先週の日本株は円安の波に乗って9日(木)まで順調に上昇しました。しかし10日(金)、ECB(欧州中央銀行)の金融引き締め発表などを嫌気して下落しました。

 10日(金)夜、CPI(消費者物価指数)の発表を受けて米国株が急落したこともあり、今週6月13日(月)から17日(金)は再び大荒れとなりそうです。

先週:記録的な米国物価高!為替介入なら日本株も危機!?

 米国の物価上昇が止まりません。

 10日(金)夜に発表された5月のCPIは、前年同月比8.6%上昇、前月比でも1%上がり、予想を超える記録的な伸びになりました。

 ロシア・ウクライナ戦争による原油価格上昇で、ガソリンの値段は過去最高を更新し続け、光熱費に直結する重油の価格は1年で倍に跳ね上がりました。

 上昇したのは資源価格だけではありません。

 CPI算出に大きなウエートを占める家賃、物価の先行指標といわれる中古車価格なども大きく上昇しました。

 発表前は、すでに前年に大きく上昇した分、5月以降は物価の伸びが鈍化するだろうという予想でした。

 しかし、そんな希望的観測を完全に裏切る、「まったくいいところがない」「不吉な」(と形容されるほどの)CPIショックで、10日夜の米国株は暴落に近い値下がりとなりました。

 40年ぶりの物価上昇が止まらない以上、米国中央銀行のFRB(米連邦準備制度理事会)がさらに強硬な金融引き締めに踏み込むことが確実視されています。

 日米の金利差が広がる中、ドル/円の為替レートは1ドル134円台と20年ぶりの円安水準で高止まりしています。

 10日(金)昼には、政府と日本銀行が「急速な円安進行を憂慮している。必要な場合には適切な対応を取る」という異例の声明文を発表しました。

「憂慮」「一層の緊張感」と口先介入で急速な円安進行をけん制した形です。

 しかし、一方で金融緩和を続けながら、もう一方でドル売り円買いの為替介入を行うのは、ある意味、支離滅裂です。

 もし、実際に為替介入となったら、株式市場は大混乱に陥って急落するでしょう。

今週:FOMCが台風の目。「打つ手なし」の日銀はどうする?

 今週、波乱が続きそうな理由は、米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が15日(水)に控えているからです。

 すでに、短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)レートが6月と7月に0.5%引き上げられることは確実視されています。今回のCPIの高止まりで、続く9月、11月にも0.5%の大幅利上げがあるかどうか注目が集まりそうです。

 FOMC直後に発表される将来の金利予想分布図(ドット・プロット)の平均値が大幅に引き上げられると、株価のさらなる下落につながりそうです。

 米国の物価上昇は単にロシア・ウクライナ戦争だけではなく、コロナ禍明けで非常に旺盛な個人消費も原因です。

 本来、物価上昇は景気がいいから起こることです。適度の物価上昇は好景気の反映なので許容範囲です。

 しかし、5月CPIが示すような過度の物価上昇は経済を大混乱に陥らせ、株式市場を低迷させる引き金になります。

「米国が一時的に景気後退、消費不振に陥るほど金利を引き上げないと、物価の上昇が止まらない」ということになると、米国株の長期低迷が続くでしょう。

 今週は14日(火)に米国の5月PPI(卸売物価指数)、15日(水)に5月小売売上高も発表されます。CPIに続いて、物価の先行指標であるPPIも記録的な上昇という結果になるのか心配です。

 日本では17日(金)に日銀の金融政策決定会合が開かれ、その後に黒田東彦総裁の定例会見が予定されています。

 黒田総裁は先週6日(月)の民間講演で「家計は値上げを許容している」と発言し、大きな批判を浴びました。

 物価が上がっても賃金が上がらない状況は、国民の不満につながっています。

 かといって日銀が金融引き締めに動けば、ただでさえ弱い国内景気は低迷し、財政状況も悪化。賃金も上がらない可能性が高いでしょう。

 黒田総裁といえども、国内の物価上昇の最大要因である世界的な資源・穀物価格の上昇に関しては何もできません。

 輸入価格の高騰につながる円安を口先でけん制するぐらいで、他に手がない状況です。

 米国内で金利がさらに上昇して景気後退に陥ることで、ドル高円安が自然と収まるのをひたすら待つしか、打開策はないようです。

 そんなジレンマの中、17日(金)の会見で、黒田総裁が円安の元凶になっている日銀の金融緩和政策をどう正当化するのか。

 久々に、市場の注目を集める可能性もあります。

 少なくとも15日(水)のFOMCまで、今週の株式市場は不安定な動きが続く可能性が高いため、厳重注意が必要でしょう。