はじめに
2009年1月20日、金融市場は世界最大の超大国アメリカに新しい大統領を迎え、「レイムダック現象」などと呼ばれた政治空白とも言える状態から抜け出ました。今回の個人投資家サーベイ「楽天DI」は、その直後のタイミングでご協力をお願いしたわけですが、すでに市場の目線はそれよりも欧州の状況に早々に移っているという素早さを見ることができます。段々とこのサーベイも意味あるものに育てていただいている気がしているのは私だけでしょうか?
楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト 大島和隆
1.日経平均の見通し
個人投資家の見方「目先は急激に弱気に傾くも、春のイメージは従来と変わらず」
Q1: 1月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △40.02
(12月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △17.97)
Q2: 1月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △20.15
(12月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △20.74)
今回の基準日となった2009年1月26日の日経平均株価の終値は7,682.14円です。前回調査の12月26日が8,739.52円でしたので、日経平均株価ベースで見ると1,057.38円も株価は下がったことになりますが、それでも更にDIは下がり△40.02と急落になりました。これは本サーベイを始めた10月以降で2番目(1番は10月の△48.21)の弱気に市場が傾いていることを示しています。一方、3カ月先についてのDIは△20.15と12月時点と比較して僅かに0.59だけですが上昇しています。
これは後述しますが、為替相場見通しをかなり円高に見ていることが1カ月先の見通しには強く影響しているように思われます。また、今回のサーベイ結果の特徴として興味深い点は、見通し変化が二極化していることです。足元1カ月を弱気と見ている人の約2/3は3カ月後の見通しも弱気で、足元弱気で3カ月後は回復していると見ている人は僅か4.0%に過ぎません。一方、足元強気派が3カ月後に弱気に変わるケースもやはり僅かに8.9%とだということです。ただし、回答総数でみると、圧倒的に弱気見通しが1カ月先、3カ月先共に多く、最近の出来高低調の理由を如実に反映していると見ることができます。
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
1月26日 | DI=△34.47 | DI=△41.59 | DI=△33.73 |
12月26日 | DI=△24.54 | DI=△7.20 | DI=△10.83 |
調査時点の円/ドルは88.61円、円/ユーロは114.32円でしたから、直近の流れの中ではかなり円高に振れていた時だったということを反映しているのかもしれませんが、更なる円高リスクを懸念している様子が見て取れます。ちょうど英国経済の失速が引き金となってポンドが最安値を更新したり、欧州系金融機関の不調が喧伝されたりする一方、オーストラリアやニュージーランドの大幅利下げ懸念なども市場に広まった時と同じくしての調査だったからかもしれません。円がほぼ全通貨に対して強含む状況でのアンケートをお願いした形になりましたが、水準的には相当円高が進んでいるともいえるのでちょっと気掛かりです。
日本が輸出大国で、多くの企業が円高により減益となることから、こうした円高見通しのDIを受けた結果となったのが、今回の株式見通しのように思われます。因みにユーロについてのDIは10月の△65.18についでマイナス幅が大きいという結果になっています。
3.今後注目する投資先
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 36.41% | 33.76% | 2.66% |
EU諸国 | 15.90% | 24.31% | △8.41% |
ブラジル | 22.74% | 24.08% | △1.34% |
ロシア | 10.91% | 14.92% | △4.01% |
インド | 32.72% | 35.31% | △2.59% |
中国 | 39.09% | 39.46% | △0.36% |
中東・北アフリカ | 7.95% | 7.20% | 0.75% |
東南アジア | 16.73% | 18.03% | △1.30% |
中南米 | 8.60% | 7.43% | 1.16% |
東欧 | 4.34% | 6.51% | △2.17% |
EU諸国への投資魅力が離散してしまったことが顕著に現れています。これはユーロの見通しとも整合しており、投資家は欧州リスク(更なる利下げを含めて)を相当意識した結果になっているように思われます。併せて、ロシアの人気凋落に歯止めが掛からず、寧ろここに来て加速しています。インドは先月人気が急騰していますので、今回はその調整という見方も出来なくは無く、次回を注目したいところです。
米国の人気は先月同様、上り調子です。やはりオバマ新政権に対する高い期待値を反映していると思われます。中国人気も安定感を持っているように思われます。
4.今後注目する投資商品
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 76.43% | 76.09% | 0.34% |
外国株式 | 23.38% | 24.71% | △1.33% |
投資信託 | 16.91% | 25.00% | △8.09% |
ETF | 17.19% | 31.28% | △14.09% |
FX(外国為替証拠金取引) | 27.91% | 31.51% | △3.60% |
国内債券 | 6.47% | 8.24% | △1.77% |
海外債券 | 9.06% | 13.31% | △4.25% |
金 | 23.11% | 22.24% | 0.87% |
原油 | 7.02% | 6.45% | 0.57% |
商品 | 5.08% | 6.62% | △1.54% |
REIT | 7.21% | 9.39% | △2.18% |
一般に言われているETF人気とは裏腹な結果、対前月比でマイナス14.09%となっていますが、これは株価見通しのDIが急落したことにリンクしていると考えられます。すなわち、低コストで効率よく市場の上昇を享受できるインデックス型の商品として認知されつつあるETFなので、株価全体の見通しに不透明感が漂いつつある足元の状況ではこういう結果も致し方ないのかもしれません。投資信託も対前月比マイナス8.09%の16.91%になり、やはり人気が離散しています。ただ、こちらはグロソブ人気の低下などを写したもので、ちょっと性格が違うかもしれません。全体を見渡してみても、投資家の目がここに集まったという商品はあまり無く、全般にリスク回避的な姿勢に傾いているように思われます。勿論、国内株式が高い人気であることは普遍です。
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。
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