わりますが、今後も引き続き従来通りの情報発信をさせていただくつもりでおります。楽天投信投資顧問ともども、これからもよろしくお願い申し上げます。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「目先3月決算発表にやや神経質なるも、センチメントはかなり改善してきた」

3月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △17.22
(2月23日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △38.99)
3月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +5.36
(2月23日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △13.66)

今回の基準日となった2009年3月30日の日経平均株価の終値は8,236.08円です。翌31日には、年度末特有のお化粧買いも明確に無く、月末最終週の安値をつけるような展開となりましたが、日経平均株価の見通しDIは大きく改善し、3カ月先の見通しについては、昨年11月以来4カ月振りのプラス転換となりました。1カ月先の見通しについても、「楽天DI」開始後、歴代第2位の数値となり、市場センチメントがかなり急速に改善してきたことになります。この原稿執筆時点(4月3日午後2時現在)の株式市場は、日経平均株価で9,000円台をも展望しうる状況になってきています。

後述しますが、背景には、為替見通しの変化があるように思われます。前回調査時に対ドルのDIが初めて円安を示唆するプラスになりましたが、今月は対ユーロもプラスになってきたからです。日本経済は良くも悪くも外需依存型であり、為替変動が与える経済インパクトは大きく、その意味では円安は株式市場にとって現状プラス要因です。市場はポジティブ思考に変わりつつあるのかもしれません。

1日に発表になりました日銀短観でも、足元の大企業製造業指数は「マイナス58」と過去最悪な結果となりましたが、先行き見通しについては3年ぶりの改善。市場は足元の悪いことを無視して、将来を素直に評価し下値を切り上げています。まさにこれと同じセンチメントが今回のDIには反映されたように思われます。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
3月30日 DI=+0.56 DI=+8.37 DI=△33.05
2月23日 DI=+10.34 DI=△0.60 DI=△39.17

調査時点の円/ドルは97.25円、円/ユーロは128.36円です。この水準に来て、ユーロに対する見方は更に円安を見通すレベルになっています。実際、この原稿執筆時点(4月3日午後2時現在)、ユーロは134.98円と135円を展望するところまで円安に進んでいますし、またドルも昨年11月初め以来となる100円台をつけています。

ユーロがこの時点で円安に動いている背景には、ECBが2日に決定した利下げ幅が市場予想の0.5%より小さい0.25%であったことが挙げられますが、もちろん、楽天DIのアンケートをお願いしている段階では誰も知る由がありません。あらためてこのアンケートの先見性には驚かされる次第です。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 26.72% 27.79% △1.07%
EU諸国 12.32% 15.65% △3.33%
ブラジル 21.73% 24.34% △2.61%
ロシア 10.44% 11.14% △0.70%
インド 40.08% 32.29% 7.78%
中国 51.83% 47.02% 4.82%
中東・北アフリカ 6.77% 6.17% 0.61%
東南アジア 18.16% 16.11% 2.04%
中南米 7.06% 6.56% 0.49%
東欧 4.80% 4.51% 0.29%

為替見通しでは、円よりも高く評価されたユーロですが、投資対象としては引き続き魅力的ではないというアンケート結果となりました。アメリカもわずかですが前月より更に魅力度を引き下げ、どうやら欧米の経済成長力はまだ回復しないという見方を反映しているのかもしれません。
その一方で、インドや中国の人気が引き続き上昇、中国に対しては、アンケートに回答いただいた半数以上の方がもれなく魅力的と考えていることが伺われます。ただBRIC'sとひとことでまとめられた残りの2カ国、ブラジルとロシアは人気低下が続いています。新興国というくくりのパッケージも作り直す必要性が高くなってきました。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 74.69% 72.61% 2.08%
外国株式 23.42% 20.49% 2.93%
投資信託 23.33% 18.77% 4.56%
ETF 19.00% 18.70% 0.30%
FX(外国為替証拠金取引) 22.11% 25.33% △3.22%
国内債券 6.02% 6.23% △0.21%
海外債券 9.13% 8.69% 0.44%
20.79% 25.33% △4.54%
原油 7.34% 6.90% 0.44%
商品 5.74% 6.56% △0.83%
REIT 8.84% 6.10% 2.74%

注目は投資信託の人気回復です。投信投資顧問会社の代表取締役社長に就任した立場としてはとても心強い限りです。REITも絶対値は低水準ながらも回復の兆しです。実際、楽天証券での投資家動向を聞いても、投資信託は3月下旬の株価回復局面から取り扱いが盛り上がってきているようです。

一方、FX(外国為替証拠金取引)が人気低下です。昨今のFXのボラティリティの高さが高い収益機会を提供する一方で、それはリスクの高さと同義であると受け取られてきているのかもしれません。また金も魅力を失っています。取引量が増えているとの報道がある一方で、人気は離散しています。価格動向を見る限りにおいて、取引量よりも、当アンケートにご回答いただいたお客様の見方の方が正しいということだと思います。

特別アンケート

オバマ政権発足2ヵ月、どのように評価されますか(5点満点。)

このところ支持率低下が言われるオバマ政権ですが、それでも投資家は冷静に評価しているということでしょうか。約41%の人が4点以上の評価をし、「まあまあ」という評価の3点を加えると約85%の人が少なくともネガティブではない評価をされています。正にこれらを反映した結果通りに、このところの米国市場の株価は動いているように思われます。

定額給付金の手続きが開始されましたが、景気刺激策として有効と思いますか

これは明確に答えが分かれましたが、約3分の2の人が景気刺激策として有効だとは思わないとの結果です。逆に有効だという答えは約4分の1程度。定額給付金を争点に民意を問う選挙があれば、これだけの結果を見るならば、与党は厳しい現実に直面するのかもしれません。ただこれだけ明確に答えが分かれる現実を見ると、早く衆議院の解散総選挙をして貰いたいと思う市場関係者は多いと推察されます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

本資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて楽天証券株式会社が作成・提供したものですが、情報や見解の正確性、完全性、適時性などを保証するものではありません。また、売買に関する勧誘を意図して作成したものではありません。投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。ストラテジストの見解や評価、予測は本資料作成時点での判断であり、予告なしに変更されることがあります。この資料の著作権は楽天証券に帰属しており、事前の承諾なく本資料の全部または一部を引用、複製、転送などにより使用することを禁じます。